46 港町の依頼3
ノルンの戦闘を見ていたモナは何あれと冷や汗を垂らしながら引いていた。
首を後ろに引いて剣を避けたシーサーペントを恐らく斬撃を飛ばし首を斬ったのを見た時はおぉ〜、と目を見開いていたがその後の蹂躙が余りに恐ろしかった。
何で少し切れた切り傷が一周して首を落としたのだろう。
多分飛ばした斬撃が戻って来たのだろうと検討は付くが五頭まとめて仕留めたのに見てすらいない。
何か踊ったと思ったら襲い掛かって来ているシーサーペントを細切れに切り刻んだのを見てうわぁ~と引いた。
踊ったのはアレを放つための予備動作だろうがそれにしてもオーバーキルだ。
書類の確認を終えたノルンがモナァー、と手を振りなが呼んでいるのを見て乾いた笑顔を浮かべる。
モナ(私が思っていた以上にお姉ちゃんってとんでもなかった。)
ノルンの近くに行き仕留められた九頭のシーサーペントと原型が解らない程細切れにされたソレを見てまぁいっかと片付ける。
ノルン「モナに飛斬を見せるのは初めてだよね?ふふっ凄いでしょう。使いこなし極めればドラゴンの首だって切り落とせる技術だよ。」
モナ「いやまぁうん、凄いというか凄すぎるような。」
ふふんと胸を張り誇らしげにしているノルンと遠い目をして浜辺を削り十m程海を割る斬撃を思い出し海を見る。
海を見つめているとあれっ、とあることにモナは気付く。
今は昼間の為太陽の光で海は輝いているがある一点だけ黒くなっている。
水平線のかなり遠い所にあるにも関わらず浜辺で見る事が出来るくらい巨大な何か。
モナ「お姉ちゃんあの黒いのってなんだろう?」
ノルン「黒いの?うん何か居るね。」
モナの指差した場所を見てノルンは険しい顔をする。
そういえば先程のシーサーペント達は海に逃げようとしなかった。
それは何故?ノルンを殺せる為に居座っていたのか?
いや、それは最初だけだろう。
一向に捉えられないノルンから一頭でも首を切り落とされたら海に逃げればいい、元々海の生物なのだから。
やはり海に何か居るのかと疑問に思うがそれが何かなど検討も付かない。
そんな風に二人が見ていると鎌首を上げるようにソレが海から顔を出す。
「.......」
二人は息を飲みながら水平線の向こうで先程のシーサーペントを丸々食らい尽くせる位大きい口を開けている巨大な竜がそこに居た。
ゴツゴツとした竜の顔面、角は無いが岩を思わせる硬そうな皮膚と鱗、老人を思わせる白く長い巨大な髭、そして全体的に銀色に輝いている。
恐らくアレが居たからシーサーペント達は浜辺に逃げて来たのだろう。
モナの見立てでは全長百五十mもしくはそれ以上あるだろうと思い震えが止まらない。
ノルンの方もまさか、いやでも、実在していたというの?とぶつぶつと呟き混乱している。
巨大な竜は口を開けウォォォォォォォと低い唸り声を上げている。
そして口を閉じ海の中に沈んでいった。
海に黒さは無くなり太陽の光で海が輝いていた。
モナ「お姉ちゃん。アレ何?」
震えながら聞くモナにハッと我に帰ったノルンが唸りながら考える。
ノルン「もしかしたらなんだけどボクの故郷で伝わっている伝承の中で似たような竜が居るんだけど、まさか実在しているとは。」
モナ「お姉ちゃんの故郷?何か関係があるの?」
ノルン「いや伝承で居るってしか知らなかったから直接的には関係ないよ。伝承通りなら問題無いと思う。」
自身無さげに言うが問題は無いとはっきり言うノルンをモナが不安そうに見ている。
ノルン「今見たことをそのまま言った所で信じて貰えないだろうから黙っていようか。」
コクコクと頷くがやはり納得がいかない顔をしているモナに説明をする。
ノルン「伝承通りなら深海から呼吸の為に上がってきただけだろうから。確か百年に一回だそうだよ。」
余りにもスケールの違う話に頭がパンクしそうになる。
モナ「お姉ちゃん、アレの名前は何?」
モナに聞かれ故郷でうたわれている五つの伝承の内一つを思い出す。
大渦を生み出し操り全てを飲み込む
大雨を降らせ荒れ狂う波を制すもの
その身体は銀に輝く深海照らす満月
雄大なる海の主母なる海を統べる者
恐れを持って敬い奉れかの者の名は
ノルン「大海の巨竜、アルデウス。」
ノルンの故郷でうたわれている五種の巨竜のなかで海に関する巨竜の名を口にする。




