第十九話【悪夢再び】
秋の予選1回戦、須網は好調だった。
前回とは打って変わっての打撃の良さ。
1打席目から三塁手への内野安打で出塁するとすかさず盗塁をして好機を広げる。
2打席目はレフトフライだったが、3打席目はセンター前にヒット。
守備でも難しい球でも冷静に処理し投手を助けた。
『ナイスファイト!!須網!!』
一塁手側のスタンドから先輩達の声も聞こえた。
必死に応援してくれているその思いがしっかりと伝わった。
7回の守備、2点を奪われ更に無死満塁のピンチ。
全力投球を続けてきたために少し疲れている。
そんな投手を『先輩!!大丈夫です、守ります!!』と声をかけた。
その一言で落ち着いたのか先輩投手は二者連続三振を奪い2死満塁に。
次の打者にもストライク先行でカウント2-0。
得意のスライダーで三振を奪うつもりだったが、これを読まれ真芯で捕らえられる。
打球はセンターへと運ばれて逆転されるかと思った。
(バシンッ!!!)
遊撃手須網のダイビングキャッチで攻守交代。
夏の時と違い、仲間のピンチを救った。
これにはスタンドも大歓声でナイン達も歓喜の声を上げる。
監督も思わず立ち上がるほどの華麗な守備だった。
次の打順は1番、須網からの攻撃。
既に切り込み隊長としても頼られる存在にもなった彼。
失った2点をすぐさま取り戻そうという気持ちでベンチへ戻っていく。
ただ、グラウンドで立ち上がらない須網剛だけを除いて。
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「どうした!?須網!!しっかりしろ須網!!!」
ダイビングキャッチで足首を痛めてしまった様子。
慌ててベンチも駆け寄り試合は一旦中止。
スタンド側もザワザワとし始め雲行きが怪しくなってきた。
すぐさま病院へ運ばれる自分。
叫ぶことしか出来ないほどの痛み、ただ足を押さえ込むしか出来ない自分。
まだ試合は終わっていないのに途中で離脱する自分。
だがこれはまだ序章に過ぎなかった。