第二十話【諦めよう】
診断の結果、【足関節脱臼骨折】再発。
完治するのには1年間の入院が必要だと言われた。
それに加え元の走力を取り戻すには更に時間が必要だということ。
須網剛は顔面蒼白で目の前が真っ白になったと言う。
「あの時は本当に泣きましたし、希望を失いました。
夏には失策で先輩達の夢を終わらせて、秋には試合中に足関節脱臼骨折・・・
自分はどれだけチームに迷惑をと病院で泣き続けました。
野球を・・・辞めようとも思いましたね」
病院内、大声で泣き叫ぶ高校生の姿。
左足には包帯が巻かれ自分で歩くことは出来ない。
少しでも力を入れると激痛が走るため、ベットで大人しくしていた。
その時の彼は目に光がなかった。
たった2年半しかない高校野球。
1年がどれだけ大きな時間か分かっているだけあって余計に辛い。
つまり残りの3年生最後の夏しか公式試合はない。
夢である【甲子園】にはもう手が届かない、と。
入院して1ヶ月が経過してもリハビリをしようと思わなかった。
家は裕福というわけでもなく、大学に行かせる学費は無かったという。
だから幼い頃から『プロになって裕福にする』と両親に向かって言った。
つまり高校でプロ入りしなければ野球人生には終止符を付かなければいけないとのこと。
入部当初こそ大きく期待のされていた新人。
それがこんな風になり、誰が評価しているのだろうか。
もう諦めようとずっと涙を流す毎日を送っていた。
そんなある日、突然の来客者。
『一体誰だろう』と思いながら「はい」と返事をする。
扉を開けて現れたのは何と監督だった。
元気そうな笑顔を見せて『元気か』と問いかけ
それに対して『・・・・・まぁ』と元気なさ気に答えた。