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91. ロイメの歴史について語る

僕達一行は、第二層への階段を降りていく。

ソンビの出る第二層は、相変わらずひどい臭いである。


『雷の尾』の連中によると、奥の方はゾンビより、スケルトンやグールが多くなり、臭いも少しはマシになるらしい。

いずれ、『三槍の誓い』も第二層は潜るつもりなのでありがたい。



「聖結界」

僕は聖属性の結界を張る。

全員が余裕を持って入れる大きめのヤツ。


「ふむ。良い結界だな、クリフ。では私は『照明』」

イリークさんはそう言いながら杖を振り、明かり魔術を使った。

行列の前と後ろに2つ明かりが浮かぶ。


イリークさんはダンジョンでも町でも、基本杖持ちである。


「こいつは怠惰な魔力頼み(ニート)魔術師ですから、杖がいるんスよ」

とギャビンは言っている。


だいたい魔力に余裕があるエルフは、人間ほど術式を練り上げることにこだわらない。

術式の冗長性を、有り余る魔力でカバーするのがエルフ流だ。


「そもそもニート魔術師とは何だ?」

イリークさんが聞いた。


さあ、なんでしょうね。




「なあなあ、冒険者番付の上位勢ってどんな連中なんだ?」

後ろの方では、ダグがネイサンさんに質問している。

周りにはコジロウさんとコサブロウさんもいる。


「この前2位だったマナ同盟は魔術師クランのパーティーだよ。

順位は浮き沈みが激しい。

リーダーが魔術師クラン内で持ち回りになってるらしい。

そして、リーダーによって方針が違うようなんだ」

ネイサンさんが番付を解説している。


「要は有能なリーダーと凡庸なリーダーがいるということだろう」

これはコジロウさん。


「番付攻略のコツはタイミングだな。凡庸なリーダーの回を狙えばいい」

多分コサブロウさん。


僕はナガヤ三兄弟の口調の違いをなんとなく分かるようになっていた。



「その次はどこなんだよ?」

これはダグだ。


「3位は盟約の守護者。エルフ族のみのパーティーだ。

当然みんな魔術師だ。長命種エルフだけに大ベテランもいる。

大きく崩れたのを見たことがない。

前回3位だったが、2位の常連はこっちだ」

ネイサンさん。


「実質ロイメ最強のパーティーってことか?」

コジロウさん。


「そうとも言える」

ネイサンさんが答える。



1位の『緑の仲間』は超大型パーティーで特殊だし、コジロウさんの言う通りかもしれないな……。

僕は彼らの話を聞きながら、そんなことを考える。



「でも、盟約って何なんだよ?イキってねーか?」

ダグが言った。


ダグよ、盟約が何故イキりに繋がるんだ?


「冒険者ギルド結成に関わる盟約だよ。

人間とエルフ族とドワーフ族の間で結ばれたと言われている」

ネイサンさんが答える。


「冒険者ギルドの歴史か。面白そうだな。

もう少し詳しく教えてくれ」

コジロウさんが言う。


「うーん。こういうことは、僕よりクリフ君の方が詳しいんじゃないな?」

ネイサンさんが言った。



いきなりのご指名だ。



「ええとですね、ロイメのダンジョンについて、冒険者ギルドの初代マスターが結んだ盟約です。

人間族・エルフ族・ドワーフ族でダンジョンを協力して管理する。

利益も互いに分ける。

そして、ダンジョンが溢れた時は、協力して対処する。

こんな内容の約束です」

僕はこんな風にまとめた。



「その盟約の元にロイメの冒険者ギルドができたわけか?」

僕の側にいたコイチロウさんが、話に入ってきた。


「そうです。

でも、冒険者ギルドと言うより、ロイメという都市まちがこの盟約の元に生まれたと言う方が正確です。

それ以前のロイメはダンジョンに集う無法者達の巣窟でした。

冒険者ギルドが無法者達を押さえ込み、町は発展しました。

だいたい冒険者ギルドの歴史は、ロイメ市議会の歴史よりも古いんです」

僕は教科書の文章をそのまま話す。



あ、そうだ、もう一つ。


「実は、ロイメと言う地名も初代ギルドマスター由来です」


これは少しレア情報である。

魔術師クランで調べ物をした時に、見つけた資料に書いてあった。


「ふむ。初代ギルド・マスターの名前がロイメだったとか言うオチか?」

コジロウさん。


「いいえ、名前ではありません。

初代ギルマスがダンジョンのことをロイメ、ロイメと呼んでいたそうで。

それを皆が真似て、地名になったとか」

僕は答える。


ロイメと言う変わった響きの言葉はどこから来たのだろう?

初代ギルマスの故郷の言葉なのだろうか?




「ゲートと冒険者タグはいつできたのだ?」

コイチロウさんが聞いてきた。


当然の質問である。


ダンジョンは小さく浅いものから、大きく深いものまで世界中にたくさんあるのだ。

その中でロイメのダンジョンは、特別だ。


伝説に十層あると言われる、世界でも屈指の深さ。

冒険者の管理とダンジョンの管理をうまくやっていること。

魔石の産出量。


ロイメがうまくいっている理由は、……とりあえずゲートと冒険者タグだろう。

歴代のギルマスは、初代のような荒くれ者を無条件で従える英雄ばかりではないのだから。



「冒険者ギルドができてしばらく後に、ゲートは設置されました。

冒険者タグは、ゲートに連動しています。

設置したのは、東方ハイエルフ。

初代ギルマスと盟約者が、東方のハイエルフに依頼したのです」

僕は答える。

これも教科書そのままだ。



「よくまあ、初代ギルマスは、東方の連中ハイエルフを引っ張り出したな。

東方ハイエルフも西方ハイエルフも、めったに大陸には関わらないのに」

エルフ族であるイリークさんが話に入ってきた。


「なんだよ、その東方とか西方とか。

お前とは違うのかよ?」

ダグが聞く。


「違う。

お前には分からんだろうが」

イリークさんは言った。


「イリーク、俺が馬鹿だからって、馬鹿にするんじゃねーぞ」

ダグは凄んだ。


「ダグよ、自分が馬鹿であることを知っているのは、お前の数少ない美点だ。

私は心の底からそう思っている」

イリークさんは言った。


イリークさんは、相変わらず容赦がなかった。



「エルフ族については、そこのクリフに聞け。人間族が知るべき情報は彼が知っている」

イリークさんはいきなり僕を指名した。


えーと、エルフ族についても、イリークさんじゃなくて、僕が話すんですか?



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