第二十七話【変化・変化】
神竜寺麗華はそれから一睡もせず学校へ向かうことにした。
午前10時から起きて現在午後12時。
実に1日と2時間を寝ずに普段通り登校する。
仮に自宅にいてもすることは決まっている、勉強だ。
分かっていることを何度もするがこれがスケジュール。
「ん・・・・ふぁ・・・」
さすがに眠っていないのは彼女でも辛いか、珍しく欠伸をする。
それでも人前ではそのような素振りは見せない。
体育の時間では普段と変わらない抜群の身体能力を披露。
授業でも分からない生徒の代わりに答えを出す。
他から見ればいつもと変わらない麗華の姿。
しかし彼女は考え事をしていた。
そう、深夜に見た須網監督の勇退会見の事。
『誰もが成し遂げていないことを達成した』
選手時代の彼を知っている野球少年達は多いだろうが
詳しいエピソードなどは昨日知ったばかりのはず。
今では深夜でも起きている中学生や高校生もいる。
まして元々はその前の時間から放送されている。
これで遊撃手・監督 須網剛の功績は大きく評価されるし
プロ野球選手になろうとしている少年達の憧れの存在。
元々甘いマスクであった須網剛は更に人気者となったに違いない。
弱小神戸ティガースを日本一に導いた名将として。
「(凄いですわね・・・【足関節脱臼骨折】から不死鳥の如く復活し・・・
選手としても、監督としても球団初の日本一達成。
こんな偉業を達成するなんて素直に尊敬しますわ。
食事中に気になって昔を思い出したのは良かった・・・・)」
当の本人には出会ったこともないがこれもまた何かの運命だったのかも知れない。
野球を観ていなければこんな風に思うこともなかっただろうし。
彼女にしては貴重な体験をした。
給食の時間になり、いつものようにパンを食べながら勉強。
普段良い食事をしているためにそんなに給食が楽しみとは思っていない。
ただパンの味だけは嫌いではない。
ジャム、バター、ブルーベリーと何かを付けると美味しく食べることが出来る。
彼女は楽しみとは思っていないが、少しだけ不思議な物だと思った。
1つの小さなパンだが工夫次第で楽しめる。
どことなく人間と似ていないだろうか?と。
問題集の問題が終わり退屈な休み時間の際にそう感じたことが一度だけ。
何だかとても懐かしい。