第116話再会
さて、エイジアから離れて旅をすることにしたのはいいがいったいどこに行けばいいのだろうか。俺は母さんのついての情報は一切知らない。ゼロから調べ上げないといけない状態だ。だから、やみくもに歩き回っても意味がない。こういう時は、戸籍とか名前の書いてあるものを探さなければいけないのだろうか。と、なるとこの国で一番の情報バンクを持っている都市に行かなくてはいけない。
つまりは、ドーパだ。
ドーパはこの国一の情報が集まる街と言われている。それだけでなく、この国の国民情報のほとんどはドーハにおかれている情報省情報統合本部という施設にある。
だからこそ、母さんの情報を手に入れるならこの町が一番都合がよい。
ドーパまでは歩いてここから丸一週間ぐらいの距離に存在している。一週間の旅なら久しぶりだしいいかなあと俺は思ったので特別に何か乗り物に乗ることなく歩いていくことを決める。
さて、歩き始めたのはいいが、特別歩くこと以外にすることがない。正直に言って退屈だ。退屈以外の何でもない。
「はあ、意外とピーチェやレイ、アイリスと旅をしていた間は俺としても楽しかったんだな」
俺は独り言をつぶやく。
本当に1人で歩くとなると暇で暇で仕方がない。
そんなことを考えながら歩いていると、道なりに小さな村が見えた。
俺は、その村を見たときに思ったことはこんな場所に小さな村なんか存在したかということであった。俺は、手元にあった地図を見ても村がここにあることを示してはいなかった。普通はどんなに小さな村であっても地図には載せる。また、俺の地図は最新版であるがゆえに新しくできた村というわけでもなさそうだ。
「こんな場所に村? しかも地図に載っていないとなると一体どういうことだ?」
俺は、その小さな村の正体に気になり探索をしてみることにした。どうせ、暇な旅であるのだから多少の寄り道ぐらいやったところで変わらないだろう。俺は、そんな軽い気持ちでその村に接触をすることにした。
小さな村。その村の名前を表した看板らしきものが見つからなかったので仮的に俺はそう呼ぶことにした。どこかに村の名前が書いてある看板があれば俺としてはうれしいのだが、でもそんな贅沢は今は言ってられない。とにかく、この村のことが知りたい。だから、この村の人にまずは接触することが一番先にやるべきことである。
俺は、そう考えた。村にはざっと見渡した限り十数軒の家が建っていた。どの建物もかなりの年季がはいっている。
ここにきて、別のことが頭に浮かんだ。
年季が入っている家がある。イコール古い建物。地図にないという方程式から結びつくものは実はこの村は廃村でありもうすでになかったというものだ。そうだとすれば、かなりホラーだ。もしかして、ここにいる人はすべてもう死んでいたりするのか。
俺は、急に怖くなってきた。
怖いものが苦手だ。やっぱりこの村から離れよう。俺は、そう思って村を後にしようと思った次の瞬間。
「あっ」
後ろの方から女性の声がした。
しかも、その声はどこかで聞いたことがあるような……
俺は、おそるおそる後ろを振り向く。すると、そこにいたのは、
「ミーサ」
その女性というのはミーサであった。
ミーサは、以前俺がレイが盗賊団不死の宝石に誘拐されたときに盗賊団の幹部としていた女性だ。同じく幹部であり俺の同期であったエードが気にかけていたみたいで、あの事件のあと2人は旅に出た。そう、手紙には記されていた。だから、俺はてっきりもっと遠くへ行ったと思っていたがこんな場所で会うことになるとは思ってもいなかった。
「あなたは、ギンだったかしら? エードと同期の」
確かにミーサだ。
ミーサは、俺がここにいることにとても驚いている表情をしていた。そこに、1人の男がやってきた。
「ミーサ、どうしたんだ──って、ギンッ!?」
そこにやってきた男というのはエードであった。エードは、ミーサの名前を呼んでいる途中に目の前にいる俺の存在に気が付くととても驚いて裏がった高い声を出した。まあ、普通はそうだろう。人間だれしも驚けばそうなるな。
「ああ、久しぶりだな。エード」
俺は、まずエードに挨拶をすることから始める。そして、そのあとに聞きたいことでも聞く。
「エード、この村は一体?」
「ああ、この村は俺達の隠れ家だ。俺の魔法創造で村自体を作った。と、言ってもさすがにこの魔法で人までは作ることはできないからあえて廃墟の村という外観を装わせているんだ」
「なるほど……それで、なんで隠れているんだ?」
「……それ、本当に言っているのか?」
俺の質問に対してエードはそんなことを言った。
あれ? 俺は、何かおかしなことを言ったか。普通になんで隠れているのか気になるから質問をしただけだろう。
「まったくわからない」
「はぁ、お前は本当に分かっていないのか。いいか、俺はスパイとはいえ盗賊団に入っていた身だ。ミサも盗賊団の一員だった。つまりは、俺達は犯罪者だ。そう簡単に表に出ることはできない。それに、王国もスパイとして俺を放っていることは表ざたにしたくはないはずだ。と、なるといつか必ず俺らのもとには刺客が送られてくる」
刺客。確かにそうだ。スパイを放っていたことが知られることとなれば王国のイメージというものに傷が付く。だからこそ、裏でその事案を解決するのが道理だ。王国の暗部というものを見て嫌な気分になってしまったが、そういうものであると思うと何だか言いようがない。
エードは、俺の親友であるので死なせたくはない。だったら、ここにいることをばらすのは得策では二と俺は思った。
「なるほど、わかった。だったら、俺はもう行くが。ここのことはもちろん話さないから安心してくれ」
俺は、そう言い村を離れるため歩き出そうとした。
しかし、そこへ何人かの足音が近づいていることを俺は悟った。しかも、その足音はとても小さい者であった。数人いる。この足音の正体はとても怪しく思えたので、俺は近くに隠れてみることにしたのであった。
次回の更新は遅れると思います。一応は2週間に1度は最低でも出したいと思っております。
RPGの方と交代交代に出すのでさらに遅れるかもしれませんが、どうにか頑張りたいと思います。




