第十七話【やってはいけない失策】
須網剛は高校から神戸ティガースに入団した。
高校1年生からレギュラーの座を獲得した期待の新人だった。
守備に関しては既にプロのレベルであったし、足も速い。
スカウトには注目されていて、弱小高校であった金屋高校から
初のプロ入り選手が誕生すると期待もされた。
だが守備・走塁こそ一流だったが、打撃は二流だった。
夏の甲子園大会予選では7番としてスタメン出場。
打撃はそう得意と言うわけでもなかったが苦手というわけでもない。
練習ではミート力もそこそこあり、非力でもなかったために
下位打線では上の方である7番に彼を置いた。
だが結果は悲惨な物だった。
三振・併殺・併殺・三振と4打席連続無安打大ブレーキ。
守備では大きく貢献したが・・・・・・・
チーム安打数は10でわずか1点しか奪えなかった。
上位打線が好機を作ったが一人で全てを壊してしまった。
須網剛は本番にとても弱い選手だった。
2回戦でもスタメンで出場したが4打席連続無安打。
三度のバント失敗で走者を進塁させる仕事が出来なかった。
金屋高校が投手戦を制して1-0で勝利したが・・・・・
大事な場面での失敗は試合が終わった後でも頭に残っていた。
3回戦でも変わらずスタメン出場。
ついには5打席連続無安打で通算13打数の0安打。
またもや好機で打てず、併殺で攻守交代のケースが多い。
間が空かず休んでいる投手にも大きく負担が来る。
その打撃の悪影響はついにやってはいけないミスを呼び込んでしまった。
最終回2死3塁と大事な場面を凌げば延長に持ち込める。
金屋ナインもその気持ちで必死の気持ちを声に出した。
須網自身も好機を潰してしまったという自責の念があり
必ず守るという思いでグラウンドに立っていた。
だがその気持ちが強すぎ、焦りが生まれた。
平凡なゴロを悪送球・・・・・サヨナラエラーでチームは敗退した。
守備の名手と呼ばれていた期待の1年生のやってはいけない失策。
先輩達は『お前の守備で助けられた場面は大きかった、気にするな』
そう優しく声をかけてくれた。誰一人として彼を責める者はいなかった。
帰りのバスの中で、ただ一人声を押し殺して涙を流していた。