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白日アリアは死んだのか?  作者: 黄色之鳥
第3章 蒼い日々
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4話

「これが、今の鷹野なのか?」近藤がスマホの画面を見ながら言った。


「そうみたいね」初上がさらりと言った。


「探してたんじゃないのか?」


「そのまま返すわ」初上がベンチから立ち上がった。「もっと、何かないの?」


「いや……そうだな……俺が知ってる鷹野とは少し違っていたからかもしれない」


「ついてきなさい」初上が歩き出す。


「なに? どこに行くんだ?」近藤も早足になって初上についていく。


「鷹野さんに会いにいかないと」


「場所が分かるのか」


「知らない。探してもらうわ」


「誰に」


「いいから、鷹野さんを助けに行くわよ」


 初上はそう言って、おもむろに電話をかけ始めた。


「何を焦っているんだ」


「鷹野さん、多分、死ぬつもりだわ」


「何だと?」


「あんな無意味なヘイトスピーチ、そうとしか思えない」


「場所を知ってる」


「え?」


「鷹野がいる場所を知ってる。あそこは、ゆうちゃんのお気に入りの場所なんだ」


「教えて」


「地元の小学校の近くの廃ビルだ。秘密基地だと言って、ゆうちゃんと忍び込んで遊んでいた場所だ。鷹野も知ってたんだな」


「急ぐわよ。案内できる?」


「ああ。ここから、そう遠くはない」




 ***




 鷹野は配信終了のボタンをクリックした後、ノートパソコンを閉じた。


 目を瞑って考える。


 ひどく、落ち着いていた。


 最後の演説には悪くないスピーチだったのではないだろうか。


 まさか自分が、配信者になる日が来るとは思わなかった。存外、気分は悪くない。


 醜悪な言葉の渦に飲まれるのも、たまにならいい勉強になるかもしれない。


 そう、たまにならばだ。


 この世界で人気になると、ああいった悪意とも戦っていかなければならない。よく有名税という言葉が使われるが、それで片づけるのは、あまりに不健全だ。いじめらる方が悪い、という理屈と同じように思える。そんなわけがないのだ、いじめる方が悪いに決まっている。


 彼女が死んでから、ずっと、足掻き続けてきた。


 何をすべきなのか、考えた。


 自らの力で、変えられる分は変えてやろうと、思っていた。


 結果は失敗だった。


 彼女たちは強かで聡明だったが、自分は愚かで浅はかだった。


 愚か者なりに、次にやるべきことはなにか、思いを巡らせた。


 彼女たちと同じように、何かを成し遂げてみたかった。走り切ってみたかったのだ。


 誰もいない、階段を昇っていく。


 息が切れるのが、心地よく感じた。


 後の世界のことはどうでもいい、ただ、全うするだけいい。


 この階段を昇り終えても、彼女たちの元へはいけないだろう。


 それは少し寂しいが、仕方がない。


 ドアを開けた瞬間、風圧に負けて転びそうになった。


 一歩踏み出すと、美しい夜景が目に飛び込んできた。


 下を見れば灯りが、見上げれば星が、まだ薄汚い世界を隠してくれていた。


「綺麗だ……」鷹野は思わずつぶやいた。


 未来に期待するだけの価値はある。考えていたよりも、世界は最悪ではないのだ。


「死ぬつもりなのね」初上の声だった。


 驚きはなかった。なんとなく、初上はここに来るだろうと想像していたからだった。最後に話しを聞いてもらうなら、初上がいいと考えていたぐらいなので、嬉しかった。


 友理も黒江も、初上も、この世界に生きるに相応しい強さを持っている。それが時に、誰かを苦しめていることも知っている。


「はい」鷹野は振り返って答えた。


「じゃあ、その前に少し話をしましょう」初上がにこやかな笑顔で言った。



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