1話
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1日2話づつ20:00公開予定です
ガタガタ、ゴトゴト。
何もない岩場を、ボロい馬車みたいな乗り物が揺れながら進んでいた。
「‥で大金持ち‥‥傷もない‥‥」
ざわざわとした声が遠くで響いてる。地面が揺れるたび、頭の奥がズキンと痛んだ。
『んっ……ぃっ……痛い……』
うっすら目を開けると、私は木箱みたいなものの中に押し込まれていた。
『え……なに、ここ……?』
狭い隙間から外を覗くと、歪んだ大きな背中がゆっくり振り向く。
そして現れたのは、顔のパーツがめちゃくちゃな配置の──まるでロボットみたいな顔。
『ヒッ!』
「んー? おぉ! お姫様がお目覚めかぁ! 俺は本当に運がいい!久々に隕石漁りしたら、こんな掘り出しもんが見つかるとはなぁ……大人しくしててくれよ?」
バカでかい声が響く。何がどうなってるのか全然わからないのに、状況だけは最悪っぽい。
その時だった。
ドォン!という地響きと一緒に、悲鳴みたいな声が飛び込んでくる。
「うわぁぁぁ! レッヅ兄ぃ! やべぇぞ! 鉄喰らいが現れた!! くっそ!」
今度は小柄な奴が馬車に飛び込んできて、デカいやつに叫んだ。
「おいハズ!! おめぇが足止めしろ!」
「はぁ? なんでだよ! そういうのはお前の役目だろ!? そいつ独り占めする気か!!」
怒鳴り声が飛び交い、馬車はますますスピードを上げる。けど、砂煙を巻き上げながら“何か”が迫ってきていた。
次の瞬間──。
巨大な口が、スローモーションみたいな速度で馬車の横腹に噛みつく。
その衝撃で、私の入った木箱が放り出された。
ふわりと体が浮いたかと思うと、地面に叩きつけられる痛み。
箱はバラバラに砕け、眩しい光が視界を覆った。
──熱い。痛い。痛い、痛い、痛い!
あまりの痛みに目を閉じたけど、影が差し込んだ瞬間、少しだけ楽になった。
「ギチギチギチギチギチギチ……」
背後から、古い歯車が擦れるみたいな音が聞こえる。
振り向くと──そこに“それ”がいた。
鉄喰らい。
三階建ての建物くらいある、化け物じみた巨大百足。
そいつの口から、何かがぶらんと揺れている。
『……脚?』
──人間の脚だ。噛み千切られたそれが、ぶら下がっている。
逃げたいのに、体が動かない。痛みで意識も飛ばせない。
──ああ、もうこのまま死ぬのかな。
痛いんだろうな……嫌だな……いっそ、一瞬で殺してくれたらいいのに。
思考がぐるぐると渦を巻き、涙がにじんで視界が滲んでいく。
『アハハ……』
気づけば笑っていた。恐怖が限界を超えると、人って笑うんだな。
──ガゴンッ!! グシャッ!!
鈍い音とともに、鉄喰らいが地面に崩れ落ちた。
その背から、ひとりの人影が飛び降りてくる。
顔は髪に半分隠れていてよく見えない。でも……美しい。人形みたいに。
そして広がるマントが、まるで翼みたいで──
『……天使様?』
ああ、私、もう死んだんだ。そう思った瞬間、意識が遠のいていく。
私を抱きとめた“天使様”の腕は、鉄みたいに硬かった──。
※理解を深めるぷち情報コーナー
*⁂世界のかけら⁂*
【アンダー】
灼熱と氷結の地帯を総称して「アンダー」と呼ぶ。変異種が多く、外気温は60度を超える場所も珍しくない。特殊な装備なしでは、ほとんどの種族が数分と生きられない。
【鉄喰らい】
アンダーに生息する巨大な百足型の変異種。金属を主食とするため「鉄喰らい」と呼ばれる。体長は三階建ての建物に匹敵し、機械生命体ですら単独での撃破は困難とされる。




