表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/33

第八話【突然の自由時間】

『量より質』『質より量』と言う言葉を良く聞く。

賛否両論の声がよく上がる言葉だ。




覚えるのであれば数こそ少なくなるが確実性がある方がいいと言う声に対して

片方は多くの数をこなして経験を積んだ方がいいと言う声。





大抵は『質より量』の方を選ぶだろう。

期末テストなどが近付くと一夜漬けをする学生の方が多いからだ。




その時だけ覚えたいのであれば紙に問題を書きまくれば大体は覚える。

しかし長続きはせず再度勉強をし直さなければいけないから結局は大忙しになる事が。





麗華は勉強時間から分かるように『質より量』だ。




吸収率が高いから質を求めずにも解くだけで覚えていられるからだ。






類似問題でも間違ったことはない。

しっかりと過去にも出てきていることを把握している。







受験期間では『量より質』を選ぶ人の方がが多くなる。




応用問題などはただ解くだけでは理由を答えることは出来ず

点数が得られなくなることもある。




問題集などに付いている解答ページをしっかり読んで頭に入れていく。

ただし確実性はあるが速度はゆっくりなので受験が近付いてくると焦る。






冷静でいられる彼女だが多少の気持ちは理解できる。

自分も大学を卒業した後のことは考えていない。

当然状況は全く違うが焦る気持ちだけは共感が持てる。






恐らく父の会社を任されるのではないだろうか。

大きな期待を持っているし、自分にはそれだけの力があるということも。

兄も姉も優秀だが麗華には勝てない。

そもそも2人は特に後継者になろうとは思っていないらしい。





『お金持ちの家で育ったからと言って全てが優秀な訳じゃないし・・・

やりたいことをやってみたいから』




『少しは苦労も覚えてみたい』






こういった理由で最初から断ろうとも思っている。

つまり候補の中には神竜寺麗華の名前だけが残っているわけだ。






そうなると権力も財力も全て自分の物にはなるだろう。

しかしそこにはそれ以外に何が残るだろうか?





何も望む物はない。






少しだけ、少しだけだが自分が縛られているような気がした。








(ピリリリリリッ)





突然携帯電話が鳴り出した。最近では中学生でも携帯は持つ。

持ち込み禁止と言われていても持ってくる生徒も多い。




そのためどの学校側も『休み時間内だけなら使用許可』と言う事にしているだろう。

授業中に当然音が鳴ったりでもしたら没収される。





始業式の時に誰かの物かは分からないが着信音が流れた。

校長先生が大事な話をしていると言うのに全く不謹慎だ。

すぐさま見つかり教員達に怒られた生徒がいた。





『サイレントマナーも知らないんですのね』




意外と知らない生徒も多く電源を切るのを忘れていてこうなる事態も。

彼女の目には馬鹿としか映っていなかったに違いない。






今は昼休み中。誰にも迷惑はかからない。

電話してきたのは恐らく母の珠枝だろう、そう思いながらポケットから取り出した。





「もしもし、お母様?」




「あ、麗華?今日清掃員の人達がやってきて家を掃除してもらうから。

図書館も塾もお休みでしょ?たまには気分転換してきたらどうかしら」





火曜日は塾も図書館も休日だ。

加えて今日は清掃員達が家全体を掃除しにくる日らしい。




「お金は持ってる?」




「二万五千円ありますわ。けど何もすることがないのですけど・・・」





「いつも勉強頑張っているんだし、デパートでも行ってみたらどうかしら?

麗華はあんまり服を買わないんだから見て回るのも面白いと思うわよ」





用件は以上だった。






学校の授業が終わるのは午後三時半。

午後九時に帰る予定でいる彼女は残り五時間半の自由時間を得たわけだ。

しかし当然ながらやりたいことは何も無し。





お腹が空いたわけでもない、服が買いたいわけでもない。

かと言ってこのまま授業が終わった後何をしたらいいのか。


何もせずじっとするのは一番嫌いだ。






「・・・とりあえずデパートにでも行ってみましょうか・・・」




母の言うとおりにまずは足を運んでみることにした。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ