7 モナの説得
ノルンにそう言われたモナは表情を硬くしてノルンに顔を向ける。
モナ「急に何を言い出すのお姉ちゃん?」
モナの言葉村長はハッとしてこの子の説得をしなければと思い出した。モナは優しい子であるが自分を育ててくれた村に対して愛している分半場意固地になっている。その為にモナの説得は骨が折れる位には大変なのは理解している。
ノルン「森で魔獣が出るようになれば戦う技術も無ければ武器や防具も無いこの村で生き残るにはモナは幼い、他のは村人たちは今まで生きてきた経験則があるけどモナにはそれがない。」
モナはノルンの言葉に反論しようとしたがノルンの言う事が事実なので口を噤み顔を下に向ける。
モナ「そんな事わかってるよ」
村長とノルンは悲しそうにそう言うモナに対し胸を痛める。モナを傷つけるつもり等無いがそれでも意固地になっている彼女を説得するには事実を言う必要がある、それが結果的にモナを傷つけてしまう事に対し二人は悲しくなる。
村長「モナ、これを機に一度村の外に出てみないか?」
村長のその言葉に対しモナは勢いよく首を横に振り村長の言葉に無言で拒否を示す。村長は一度ノルンに目線を向けた後に優しい声でモナに語りかける。
村長「この村を思うなら村の外に飛び出しいろんな事を知り学び経験を積む事が回り回ってこの村の為になるじゃろう。」
村長のその言葉を聞いたモナは顔を上げ村長に向かって堪らず叫んだ。
モナ「積んだ経験がこの村で活かせるの?!何か特産品を作った所で何処かの村の劣化にしかならないなんて私でも分かるのに?!村の皆だって何も無いって何時も言っているのに!!この村が賑わう事なんてあり得ない事なんて分かってるよ!!」
二人が思っている以上にモナは村の事を把握していた。村にあるといえば畑と大して美味しくもない木の実と薬草位しか生えていない森位でその森も魔獣が出るようになれば安全なのが売りだった駆け出しの森にわざわざ来る位なら薬草以外もある所に行くのが普通だと理解していた。
モナ「どうせ村が賑わうことが無いならせめて大好きな皆といさせてよ」
村長とノルンはそう言うモナに対し悲しくなる。二人はモナの未来を案じているがモナはそれを望んでいない、しかし村に居てはモナの可能性を腐らせてしまう。ノルンは優しくモナに対し話し始める。
ノルン「村の外に出ていろんな事が出来るようになれば村の皆だって喜ぶでしょうモナだって皆の喜ぶ顔が見たいでしょ」
ノルンの言葉にモナは納得しない。
モナ「皆の喜ぶ顔は見たいよ、でも帰ってきた時村のみんなが生きてるの?」
その言葉に村長とノルンは言い淀む高齢な者ばかりのこの村で死は身近なものだ。モナが拾われ育てられその間に寿命や大怪我等の理由で一人又一人と亡くなりその度モナは泣いていた。モナは村に帰ってきた時村人の誰かが死んでいるかもしれない事が怖くて仕方がなかった。その言葉を聞いた村長がモナに語りかける
村長「大丈夫、モナが帰って来るまでワシ達は死なないと約束する」
その言葉を聞いたモナは泣きそうな顔をして二人に問いかける。
モナ「村の皆にとって私は要らない子なの?だから何時死ぬか分からない皆のそばに居させてくれないの?」
村長は言葉を間違えた事に気づく、理不尽は何時も突然訪れる死なないと約束しようが絶対なんてものは無いだからモナの中で自分は村に要らない子だと結論付けさせてしまった、そんなモナにノルンは優しく語りかける。
ノルン「モナ、村の皆が君に笑いかけているなら要らない子じゃないんだよただ君が村に居たままじゃ君の為にならないんだ、君も知らない君の可能性を村の皆は潰したくないんだよ。」
ノルンの言葉の後に村長がモナを説得する。
村長「この村で誰もお前を要らない子等と思っておらん、お前はこの村全員にとって大切な我が子じゃ」
そう言うと村長はモナに近寄り優しく抱きしめる。
村長「じゃからノルン君と一緒に村を出て世界の広さを知ってほしいワシラのせいでモナの未来を狭めたくないんじゃ。」
ノルンは立ち上がりモナの頭を撫でる
ノルン「ボクがモナを守るから君が一人でも戦えるように鍛えるよ」
モナは二人の言葉に緊張の糸が切れ一度頷き村長に言う。
モナ「お爺ちゃん約束だよ帰って来るまで誰も死なないでね。」
モナの言葉に二人破顔する。
村長「あぁ約束じゃモナが帰って来るまで皆でまってるぞ」
モナはノルンに向き直り頭を下げる。
モナ「ノルンお姉ちゃんご指導ご鞭撻よろしくお願いします」
どこでそんな言葉を知ったのかと村長とノルンは苦笑しながらモナに言う。
ノルン「うん、モナよろしくね」
モナの巣立ちが決まり夜は過ぎる。