第22話エード
氷によって閉ざされている向こう側から爆発音が聞こえた。奴がついに来るのか。私は、身構えた。そして、2度目の爆発で氷が壊れて向こう側の様子を見ることができるようになった。
しかし、そこで私が見たものは………。
ギンだった。
いや、正確に言うとゾームと戦っているギンの姿であった。ギンはゾームと対等に戦っていた。あの私が手に追うことのできなかったゾームが防戦一方の状況になっている。あいつあんなに強くなったのか。私は戦いのさなかにそんなことを考えてしまった。私なんかが知らない魔法ばっかを使っている。昔は私の方が強かったのに、たくさんの魔法を使うことができたのにこの任務中にすべてあいつに抜かされてしまったのか。悔しいぜ。だが、あいつにこれ以上任せると恰好が付かないな。
「ファイアーボール」
ゾームがギンとの戦いに夢中の今ならこっちに気付かないだろう。私は狙いを定めて放った。火属性の魔法は苦手だがこれぐらいなら扱える。私の放った火の玉は、ちょうどギンの魔法から回避したゾームに見事に命中した。ゾームも当たる直前に気付いたそぶりをしたがそれでも避けることはできなかった。
「ガハッ」
ゾームは吐血した。そのまま動かないようだ。死んだか、いや、まだか。まだ、ごくわずかだが動いている。次でとどめとなるか。そして一方のギンは最初誰が放った火の玉なのか分からないようで驚いていたが、私が氷の隙間から出てくるとその顔に安堵感が出ていた。
「無事だったか、エード。しかし、お前は敵じゃないよな。さきほどまで戦っていたし、でも俺と戦わないようにするため退避したっけな」
先ほどの大広間での戦いのことか。ギンはスパイのことを知らないのでまだ私を疑っても仕方ない。だから軽く説明をしておくことにしておこう。
「いや、違う。私は今まで政府の秘密の任務としてこの盗賊団に忍び込んでいたんだ。ともかく、敵ではない。早く奴を倒そう。そうしないと………」
ミーサの方を向く。ギンも私の視線を追ってミーサを見る。ギンは何か思ったらしく、さっさと倒すかと一言だけ呟きお互い合図を出した。
「「行くぞっ」」
一気に向こう側に倒れこんでいるゾームに向かって走りこんだ。
今回でエード視点を終わらせていただきます。




