四章 その捌
いつもよりも速い足運びで町の中心地から離れ、民家や商店が見えなくなったところで歩みをゆるめた。周りは畑や牧草地ばかりで、人ははるか遠くにぽつりぽつりと見えるくらいだ。
「サツキ、眠いか? まだしばらく歩くぞ」
「さっきよりは大丈夫です。ボク、徹夜は初めてです!」
何故か嬉しそうなサツキに、コハクとスオウは苦笑を浮かべる。三人は別行動をしていた間の報告を自然と始めた。
スオウは単独で苗代に向かい、東公に紹介状などを書いてもらうと急いで引き返した。コハクの昔からの友人だという東公は、事情を話すと面白がって手を貸してくれた。
「コハク。近いうちに顔を出せってシズカさんが言ってたぞ」
「まぁ、礼を言いに行かないとならないだろうねぇ。でも、一度行くとなかなか帰してもらえないからちょっと面倒なんだよ」
東公こと藤菜シズカは、東霞の領主を務めながら五人の子を産んだ女傑である。藤菜家の当主には代々、女性が就いていた。
元々は建国王の啓揮の子たちが始まりの四公の直系には、密かに天候を読む能力が受け継がれていた。他の三つの地方の領主はその能力を重視していないが、農畜産業を主産業にしている東霞には必要な能力だった。そのため、確実に血統を繋いでいくために女性が継承していくことにした。当主の腹から産まれた子は、疑いようもなくその血を継いでいることが判るからだ。
「コハクが話せることを知っている人って割といるんですね」
「そうでもないさ。昔からの知り合いが十人くらいと、旅の途中で会った人間が数人か。あと、あんたたちと合わせても二十人くらいじゃないのかい?」
「一応、知ってもそれを悪用しないような人を選んでいるから大丈夫だろう。人嫌いだからか、逆に人を見る目はあるからな、コハクは」
スオウの言葉に納得したサツキは、二度ほど無言でうなずいた。




