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二級魔術師のギン  作者: 騎士星水波
第2章 エード編
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第29話パーティ③

 俺とレイの2人はこの後、ピーチェの元に行った。なぜなら、一緒に旅をすることを伝えなければならない。俺は、もう認めたことだが、ピーチェにはまだ何も言っていない。もちろん、ピーチェは反対することはないと思っている。そして、俺達はピーチェに事情を話した。事情というのは一緒に旅をすることになったということだ。この話をしている間、レイはずっと俺の横から1歩も動かずピーチェもその場から1歩も動かず黙って話を聞いていた。

 その時俺が感じたことが1つあった。ただ、ただ、空気が重い。というか、何というか一刻も早くこの場から撤退したい。


 「ギンさん」


 ピーチェが笑顔で俺の名前を呼んでくる。手に持っているグラスがものすごく震えている。まるで、怒りを抑えているかのように。いや、完璧に怒っていらっしゃる。なぜ怒っているのですか。ピーチェの笑顔がものすごく怖い。


 「どういうことですか。もっとくわしく説明してください」


 表情が全く変わらない。笑顔のままだ。これには、冷や汗をかいた。背中はびしょびしょだ。


 「いや、だ、だからさ、レイの父さんは盗賊に殺されてしまったうえに母親は早くに亡くなっていることで身寄りがいないんだ。だから、一緒に行きたいと言っているんだよ」


 そう言うと、ピーチェがレイを睨む。ビクッと怯えたレイは俺の後ろに隠れてしまう。その様子を見たピーチェはさすがにやりすぎたと思ったのかすぐに謝った。


 「レイさん。ちょっとやりすぎました。すいません。私も、これから旅の仲間が増えることはいいと思うのでこれからよろしくお願いします」


 この言葉を聞いた後ようやく、俺の後ろから出てきたレイは、


 「あ、ありがとうございます。私は、結構人見知りで臆病ですがこれからよろしくお願いします」


 レイも挨拶をする。そして2人はそのまま笑顔で握手をする。ただ、その時に俺にはこの2人の間に激しい火花が散ったような気がした。いや、気のせいか。


 これから、俺達は3人で旅というかエイジアに向かうこととなった。


 同じころ。元盗賊団不死の宝石アンデッド・カラットのアジト


 ドガーン


 がれきの山となった元アジトの一体に突然爆発音がした。当然、誰一人として人はいなかったはずである。しかし、その爆発音の源はゾームであった。がれきの下敷きとなっていたゾームはオブスティニカル・ブラック・デーモンの姿ではすでになくなっていた。元の人間の姿だ。それはというのは、がれきをどかすときにすべての力を使い果たしたのが原因であった。


 「くそが、エードいや、魔術師ギンといったか。あいつは絶対にこの手で殺してやる」


 ゾームは人間の姿となっていたが、殺意だけは漆黒のモンスターの時同様強いものであった。このまま、町へ向かって歩き出そうとしたが、立ち止まった。しかし、ゾームの後ろに怪しい2つの黒い影が現れたからだ。


 「誰だっ」


 「………」


 1人は答えないで無言であった。ただ、もう1人は口を開いた。


 「──と言えば分かるでしょうか」


 その声は女のものであった。


 「なるほど。そなたらのことはこっちの界隈では有名なので聞いたことがある。ここに来たということは我を仲間にしてくれるということだな」


 フハハハと奇妙な笑いをする。これは仲間になることを確信した笑いだ。

 ただ、一方の2人組は何も言わない。ゾームからは表情はフードをかぶっているためわからない。


 「いえ仲間にするつもりはありません」


 女が口を開く。この言葉にゾームは驚いた。仲間になれとてっきり言うつもりだと思っていたからだ。


 「貴様ら。それでも──の連中なのか。我を仲間にすればおま………」


 ゾームの言葉は途中で途切れた。一瞬の出来事であった。ゾームの心臓は女によって剣で刺されていた。一撃だ。今度こそ、ゾームの息は絶えた。


 「ラン。お前が感情的になるのは珍しいな」


 男がランと呼ばれる女に声をかける。女はただ、一言だけ言う。


 「ギンを傷つける奴は生かしておけない。それだけよ」


 2人はそのまま闇にまぎれた。辺りには何もなかったかのように静かであった。

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