第一話 暗転
「あーあ、全然でねぇな」
大きな欠伸をし、ポリポリと横っ腹を掻く、てっぺん禿げの男は退屈そうにスマホでゲームをしていた。
男が一年以上続けている「マキシマム・ザ・レジェンド」は最初はランキング上位に入っていたが、今ではランキング内外をウロチョロしているソシャゲだ。
「はあー、ガチャしっぶ。最後の確定枠以外全部レアかよ」
ポチポチとガチャを回すが一向に狙いのキャラが出ない。
今日からピックアップ開始のキャラで、運営直々に「チートキャラ」なんて言ったもんだから、今まで貯めてきたガチャ石と課金までしたってのに……もう700連目だぞ!
「あーもう! どうなってんだよ! 今回のガチャ確率はよ! ピックアップ確率で5%だぞ!? 絶対嘘だろ!!」
700連もすれば、流石に一体は出てもいい確率だが……はぁ、仕方ない。今日は運が悪いと諦めて、明日また回そう。
最後にもう10連だけ回して……。
そうボタンを押した瞬間、ピックアップ確定演出の虹色の花火が上がった。
「お? おぉー!! きたきたきたきたぁぁ!!」
興奮して唾を飛ばしながら、画面を食い入るように見つめる。
ああようやく出たかと安心したのも束の間、ビシッと画面がフリーズする。
「ん? 固まった? おいおい今めちゃくちゃいいとこだったのによー」
おいおい運営の嫌がらせかーと思いながら、仕方なく再起動をした瞬間。視界が暗転する。
「ぁ……れ……?」
どさりと倒れ込む男のスマホに『リスタート』という文字が浮かんでいた。