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四章 その陸
「あの帯留め、こっそり髪飾りにしてもらってたの。寝るときにも袖に入れてたから、これだけは持ち出せたわ」
得意げに話すアユミに、ソウスケは思わず笑ってしまった。頭を撫でてやってからコハクたちに向き直る。
「本当にお世話になりました。この御恩は一生忘れません」
「兄共々お世話になりました。サキさん、コク、それに……」
「タロウです」
「タロウさん。ありがとうございました」
コハクたちはアユミに本名を名乗ることはしなかった。彼女にとって、自分たちは旅芸人と警護兵だ。
「これから、どうするんですか?」
スオウの問いにソウスケは困ったような顔をしてみせたが、それほど深刻さは感じられない。直ぐ隣で自分を見上げるアユミの存在があるからかもしれない。
「とりあえず児玉郷を出て、何処かで日雇いの仕事を探すよ。ある程度お金が貯まったら、またそのときに考えるさ」
「オレに、一つ案があるんですが。ソウスケさん、馬は好きですか?」
「好きだけど……」
「これを持って領主領の苗代に行ってみてください」
苗代は東霞の西部にある東公の直轄地だ。渡された書状を広げたソウスケが息を飲む。




