第十六話【持った興味】
CMから2分後、ようやく中継が再開した。
先程流れた『ラビット』とは西宮で有名なお菓子屋のこと。
モンブラン・ショートケーキ・ビスケット・マシュマロなど・・・・・
洋菓子が主となっており男女共に人気が高い。
一つの特徴として男性用という物もある。
これはケーキなどの砂糖量を少し減らしてある物を置いてあり
甘過ぎが苦手な人でも食べられるシステムの設置が人気を呼んだ。
店内も可愛らしく、お菓子で出来た家などがお出迎え。
外には看板兎の『よもぎ』と犬の『みんと』もお出迎え。
『特集!西宮スイーツ食べ歩き』ではお店と共に写真で転載された。
来年には東京にも店を出す予定らしい。
わざわざ訪れに行く人もこれで随分と楽になるだろう。
ただ当然ながら甘い物には興味がない彼女。
この2分間は退屈で仕方がなかっただろう。
「全く・・・・・甘い物など虫歯になる可能性が高まるだけじゃないですの。
それをどうして子供や大人は好むのかが理解できませんわ・・・・・」
どちらかと言えば草食系である。
肉も食べれるのは食べれるがそんな多く食べたいとは思わない。
脂が多く翌日体調が悪くなるケースがあるからだ。
だから夕食の時のように予め量を決めておく。
タレも瞬時に判断し、多すぎず少なすぎず。
『自分の体調管理が出来ないような者が大成など出来ない』
神竜寺義啓は要に、環に、麗華にそう伝えてきた。
言いつけをしっかり守るのもまた彼女らしい。
兄も姉も時々夜更かしをして体調を崩すことがあり、怒られたこともある。
何でも守っていけば将来損することは絶対にない。
ただそれだけを必死に何年間もずっと・・・・・・・・・・・・
だが違うのは今は勉強のためではなく、ただ一人の中学生として。
気になることを自分の意志で見ようとしてる姿がある。
昔を思い出すことも無かった彼女が。
「・・・お待たせしました、それでは須網監督の勇退発表シーンを」
・・・ようやく中継が再開する、須網監督の勇退発表。
「それでは須網監督の勇退発表を再開致します。
先程何故就任を断ったのでしょうか、と質問しましたが・・・・・
ではどうしてそれから監督に就任しようと思ったのでしょうか?」
「・・・それから数日後に、私の恩師から電話が来たのです」
「恩師とは一体?」
「高校で野球を指導してくれた監督なんです。
テレビを観ている時に突然だったから私自身も驚きましてね・・・・・」