表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

煙草よりも夫

作者: 御伽人

   『煙草よりも夫』


 27才になり、私と夫は楽しく食事をしている。23才の時に出会い、一年先輩だった夫。社内で寿を手に入れた。

 私は女アルバイト。煙草を吸いながら、新聞配達をしている。早起きは得意なので、少しだけ運動と煙草を吸うだけの稼ぎが欲しい。

 バイクで新聞配達をして、終わったら、家に帰り、夫を起こしてやる。それから、朝のご飯を作る。私は結構悪い気がしない。もう恋は終わったけど、大事な家族になったんだなって気がした。

 顔立ちは、夫はいい。私は普通だ。何で私を選んでくれたのだろう。もっと綺麗な人と付き合えて結婚も出来ただろう。煙草を吸うだけしか能がない女に。

 それでも、結婚した。教会でピアノを弾いてくれた信者さん。そして、大学時代の友人だけ呼んで誓いのキスをした。きっと半永久なら。ずっと、嬉しいな。過去の恋愛を糧に、ずっと温めた愛情が、二人を夫婦にさせて行く事になり、きっと関係が続けばいいのに。そう思っていた。

 結婚指輪は要らなかった。超高級ライターを強請った。私は煙を吐きながら、ずっとこのままでいいのかなって思っている。

 夫は他に付き合っていた相手がいた。私はとても綺麗な人で女から見ても、魅力的な女だった。大切にして欲しいと思った。一番愛した女で、今も心のどっかで生きている人だろうから。

 写真にも鞄の中にあるのを知っている。私は打算だったのだろうか。それが生涯いようとする決断を鈍らせる。もし、その彼女が寄りを戻すつもりがあるなら、私は別れを選ぶだろう。出来れば、打算じゃないと思いたい。私の事を本気で愛していると。

 煙草を吸う。21才で今までは吸った事はないけど、格好つけたくて煙草を吸いたくなった。私なりの気分転換になった。私は煙草を吸いながら、これが自分のあるべき姿なのかもしれないな。煙草を吸うきっかけは、駅前で煙草を吸う女優に惹かれた。

 私は結構、友人を大切にする。女の傍で卑猥なネタから、真面目な話、流行話、等女特有の話をする。3人でいつも共にしていた。

 たまにその事を思い出す。あれから、大分たったな。途切れて消えそうになる私の友人たち。私は、ただ煙草を加えながら新聞配達をする。

 消えない想い出は私にはない。最初の彼氏とのデートも忘れてしまった。でも、きっと感触として残っている。恋の吸殻が、積み重なりあい私を作ってきた。

 冷たい人だと思われているけど、でも色んな表情をする。心の中で。ずっとクールを気取るのも疲れる。でも、格好をつけたい。私の本能のような気がしたから。

例え打算であっても、私は本気だ。別れて泣く事はないだろう。死ぬ伏す時に走馬灯のような記憶の流れで、泣いてしまうかもしれないが。

 私はきっと、ずっと一緒にいられる。夫はもうあの人の写真を捨てた。本気で私を愛してくれるんだ。嬉しかったが、物悲しい気がした。

 それから、私たちは本物の家庭を作ろうと思った。愛情が通った純粋な夫婦として。

 私はいつも料理を作って待っている。必ず帰ってくるって信じている夫と食事を共にするために。

 そして、何時までもこの生活が続く事を祈っている。心からそう思っている。煙草を止めてまで、ずっとこの夫と一緒にいたいと思った。それぐらい、空気ような淡い愛情からまた濃密な愛情へと変わっていた。ずっと、この状態でいたい。

 二人でいた記憶を忘れないから。今なら、きっと、夫が死んだ時、素直で泣ける。そう思えた。外見が変わっても、心は変わらない。それでいいと思う。そう思うようになってきた。一番初めに恋したときより苦い。それは、純粋な愛情だからだと思う。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ