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04. 情報通

次の日、『青き階段』に来たら、トビアスさんはいなかった。クランの用事だそうだ。

「ご本人から手紙を預かってます」

「すまん。予定が入っていたことを忘れていた。受付のユーフェミアさんが俺の代わりにサポートしてくれる。グッドラック」

グッドラックって何だよ。


とはいえ、トビアスのオッサンより、ユーフェミアさんの方が得した気はする。


あの後結局、僕は『青き階段』の入会書類にサインをした。


どのみち、以前いたクランは居心地が悪い。冒険者を続けるためには、新しいクランに入りたい。


『青き階段』はわざわざ手紙を書いて、僕を誘ってくれた。そして、彼らは僕が知らない情報を持っている。会費は以前より高いが、これは前のクランが安過ぎたせいもある。確かにサービスは悪かった。


クランとの取り分が問題になるとしたら高額クエストを達成した時、すなわち僕が冒険者として成功した時だ。それは、成功した後考えれば良い。


「トビアスさんの意見によると、クリフさんが冒険者として成功するために必要な仲間は、攻撃力が高い冒険者だそうです」

ユーフェミアさんが言った。


「そして、攻撃力が高ければ、魔術師でも、剣士でも、弓士でも良いそうです」

「パーティーにはスカウトとか回復役とか他にもいるんじゃないのか?」

「残りのメンバーは、組んだ攻撃役アタッカーのタイプに応じて考えた方が良いでしょう。攻撃役アタッカーが魔術師か剣士かでパーティーの構成は変わります」

まあ、そうだな。


「それに多分、クリフさんと強力な攻撃役アタッカーが組んだことを噂で流せば、自分を売り込んでくる冒険者もいると思いますよ。冒険者(この)界隈は、案外狭いですから」


「強い攻撃役アタッカーに宛はありますか」

「ないよ。あったら最初からそいつと組むよ」

「そうですよね。では、魔術師、弓士、前衛の戦士、どのタイプと組みたいですか?」

「あえて言うなら、中途半端な魔術師は嫌かな。大したことないのに大きな顔をされると腹が立つ」


これは本当だ。攻撃魔法が得意なヤツは、しばしば攻撃魔法が苦手な僕を軽く見てくる。僕から見ると、彼らの術式は大したことないんだけど。

とはいえ、こんなに我が儘言ってパーティーメンバーは集められるのだろうか?


ユーフェミアさんは、手帳をひらいてメモを取る。

ハーフエルフの特徴のある少し尖った耳が間近に見えて僕はドキマギした。

メモを取り終えたユーフェミアさんが顔を上げた。

「とりあえず、情報が集まってそうな場所に行きましょうか」




冒険者クラン『風読み』。

小さな目立たない看板が出ている。

冒険者街のはずれ、倉庫街に近い辺りだ。扉を開けると小さな鐘がなった。


『青き階段』に比べると中は狭い。受付の台の上に女の子が一人乗っている。ショートパンツの下に派手なタイツを履き、腰には小剣ショートソード。スカウトの服と道化の服が混ざったような感じ。

12~3歳だろうか?ほっそりした身体つき。白金の髪を襟足で揃えている。色白で、目は深紫だ。

美少女だけど、何か違和感がある。



「よろしく。あたしはレイラ。見かけはこんなだけど、あなたより年上だから安心して」

「クランマスター自らの出迎えありがとうございます。クリフさん、レイラさんはハーフエルフ・ケンタウロスで冒険者クラン『風読み』のマスターなんです」


ケンタウロスは、半人半馬の伝説があるが、現実にはそんな変な生き物ではない。手が2本足が2本のれっきとしたヒト族(ヒューマノイド)だ。


大陸中央の乾燥地帯に住む剽悍な遊牧民で、小柄な凄く足が速い馬を自在に操る。

彼らの特徴は小柄なこと、と言うか成人しても人間の子供のように見えることだ。


レイラさんによると、エルフの長寿とケンタウロスの幼形成熟ネオテニーが混ざってあたしの外見が出来上がったの、とのことだ。


「魔術師のたぐいは嫌いなんだけど、『青き階段』のクランマスターには以前世話になってるからあたしが出迎えたのよ、感謝しなさい」


「情報通のレイラさんを頼って来ました。強い攻撃役アタッカーでフリーの冒険者をご存知ありませんか?できたらCランク以下で」

「情報のランクとしてはBってとこね」

「いえ、できたら無料ただで教えて下さい。こちらのクリフさんはパーティーを立ち上げることになっています。ご存知かもしれませんが、彼は防御魔術の名手です。必ず優良顧客になるでしょう。貸しを作るチャンスですよ」


ハーフエルフの眼鏡美人とハーフエルフ・ケンタウロスの美少女、二人の目線が交錯する。


「いや、お金は払います。あんまりたくさんは無理ですけど」

Bランクの料金っていくらなんだろう。あんまり高いのは無理だ。でも、無料ただは良くない気がする。お金を払って責任ある情報をもらわないと。


「ふーん、こう言うタイプか」

レイラさんは僕の顔をまじまじと見つめた。

「良いわよ。無料ただで教えてあげる。完全貸しにしておいた方が良さそうだわ」

「え……」

「条件は、将来あなたが攻撃役アタッカーを見つけて正式にパーティーを立ち上げたら、スカウトはうちのクランから紹介させること。いいわね」

「あの、」

「いーい、クリフ、ユーフェミア、あなた達の条件を満たす冒険者は、私の知る限り今のロイメにはいない、これが答えよ」




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