3.
ぱちり。
僕が、目を覚ましたのは、自分の部屋のベッドだった。
ハッとして飛び起きて、僕は叫ぶ。
「サマーギャル!」
泣き笑いをしていた、サマーギャルの姿がまだ目に焼きついている。
「あのままじゃあ、あの娘は!」
僕の目から、涙が流れ落ちた。
外は、お日様がもう高く上がっていた。
庭に出ると、地面が湿っている。
どうやら、夜明けに雨が降った様だ。
雨上がりの、水たまりがお日様の光を受けてキラキラ光っている。
「僕は、どうしたら……」
その時だった。
風が、僕の周りを吹いた気がした。
「大丈夫、また、会えるっしょ。海でアタイを見つけてね」
そんな、声が聞こえた気がした。
「嫌だ! 僕は、君のことを、」
好きになってしまったから、
「絶対に嫌だ!」
ヒトデになんか、
「させないよー!」
僕は駆けだした。
雨上がりの道をひた走り、昨日夏祭りがあった神社へと向かう。
蝉が、鳴いている。
あの娘の、泣き声みたいに聞こえて、僕の胸は恋焦がれるように痛くなった。
息が切れそうになる。
走って走って、神社に着いた。
そのまま御神木の元へと向かう。
僕は御神木の足元に、膝をついて叫ぶ。
「お願い! お願いだから! サマーギャルを、どうか、どうか!」
あの娘がヒトデになってしまうなんて嫌だ、僕も、
「ヒトデにになってしまたっていい! 僕は、サマーギャルが好きなんだ! 一緒に居たい!」
ありったけの想いを込めて、僕は叫んだ。
しかし、奇跡は、何も起きない。
「うっ、うっ……」
僕の目から、雫が次々と落ちる。
雫の一滴が、御神木の根元に落ちた。
すると、
御神木が震えた。
そして、まばゆく、光り始める。
あまりのまばゆさに、僕は思わず目を閉じる。
目を開けた時、周りは夜になっていた。
突然のことに、声が出ない僕。
「お前って、ほんと、馬鹿っしょ……」
目の前に、サマーギャルが、立っていた。
「サマーギャル!」
僕は、抱き寄せた。乱暴に、けれど、そっと。
「待ってなんかなかったのに、ほんと、お前は、馬鹿っしょ」
温かな手応えに、僕は息を吐く。
少々乱暴な言葉遣いのお嬢さん、天邪鬼だから、僕のことを待ってたんじゃないかと、後から思う。
「お前なんかじゃない」
「え?」
「僕の名前は……」
サマーギャルの耳に口を寄せ、囁く。
真っ赤になるサマーギャル。
そして、言った。
「神様が、感謝しなさいって、言っていた意味が分かったよ……」
夏の夜の出会いが、僕たちを、出逢わせてくれた……。
これは、一夏の夜の恋物語。
天を駆けた、恋物語……。
お読みくださり、本当にありがとうございました!