68. 銀弓と金盾 【秘密メモ 銀弓と金盾】
短期の潜りでパーティークラッシャーなぞ、気にしない。
そうかもしれない。だとしたら。
「単なるパーティークラッシャーの噂ではないと言うことですか」
僕は言った。
「そうだろうな。少なくとも、俺が予測した以上のことが起きている」
トビアスさんは言った。
「メリアン、『暁の狼』の後はどのパーティーにいたんだ? 教えてくれないか?」
僕は聞いた。
「そんなのどうでもいいでしょ!」
メリアンは答える。
怪しい。実に怪しい。
「ちゃんと本当の事を教えてくれ。でないと、対策も立てられない」
僕はメリアンをジット見る。メリアンがよくやる手だ。
ホリーさんもメリアンを見る。
キンバリーも、ミシェルさんもトビアスさんもメリアンを見る。
「分かったわよ。話すわよ。
わたしは、今まで失敗してきたから、次は女性のいるパーティーが良いと思ったのよ」
僕らが今探している女性のいるパーティーは、既に失敗済みなわけね。
そういうことは先に言えよ、メリアン。というか、言ってくれ。
「そして、見つけたのが『銀弓と金盾』と言うパーティーだった……」
そこでメリアンは口ごもった。
「そこなら俺も知ってるな。銀弓が女だ。1年ぐらい前に、南の方からやって来たパーティーだな」
トビアスさんが言った。
「どんなパーティーなんですか?」
僕はトビアスさんに聞いてみる。
「面白いぞ。なんと銀弓はスキル持ちだ!」
トビアスさんが言った!
おおっ!テーブルがざわめく。
スキル。神の贈り物とも言われる特殊能力である。
魔術と似ているが、効果は単純。
また、ほぼ生まれつきの能力で、修行で伸ばせるものではないと言われている。
例えば、物を異空間に収納できる、アイテムボックス。これは、冒険者憧れのスキルである。
……残念ながら、僕はスキルは持っていない。
と言うか、スキル持ちは魔力持ちよりレアで、めったにいない。
「すごいですね。僕はスキル持ちに会ったことがないんですよ」
僕は興奮して言う。
「レイラさん」
キンバリーがいきなり言う。
「は?」
「レイラさんがスキル持ち。アイテムボックス。中にハリセンを入れてる」
ええっとつまり、レイラさんのあのハリセンは、アイテムボックスから出てきてたの?
レイラさん、そのスキル、勿体なくないですか……。
テーブルに奇妙な間が降りた。
「その、トビアスさん、銀弓のスキルはどんなものなんですか?」
気をとりなおして、ホリーさんが食いついてきた。
冒険者なら、スキル能力に興味があるのは普通である。
「ええと、銀の弓は矢を構えてスキルを使うと……」
「俺には、彼女のスキル『銀の矢』は、矢の勢いを増すスキルに見えた。
本人は、矢の動きを、風に邪魔させないためのスキルだと言っていた。
ともかく、矢勢といい、矢飛びといい、射る早さといい、凄い射手だ」
おおー。皆がどよめく。
メリアンが何か言いかてけたけど……、ごめんメリアン、今面白いところなんだ。
「金盾もスキル持ちなんですか?」
「金盾はアイテムボックスのスキル持ちだな。
それに大盾を入れて持ち歩いていた」
大盾は、大きい分防御に優れるが、持ち運びが大変だ。それをアイテムボックスに入れておけるとしたら、ずいぶん楽だ。
それこそ、トビアスさんの言う輸送力にかかわるレベルだ。
「トビアスさん、『銀弓と金盾』はトビアスさんの評価でどのくらいですか?」
「クリフならそう言ってくるよな。いいぞ。俺の評価だけど」
トビアスさんはあっさり教えてくれるようだ。ワクワク。
「『銀弓と金盾』の欠点は、主力2人以外のメンバーが弱いことだな」
トビアスさんは話し出した。
「勿体ないですね」
ミシェルさんが言う。
「銀弓と金盾がしょっちゅう喧嘩してたからな。
そこそこ稼げるパーティーだが、やはり人は居着かない。
『銀弓と金盾』のパーティーとしての評価だが、
攻撃はB+。
銀弓の攻撃力は素晴らしい。ただし、周りが弱い。
一応当時は、初級攻撃魔術を使えるメンバーがいたが、辞めたがってた。
防御はB+。
金盾は、優秀な盾持ちだ。
だが、周りとの連携が弱い。もしかしたら、Bに下げた方がいいかもしれん。
情報はB-。
スカウトには報酬はちゃんと払っていた。でも、やる気がなかったなあ。
金を払ってるんだから仕事しろと言われるのが嫌だって言っていた。
回復はB。
初級の治癒術師はいたが、同じく辞めたがっていた。
ただし、エリクサーはちゃんと持っていた。怪我人の手当てもちゃんとしていた。それは、認めよう。
輸送はB-。
資金にものを言わせるんじゃなければ、輸送力はチームワークで決まる。お察しの通りだ。
金盾のアイテムボックスを入れてもこのくらいだな。
資金力B-かB。
連中の財布の中身は知らない。まあ、ちゃんと稼げるパーティーではあった」
だいぶ『銀弓と金盾』について分かった。
ホリーさんは、感心したようにトビアスさんを見ている。気持ちは分かる。トビアスさんのパーティー分析は凄いと思う。
「ちょっとわたしの話を聞きなさいよ!」
そこには、むくれまくったメリアンがいた……。