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二級魔術師のギン  作者: 騎士星水波
第2章 エード編
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第16話牢獄

遅くなってすいませんでした。

 ─大広間(ギン視点)─


「エードはどこにいるんだ?」


 先ほどまで俺は、エードと戦っていた。しかし、エードの方が力が上で負けかけていた。そんな中エードが自ら姿をくらまして戦いをバックれてしまった。しかも、俺の周りには先ほどまで俺を嫌というほど追いかけまわしてくれた盗賊の死体が数人転がっている。


 「濡れている?」


 盗賊の死体に触れてみると全員が全身特に顔の付近がずぶ濡れ状態となっていた。おそらく、溺死したのだろう。そしてこれをやったのはエードだろう。

 エードがどうして、盗賊を殺したのかはわからない。ただ、俺が確信を持てることは1つだけあった。


 「あいつ………」


 俺は、エードが進んだと思われるアジトの最奥部に続いている通路に向かって走り出した。ただ、間に合ってくれと思いながら。


 ─最奥部(エード視点)─


 私が、政府の匿名を受けてからはや1年が経過した。私のことは、ギンを含め任務中に仕事を放棄し失踪したということにされている。ただ、それは嘘であり偽りの事柄だ。政府は盗賊撲滅政策を進める中でこの盗賊団不死の宝石アンデッド・カラットの存在に気付いた。ただの盗賊団ならこのようなことにはならなかっただろうが問題がこの盗賊団にはあった。それが………。


 「エード。もう曲者は退治したのか?」


 私に声をかけてきたのは盗賊団不死の宝石アンデッド・カラットのボスゾームだ。こいつこそが、政府も警戒する超警戒人物。かつてこの国でクーデターを起こし内戦を大戦を世界をも巻き込んだもう解散したある組織の幹部だった男だ。


 「ボォスゥゥ。もうそんな演技いらないと思いますよ~。向こうだってさすがに気付いてますから~。なぁ、スパイのエードよ~」


 ゲン。あいつ、あんなにチャライのに俺がスパイだと見破っていたのか。


 「俺様すらわかっていたぞ。まったく演技が下手だなエードさんよー」


 セイヤ。


 「あなたは、ここのバカどもと違って期待していましたのに。残念です。本当に残念です。私の初めてをあげてもいいかと思っていましたのに」


 ミーサ。………後半の言葉を聞きのがしたことにしておこう。


 「エード。本当に我々4人と同時に戦えると思っているのか?」


 ゾームの鋭い眼光。言葉にも一語一語に重みがある。これには1年以上付き合っているが慣れることはできない。だが、私はもう不死の宝石アンデッド・カラットの一員じゃないんだ。


 「あぁ、思っているさ。この私、二級魔術師エード・クロニクルなら」


 ─通路(ギン視点)─


 間に合ってくれ。俺が、走り出したと同時に奥の方から爆発音が突然発生した。


 「もう、戦いが始まったのか」


 あいつは、何でも昔から1人で背負う癖がある。だからこそ、自分に指名が課せられているときはいつもとは動きがどこかぎこちなくなる。今のあいつは、あの頃とは何も変わっていない。さっきの短い戦いの中でも確信できた。このままだとあいつは必ず


 死ぬ。


 強さとか関係ない。あいつには、死を臭わせる何かがある。だからこそ、あいつのことは昔から何かと気にかけていた。一級魔術師に昇格すると聞いたとき本当は反対だった。あいつがもっと早く死ぬ気がしたからだ。そして、今あいつが死に急いでいるときだ。俺が救わなければ誰が救うんだ。


 ザワザワザワ。

 周囲が急にうるさくなってきた。うるさいと言っても爆発音は今も奥の方からしているのでそれとは違うものだ。これは人の声? しかも、1人や2人という規模ではない。

 気になったので、周りを見渡してみると少し先に分かれ道があった。1つは、爆発音がする方。つまりはエードがいるところだろう。そしてもう1つは人の声でうるさくなっている方だ。少しためらったが、無視することはさすがにできなかったのでもう1つの方の道を進んでみた。

 そこにあったものいや、いたのは囚われていたという町の人だった。


 「ここに囚われていたのか」


 俺が、町の人たちが囚われていた牢獄に近づいていくと町の人たちが急に顔色を変えて謝ってきた。


 「すいませんすいません。うるさくしないのでどうかご勘弁を」


 「「「すいません」」」


 町の人全員が謝っている。さぞかし、盗賊にひどい目に遭わされたのだろう。


 「いやいや、俺は盗賊ではありませんので───」


 俺が盗賊でないことを言おうとしたとき、突然さえぎられた。


 「ギンさんっ!」


 それは、甲高い女子の声だった。しかもどこかで聞いた覚えのある1人の女子の声だった。その女子とは………。


 「レイっ! 無事だったのか」


俺がこのアジトに乗り込むことの目的であったレイがいたのだ。


 「は、はいっ! わ、私は無事です。で、でも町の人の中にはけがしている人もいて………」


 レイはそう言うと牢獄の奥に倒れていた人たちを見た。お年寄りのおじいさん、おばあさんだけでなく、レイの友達までもが強制労働の末倒れていたのだ。俺は、正直その光景から目を背いてしまった。でも、この人たちを救わなければならない。


 「まったく。リヴァイアを討伐しに来たはずなのにどうしてこんなことになったものか。まぁ、今さらこんなこと言っても仕方ないか。とりあえず、レイ少し避けてくれないか。この牢を壊すっ」


 こくり。レイが頷いて奥の方に動いた。ほかの町の人もそれに続いた。そして、俺は魔法を発動する。


 「炎のファイアーアローっ!」


 俺の手元に弓矢が召喚された。そして、この矢を牢に向けて放つ。放つ。放たれた矢は空気との摩擦によって燃え出し炎が上がる。そして、燃えた矢はそのまま牢にぶつかる。


 どどーん。バキバキ。


 牢の檻が壊れる音がする。ただ俺の視界には砂埃が舞、晴れると前には何もなかった。無事に檻は壊せたようだ。牢獄の中にいた人たちは巻き添えを食らってけがはしていない。その辺はよかった。

 さて、壊れた牢の中に入って俺が最初にしたことはけがや病気にかかっている人の治療だった。ただ、ほとんどが高齢の人でけがが多かったので案外簡単に治療は終わった。しかし、ある問題に差し掛かった。

 その問題は………。

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