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98. 聖水作り

ハロルドさん達狩り(ハント)組は一通り練習と確認を終えると、交代を入れながら亡霊レイス狩りを始めた。

いくつか魔石も出たらしい。


エルフ族の超美形魔術師イリークさんはさっき狩り(ハント)から戻って来た。

そして、戻って来るなりデイジーに「魔力を少し分けてくれ」と言った。

亡霊レイスに一撃を食らったとのことだ。


デイジーは露骨にしぶしぶとと言った様子で、イリークさんに撫でられている。

いつも元気なしっぽは全然動かない。



そして。


「つまりイリークさんは僕に聖水を作れって言うんですか?」

僕は言った。


「そうだ」

イリークさんはデイジーの背中を撫でながら言った。


デイジーはぷいっと顔を背けている。


「私でも聖水らしきものは作れる。クリフも作れる可能性はある。

聖水がたくさんあれば、狩りもしやすい」



聖水作りは聖属性の重要な魔術だ。

だが、僕は特に学んでこなかった。


じゃあ、今まで、何を勉強していたかって?


そりゃ、攻撃魔術をなんとか使えるようにならないかとか、治癒術の副作用をなんとかできないかとか。

様々な属性の防御結界とか、後は防御結界を組み合わせた場合の効果とか。

勉強することは他にいろいろあったのだ。



「これが見本だ」

イリークさんは聖水をコップに注ぎ込む。

問答無用だ。せっかちなエルフである。


「聖属性のマナが水に溶け込んでいますね。でも、水は水のマナ以外はなかなか受け付けませんよ」

僕は答える。


いきなり作れるだろうか?


「そう。いかに聖属性を水と親和させるかが術式の鍵だ。エルフ族の術式だが、……」

イリークさんは性急に術式を語り始める。


ちょっ、ちょっと待って。

僕は慌てる。


「別に秘術でもない。

だいたい聖水作りは人間の方が上手いのだ。とっとと書くなり覚えるなりしろ」

イリークさんは言った。


……そういう性格だから、デイジーに嫌われるんだと思う。



聖水。

術式を見るに、肝は、マナの細分化と水との親和性だ。細分化は、超薄い膜構造を作ると思えば良い。

そう言えば、しばらく前に水の中で膜構造を作ったな。シャーベットを作った時だ。

ああ言う感じで……。


なせばなるだ。やってみるか。

やってみれば、問題点も分かるだろう。




「こんな感じでどうでしょう?」


僕はイリークさんに、僕が作った聖水を手渡した。


なせばなった。やってみれば聖水作りは膜構造が応用でき、僕が得意な分野だった。

何度か試作しているうちに、術式は安定した。

水は安直に大峡谷の川の水を使ったぞ。


「使ったのは川の水か。やっつけだな。

だがその割には悪くない。とりあえず使えるだろう」

イリークさんは言った。



その時、ハロルドさんやナガヤ三兄弟ら、残りのメンバーが戻ってきた。

休憩だろうか?


「ハロルド。クリフの作った聖水だ。

質はイマイチだが、なんとか使える。これで聖水水鉄砲せいすいみずでっぽうを撃ちまくるぞ」

イリークさんが言った。


質はイマイチは余計な一言だ。



「すばらしい。

クリフ、君といっしょに来て良かったよ。

これで作戦の幅が広がる」

ハロルドさんは言った。


お褒めにあずかったのは光栄である。一応。



「聖水を撃ちまくるのは、もったいなくないスか?」

ギャビンが言う。

ギャビンは貧乏性だ。僕も同じ性質なので気持ちはよく分かる。


聖水は、基本的に購入するものである。神殿への寄付と言う名目になるときもあるが。



「瓶詰めにしようが、護符を貼ろうが、この聖水は、半日もすれば効果はなくなる。

どんどん使うべきだ」

イリークさんは言った。


「そうなんですか?」

僕はびっくりした。


聖水は瓶詰めにして護符を貼れば、けっこう持つものじゃないのか。


「エルフの聖水はそんなものだ。最初に秘術ではないと言っただろう。

聖水を長持ちさせるのは、人間の秘術だ。

さあ、クリフ・カストナー、どんどん作れ。どんどん使ってやる」


人間使いが荒いエルフだな!



僕は半分やけくそで、聖水を作りまくった。


皆はどんどん使いまくった。

聖水水鉄砲で、弾幕を張るんだそうだ。


エイムで幽霊ゴーストを仕留めたとか、亡霊レイスを追い詰めたとか話している。


みんな楽しそうだ。

僕は参加できないけどな!



疲れたら、デイジーのお腹で昼寝をさせてもらった。

これは、役得である。

ハロルドさんがすごくうらやましそうに見ていたよ。




さて、次の日。

僕は、第一便の聖水を作り終え、デイジーといっしょに昼寝をしていた。


「クリフさん」


声をかけられ、起きたら目の前に魔物モンスターが!……じゃなくてゴーグルをしたウィルさんである。


ゴーグルのせいで、怪しい生き物に見えた。


「びっくりした。おはようございます」

僕は言った。


「ゴーグル姿で失礼しました。

クリフさん、いっしょに亡霊レイスのダンジョンで宝探しをしませんか?」

ウィルさんは言った。


「ええと、」

僕の頭はまだ寝起きで働いていない。


「ハロルドさんの許可は取りました。

『三槍の誓い』の皆さんは、みな戦闘センスが素晴らしくて、私はいなくて大丈夫てす。

水鉄砲は、キンバリーさんに貸してしまいましたよ。

戦闘なんて野蛮なことよりも、地図作りと隠し部屋探しこそ冒険の醍醐味!

そのためにクリフさんの協力が必要なんです」

ウィルさんは続けた。


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