第十四話【見てみよう】
監督勇退となれば相当な時間放送されるはず。
大体はその後に功績・球団の事も発表される。
そうなると1時間だけでは済まない、結構な時間が必要になる。
今そうすると普段自分が眠る時間は越えてしまうだろう。
少し悩んだ。勉強第一の自分がサボるような真似をするのはどうなのか。
しかし時々学校へ行ったり塾へ行ったりする時に思う。
どうしてわざわざ出来ることを毎日毎日やっているのだろうか?
会社を継ぐという事はほとんど決まっているのに何故?
何のために勉強をしているのか。最近になってそれが頭から離れない。
『学んで損なことは一つもない、誰よりも良くなりたいのであれば
学力を高めることが大事なんだ』
そう言われてからずっとずっと続けてきた。
自分でもそう思ったから何でも知ろうと考えてきたのに。
自分のしたいことは何?
(パッ)
「それでは須網監督の勇退発表をお送りします」
「!!」
考え事をしている間に発表の時間となってしまった。
アナウンサーが『須網監督勇退』と読み始め
すぐに画面が出てくるはずだろう。
見ないなら見ない。見るなら見る。
中途半端が嫌いな彼女はどちらを選ぶかだ。
意地でも勉強をとるか、テレビを見るか。
簡単な事のようなのに麗華からしたら難しいことだ。
それはまるで受験生のような行動、推薦で受かっているが。
リモコンを手に取ったが、電源ボタンを押そうとしない。
違う、押したくなかった。
「・・・・・・・」
彼女は教科書を閉じた、ノートを閉じた、問題集を閉じた。
何でか分からないが見ないと後悔する気がした。
リモコンは布団の上に置いた。