第二十三話【甲子園行きへの走り出し】
「1番 遊撃手 須網剛!!」
帰ってきた期待の新人、帰ってきた背番号6。
全員が待っていてくれたからこそ戻ってこれた。
監督の言葉で立ち直る事が出来た。
感謝しても仕切れないぐらい大きな存在だった。
ようやく再び試合に出ることが出来る。
須網剛の公式戦打席数は僅か16打席しかない。
そして2安打、打率はたった0.125・・・・・
これに関しては本人が一番悔しいはずだ。
その悔しさ全てを試合で挽回する。
強い気持ちをこの夏に持ってこれたか。
「須網、足の調子はどうだ?」
「監督!はい、心配ないと思います」
「お前は先頭打者だから打席数が一番多く回ってくる。
攻守交代の際には毎回ストレッチを怠るなよ」
「はい!分かりました!」
怪我が治ったと言っても再発しないとは限らない。
まして次もし再発すれば野球人生の終わりにも・・・・・
毎回ストレッチというのも気持ち的に面倒ではあるが
対策を取っておくのが何よりも一番。
試合前日、須網は風呂で足首のストレッチをしていた。
体が解れるこの時がリフレッシュの時間。
軽い感じがする・・・緊張はなく落ち着ける。
監督はこうも言っていた。
「本来ならばお前は2,3回戦辺りで使う予定でいたが・・・・・
やはりその守備力は投手にとって大きく心に余裕が出来る。
久々で急だが期待しているぞ」と。
これが彼にはとても嬉しい一言だったのではないだろうか。
---やってやる、そう強く念じて眠ることにした。
まずは決勝戦まで進出することだ。
(カキーンッ!!!)
4打数の2安打で2打点。
初回に安打で出塁し、後ろが上手く繋げてくれて得点に結びついた。
8回には下位打線が作り上げた好機を逃さずタイムリー二塁打。
これが決勝打になり金屋高校2回戦進出となった。
2回戦は4打数0安打。
打つことこそ出来なかったがこの日は守備で貢献。
2死3塁という状況で内野安打になりそうな打球を上手く処理してピンチ脱出。
後は打線が後半に打ち出して3回戦進出。
3回戦 5打数2安打で盗塁を1つ決めた。
相手投手の隙を盗み見事成功、2つの犠打で先制点。
これを守り切り、金屋高校初の準決勝進出。