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白日アリアは死んだのか?  作者: 黄色之鳥
第2章 白い日々
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6話

「あ、ログインできない!」加古井が声をあげた。「パスワードも、IDも変更されてるみたいです」


「いよいよね」初上がため息をついた。「他に、アリアのチャンネルアカウントのIDとパスワードを知ってるのって、鷹野さんだけ?」


「あと、社長も知ってますよね?」加古井がきいた。


「あ~……ずっと前に、鷹野君から『一応、伝えておきます』って教えてもらったような気がするけど、忘れちゃったな。メモに書いてあるかも」


「じゃあ、社長は犯人から外れるわね。アリアも甘姫も、1か月おきにパスワードを変更してますから」


「あ、そうなの」大和田が口を尖らせた。「なんか、複雑」


「じゃあ、鷹野さんかなあ……」加古井が呟いた。「ログインできる人じゃないと、変更できないですもんね」


「仮に、鷹野君がログイン情報を変えていたとして、じゃあ今、配信してる人は誰なんだ」大和田が頭を抱えている。


「一番問題なのは、現状ここにアリアの配信チャンネルやSNSを管理できる人がいないってことね。今この、アリアのチャンネル乗っ取って配信をしている人に、今後好き勝手されてしまう可能性があるわ」初上が真面目な表情で言った。「私は、黒ちゃんが残した『白日アリア』を守りたい」


 加古井は、初上の真剣な面持ちを見て、自分の認識が甘かったことに気付いた。あまりにも自然な形で配信が行われているので、ただ単にアリアがひとりでに戻ってきただけのような感覚になっていた。でも、それは違う。黒江はもう天国に行ってしまったのだ。魂を失ったアリアは喋ることはないし、ゲームも出来ない。


 今起きている問題は、アカウントの乗っ取りであり、アリアのなりすましだ。


 真剣に、早急に解決すべき問題だと言える。


「そうですね」加古井は力強く頷いた。「黒江さんのアリアちゃんを守りましょう」


「守るって言ったって、これどうしたらいいんだ?」大和田が自分のスマホに顔を近づけて、アリアの配信を見ていた。「この人がどこから配信してるのか、調べられないよね?」


「調べられたら大問題ですよ」加古井が肩をすくめた。


「だよね」大和田が鼻を鳴らす。「それにしてもすごいな、本当に似てるね。里沙ちゃんの双子がやってるんじゃない?」


「うそ、黒江さん、双子なんですか?」と加古井。


「黒ちゃんは一人っ子よ」初上が答えた。


「ごめん、言ってみただけ」大和田が頬を掻いた。「仮に双子だったとしても、声が似てるとは限らないし、喋り方まで一緒ってことはないだろうね」


「社長が言い出したんじゃないですかぁ」加古井がむくれる。


「このアリア……」初上がそこで言葉を止めた。


「何です?」加古井が続きを促す。


「いえ、何か違和感があって……生きてない感じがする、というか。魂がない、喋り方というか……この感じ、伝わりますか?」初上は、アリアの配信を眺めながら言った。


 大和田と加古井が、無言になって聞き耳を立て始める。


 数秒間、アリアの声だけが空間を支配していた。


「難しいな。俺にはわからないかも」


「言われてみれば……ん~、ちょっと合成っぽいところがあるような……」加古井が言った。


「え? 本当ぉ? どのへん?」大和田が大げさにのけぞった。


「どのへんって言われると難しいですけど……助詞のところ、とか?」


「え、助詞ぃ? どれどれ……」


 3人は無言になって、アリアの声に耳を傾けた。


「あ、今のところ! 『このアイテムは強い?』ってところ! 『は』の言い方ちょっと変じゃなかったですか?」加古井が早口でまくし立てる。


「いや……全然わからん」大和田が首を振る。


「プロに聞いてもらいましょうか」初上が片腕を広げた。「望月さんなら、判別できるかも」


「望月さんって、あぁ、あの人か……」加古井が顔をしかめる。「ちょっと怖い人ですよね?」


「私、明日辺りアポを取って、行ってきます」


「望月さんの会社に?」大和田が問いかける。「え、明日行くの?」


「ええ。おそらく、ビンゴな気がします」


「ビンゴ?」加古井が首を傾げた。「当たりってことですか?」


「ああ、いいえ……言い直します」初上が右の人差し指を伸ばして、くるりと回した。「一つは空くはずです。まだ、ビンゴにはならないかも」


「……どういうこと?」大和田が額をかきながら言った。


「とにかく、行ってきますので。何かわかったら報告します」


「あ、私もついて行っていいですか」加古井が右手を上げた。


「もちろん、一緒に行きましょう」初上が微笑む。


「十分、気を付けて行くんだよ」大和田は逡巡しているような表情を見せてから、そう言った。

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