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57. 受付嬢ノラの笑顔

ゲートを出てから5日後! コジロウさんは、無事帰ってきた。冒険者タグも元の銀色に戻っている。


「そもそも勾留されるのがおかしい。

コジロウ君は、冒険者の権利として決闘を行ったんだ。

動機は人質の命を助けるため。立会人はロイメ市民である僕。

何一つ問題はない」

ネイサンさんは憤慨しつつ言っている。



「コジロウ、無事でなによりだ」

「兄者が戻って来てほっとした。我々の運試しはまだまだこれからぞ」

コイチロウさんとコサブロウさんはコジロウさんに声をかけ、互いに抱き合う。


「お帰りなさい、コジロウさん」

キンバリー。

「冒険者ギルドのお役所仕事も困ったものですよ!」

僕。


「冒険者ギルドには冒険者ギルドの面子めんつがあるのであろう。なかなか面白い体験であった」

コジロウさんは、口調は気楽な風である。

とは言え、無精髭が生えているし、言うほど気楽ではなかったと思う。



その日は、風呂でさっぱりした後(『青き階段』には蒸し風呂があるのだ)、『デイジーちゃんと仲間達』の皆さんと一緒に打ち上げをやった。


会場は、デイジーが出入りの許可を得ていると言う店で、なんとネイサンさんは借り切ってしまった。

ちなみに、毎度のことだが、ネイサンさんのおごりである。

ご馳走様です。


店は『青き階段』の側である。ユーフェミアさんやトビアスさん、それ以外の今回の件にあまり関係ないクランの皆も入れ替わりで参加した。おごりだからね。


レイラさんも来た。

ちなみに、親父は来なかった。

まあ、親父はコミュ障だからこう言う場所には来ないのだ。


……そして、どうやって家に帰ってきたか、記憶がない。




次の日は、二日酔いを押して、今回の第三層探索の精算である。

すごい金額になりそうだ。



まず、青銅怪鳥ステュムパリデス討伐及び魔石売上は、134万ゴールドだった。チェイスさんの言う通りだ。


続いて。

亡霊レイスのダンジョンの発見報酬……500万ゴールド。


驚きの金額である。

「報告が早かったのが良かったみたいですね」

これは、ユーフェミアさんの意見だ。


ニウゴの討伐報酬……100万ゴールド。


こっちは、トムさん曰くケチ臭い金額なんだそうだ。

「第三層ダンジョンに立て籠ったトロール族の討伐なら、最低150万ゴールド、いや200万ゴールドでも驚かない」

とのこと。


そして、『紅蓮の冒険者』が持っていた魔石である。Lv4の魔石が2つ!あった。

その他の小さな石も含めて、合計1169万ゴールドと鑑定された。


これは、「ダンジョンの中で魔石を持って遭難していたパーティーを助けた場合のルール」に基づき分配される。


今回は、魔石を持っていた『紅蓮の冒険者』側は、

「このままだと全滅が予測される状況」であり、

救助側『三槍の誓い』と『デイジーちゃんと仲間達』は、

「命の危険を犯して助けた」と判定された。


この場合は、60%が僕達のものになる。

1169万×60%で701万4000ゴールド。

端数の1万4000ゴールドは『紅蓮の冒険者』側に渡したから、僕達の分は、700万ゴールドだ。


締めて合計、1434万ゴールド。


「すごい金額ですね……」

キンバリーが言った。

「僕達も一回でここまで稼いだことはないよ」

ネイサンさんもため息をついた。



「ここから経費ですね」

ユーフェミアさんはそう言った。

『禿げ山の一党』での宿泊費、装備代、保存食代まで、どんどん経費に入れて行く。


「100万ゴールド。これくらいでいかがですか?もう少し頑張られますか?」


「十分だ」

コイチロウさんは言った。僕も頷く。

「こんなもんかな?」

ネイサンさんも言う。


1434万ゴールド-100万ゴールド=1334万ゴールド。

今回の利益である。


これは、最初に『青き階段』と契約した時の、高額クエストの条件を満たしたことになる。


クエストに関わった人数にも関わる細かい計算式があるけど、省く。

『青き階段』の取り分は、374万5000ゴールド。


ユーフェミアさんも隣のノラさんもニコニコだ。



「後は、これとは別にクランへの謝礼金ですね」

ユーフェミアさんが言った。

大儲けした時は、周りに金を配る。

冒険者の慣習ではある。


「このくらいかな?」

ネイサンさんが紙に書く。

それを見たノラさんがため息をつく。


「じゃあもうちょっと……」

ノラさんは、話にならないと言う風に首を横に振った。


こう言う時の彼女は、実に良い表情をする。

ユーフェミアさんは、そのためにノラさんを隣に座らせたんだろうけど。


「謝礼金とは何に使うのだ?」

コジロウさんが聞いた。


「まず、クランで働いているみなさまへのささやかなボーナスです。

後『青き階段』に所属する冒険者達にも少し。具体的には食堂のタダ券です」

ノラさんがハキハキ答える。


「兄者、こう言うのはケチらない方が良いのではないか?」


「そうだな、ノラ殿はいくらくらいが良いと思うのだ?」


ノラさんが提案した金額は、59万5000ゴールドである。


「こうすると、皆様の儲けはぴったり900万ゴールド。

9で割ると1人100万ゴールド。切りが良くなります!」

ノラさんの笑顔は輝くようだ。


結局、この金額で決着した……。



あー、二日酔いで1つ忘れてた。

「ええと、僕が、亡霊レイスの洞窟で取った魔石があるんです」

僕はポケットから、石を3つ取り出した。


小さいけど綺麗な石が2つ。

見るからにクズ石が1つ。


「これは、属性石です」

石を見たユーフェミアさんが言った。


なんか、精算が長引きそうな気配である。

二日酔いが辛い……。


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