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四章 その伍

「そろそろいいですか?」

 だいぶ明るくなった空を見て、サキは声を掛ける。

「アユミさん。着替えは用意してあるので、本宮の中で着替えてきてください」

 サキたちの存在を思い出したアユミは、頬を赤らめながら着替えを抱えて本宮に走っていった。

「アユミには言わないのかい? 殺されかけたってことは」

 アユミがミツアキからもらった馬に荷物を括り付けていたソウスケは、作業の手を止めないまま答える。

「ミツアキ様はアユミを大切にしてくださっていました。この二年間を、アユミの中で悪い思い出にしたくないんです」

「そうかい」

「はい。──ところで、本当の名前は教えてもらえるのかな、二人とも?」

 誰もいないことを良いことに、こちらも外で着替えていたサキとタロウが振り返る。

「ぼく、サツキです。隠していてごめんなさい」

「スオウです。初めて会ったときにあなたの目的がわからなかったので、咄嗟に偽名を名乗りました。すみませんでした」

 頭を下げた二人に、ソウスケは笑って首を振る。

「いや、そうして当然だ。初対面の人間が『ぼくを助けてくれませんか』なんて怪しすぎるからね」

 数ヶ月前、宿屋の食堂で突然近付いてきたソウスケを、スオウとコハクは最初無視しようとした。しかし、サツキが興味を持って話を聞き出し、二人は直ぐに打ち解けた。「助けてあげましょうよ」と涙目で訴えるサツキに二人は結局勝てず、今回の作戦が決行されることになった。

「でも、皆さんのお陰で全て上手くいきました。ありがとうございます。どう、お礼したら良いか……」

「気にしないでください。オレたちは特別なことはしてませんから」

「そうですよ。ねっ、コハク?」

「そうさ。アタシたちのことは早く忘れて幸せになりな」

 アユミを連れ出すだけでなく、これからの旅の用意も整えてくれた三人は、何事もないかのように笑っている。

 着替えを終えたアユミが、本宮から出て来た。桜色の小袖に深緑の袴を合わせている。高い位置で結い上げた髪に見覚えのある髪飾りがあった。


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