第9話VSライム戦②
食らえ!
「炎色の風!」
俺は自分の持つ必殺技の一つを使った。炎色の風。この技は名前の通り炎をまとった風だ。だから食らえば相当熱い。これならいける。俺は確信して放った。
バシーン。ドドドドドド。ものすごい音が辺りに響いた。ライムさんの方は俺の攻撃の影響でよく見えない。しかしこの威力だ、無事でいられるはずはない。そして、だいぶ視界が回復してきた。そこにいたのは俺の攻撃で傷ついたライムさん………ではなく傷一つ付いていないライムさんであった。
「なっ、なんで?」
俺はびっくりした。この技は俺の最強の技だ。そう自負している。それがこの結果だ。ライムさんを傷1つつけることができなかった。その事実が俺を追い詰めた。俺がショックを受けているとその様子を見ていたライムさんは俺に言った。
「お前の技はわたしには効かない。お前はまだ弱い。もう一度出直せっ」
そう言い放ってライムさんは去っていった。どこかへ行こうとした。どこかと言っても行く場所は宿であるに違いない。ただ、今はそんなことはどうでもいい。俺は何としてでもあの人に勝たなければならないんだ。そう、ピーチェのためにも。俺は何とかしてライムさんを止めようとする。
しかし、それを俺ではなくある一人の少女が止めた。
「お父さんっ!」
ライムさんが足を止めた。そして、声のした方に振り返る。俺も同時に後ろに振り返る。そこには、ここにはいないはず否、ここを知らないはずのピーチェがいた。
「ピーチェ! どうしてここに?」
「すいませんギンさん。あの時ひどいことを言ってしまって。私のために黙ってくださったのに本当にすいません」
「いや、俺が黙っていたのがいけないんだ」
本当に俺が悪いんだ。あの約束も守れず、ピーチェのためにと思ってやったことが全てを壊してしまって。だからピーチェは謝らないでくれ。
「ピーチェ何をしに来た」
黙っていたライムさんが口を開いた。ピーチェはライムさんの方に振り返る。その時見たピーチェの瞳は忘れられない。あれほど覚悟を持っていた瞳は。
「お父さんにカゲロウに行く許可をもらいに来ました」
ピーチェは覚悟を持って言う。ライムさんはその言葉を聞いて微笑した。
「本気か? それが本当にお前のやりたいことなのか?」
ライムさんが迫ってくる。もし、これでピーチェが諦めなければ魔法でも使ってくるだろう。ピーチェお願いだから諦めてくる。そうじゃないとお前はもう二度と………。
「私はカゲロウに行きます。これだけは誰が何を言おうと変わりません。たとえ、お父さんだとしてもです」
それでもピーチェの意志は変わらなかった。相当固いものだった。
ライムさんはやれやれと首を振った。
「分かった。勝手にしろ。もう何も言わないから。だから立派な魔術師になるんだぞ」
そう言ってライムさんは去っていった。こうしてピーチェは認められたのである。ところで、俺って何かしたのかな?
久しぶりの投稿です。




