第七話【時、既に推薦合格】
「あ~も~大変!!受験なんて無くなればいいのにー!!」
同じクラスの生徒の7割以上は大きな声で主張する。
受験・・・それは学生なら必ず避けては通ることの出来ない道。
また通ったからと言って安心出来る物ではない。
そこから先に繋がる高校生活にその後にまた受験・・・
そして次は大学生活が終わると就職・・・
考えるだけでも嫌になる。
ましてや彼女達はまだ中学3年生。
大人になんてなりたくないという気持ちは誰だって理解出来る。
出来るからと言って平然としている生徒も心の中ではどこかに焦りがある。
今安心しているから次も大丈夫などと言えるほど甘くはない。
誰もが必死に勉強して、そしてようやく受かるかどうかだ。
100%合格などという補償はない。
そう、彼女1人を除いては。
「y = g(t) , t = h(x) のとき dy / dx = ( dy / dt )( dt / dx )」
当然のごとく給食を食べながらの勉強。神竜寺麗華 中学3年生。
既に公立谷岡高校には推薦合格が決定しているので彼女には何の不安もない。
後の期間はずっと復習をして一つでもミスを出さないような勉強だけ。
「いいなー麗華ちゃんは。もう推薦で谷岡高校合格したんでしょ?
大体は筆記試験で受けるものなのに・・・やっぱり凄いなぁ・・・」
「私のように毎日勉強をしていれば楽ですわよ?」
「・・・いつも睡眠5時間なんでしょ?どうして体が保つの・・・?」
クラス内で自己紹介ページと言う物がある。
名前に趣味に特技に・・・などとその名の通り自分のことを書き記す。
似顔絵は姉の環に描いてもらい(描く時間が勿体ないから)
紹介文は兄の要に書いてもらい(書く時間が勿体ないから)
以上2つで完成。当の本人は何もしていない。
特技はキリがないために『常に睡眠時間5時間』『1日19時間勉強』などと書いた。
彼女が嘘を付くような人物ではないためそれを信じるしかなかった。