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239 暁の狼の解散【秘密メモ 悪党どもの災厄(仮)】

「トビアス殿、悪党が気の毒か?」

コサブロウさんが言った。


「まーな。

まず、レイラさんがいるだろ?

レイラさんは、目の前に悪党がいたら、首を突っ込むだろ?

ユーフェミアさんもいるだろ?

現地の法律を理解して、ギリギリを狙ってくるだろ?

そして、ハイエルフ(グウェンディアさん)大賢者(マデリンさん)がいるわけだ。」


うーん、確かに。



「ではトビアスさん、この4人組パーティーの評価は、どうなりますか!?」


トビアスさんといえば、秘密ノートでしょ。

答えてくれるかな?


「クリフ、お前なぁー。

まあいいか。

遊びも遊び、冗談で適当だぞ。

だいたいハイエルフのグウェンディアさんの実力が、全然分からないんだからな」


「お願いします!」

「遊びは大事だぞ、トビアス殿!」


「では、パーティー名は仮にだが……、【悪党どもの災厄】だ!」


「「「「「「おおー!」」」」」」

いいね!カッコいいよ!

キンバリーがもの凄い気合で拍手している。



「メンバーは4人。

リーダー、ハーフエルフの女で法律の専門家にして一応魔術師、ユーフェミア。

サブリーダー、ハーフエルフ・ケンタウルスの女、スカウトのレイラ。

治癒術師にして水魔術師、セイレーン族の女、マデリン。

東方ハイエルフ族の女で、多分魔術師、グウェンディア。

以上4名だ」



「攻撃はAマイナス以上だな。

グウェンディアさんがどのくらい強いか分からない。

とはいえ、人間相手の攻撃役アタッカーとしては、レイラさんはロイメでも最強格。

悪党がドラゴンやハイエルフじゃなければ何の問題もない。


防御もAマイナス以上。

まずマデリンさんの水結界がある。

グウェンディアさんの防御魔術の実力によっては、AやAプラスにもなる。

でもな、そこらをウロウロしている悪党を相手にするなら、防御Aマイナスで十分なんだよ。


情報はAだ。

このパーティーの厄介なところが、ユーフェミアさんの法律知識だ。

スカウトに関しては、レイラさんがいる。

法律の知識のある凄腕スカウト。

このヤバさが分かるよな?」


僕達は、こくこくと頷いた。



「回復、Aプラス以上。

前にも言ったが、マデリンさんがいればAプラス確定。

グウェンディアさんが治癒術を使うならSになる。


輸送 Bプラス以上。

身軽なパーティーだが、走りきるのは、ユーフェミアさんの体力がネックになりそうだ。

資金力はあるから、馬や舟を雇う手はある。

ハイエルフのグウェンディアさんが移動の魔術とやらを使いだしたら、Sだ。


資金 A

ユーフェミアさんとレイラさんは、必要な金は持っていると思う。

マデリンさんがいるせいで、薬のたぐいは不自由しない」


輸送を除いて、全てAになった。



「最後に総評だ。

ともかく非常に強力なパーティーだ。

彼女達のに対抗するには、軍や魔術師ギルドの精鋭部隊を連れてくるか、ドラゴン族やハイエルフ族の力を借りる必要がある。


俺は王国の悪党どもに警告する。

このパーティーが近づいて来たら、逃げるか、おとなしく潜伏しておけ。

言っておくが、レイラさんは、あちこちにクビ突っ込むのが好きだ。

引っ掻き回されるぞ」



「「「「おおー」」」」 

僕達は拍手した。


「さすがレイラさんのいるパーティー。強い」

キンバリーは嬉しそうに言った。


「【悪党どもの災厄】か。なかなか良いパーティー名だな」

コジロウさんが言う。



「クリフ殿、手紙は続きがあるのではないか?」

コサブロウさんが言った。


「高利貸しに払い過ぎたお金は戻ってきた。

時効という制度があるとかで、全部ではない。

でも、高利貸しに渡した金が返ってくるなんて、僕も村の連中もとても驚いている。

僕は世の中について何も知らなかった。

勉強が必要だと思った。

多少金がかかっても」



「そんなわけで、ウチの近辺には金貸しがいなくなった。

ユーフェミアさんは、『ロイメの金融業者にこの地域を紹介しておく』と言ってくれた。

本当に何から何までユーフェミアさんにはお世話になってばかりだ」


「実は、家族の中には『ユーフェミアさんはロイメの人だし、裏があるかもしれない』と言う者もいた。

ばーちゃんは『もしかしたらそうかもしれない。でもユーフェミアさんは親切にしてくれた。だからまずは感謝して礼を言え』と答えた。

僕はその通りだと思った」


だから、御礼の手紙を送ってきたわけね。



「そんなわけで、僕は改めて君に礼を言いたい。

僕とバーディーを見捨てないでくれてありがとう。

助けるために、心を配り、金を払ってくれてありがとう。


そして、僕とバーディーに真剣に向き合ってくれてありがとう」


ちょっとこれは、心に染みる。

こういう御礼をあまり言われたことがなかったから。


「お詫びもしなければならない。

君を押し貸し呼ばわりしたのは不当だし、僕が無知だったからだ。

そして、『暁の狼』から君を追放したのは、本当に不当なことだった。

この件も、ばーちゃんにこっそり打ち明けたんだが、ものすごく怒られて、……物差しで叩かれた」


物差しか。気の毒に。


「そして、為替を同封する。

『暁の狼』時代にクリフから借りた金額だ。

返すのが遅れて申し訳ない。

ばーちゃんがへそくりから出してくれた。

受けとって欲しい」


封筒の奥に為替が入っている。

金額は、うん合ってる。



「その上でだ。

僕は何故、かつて君を追放しようとしたのか考えてみた。

お金のためではあったが、それだけではなかった。


嫉妬があったのは間違いない。

僕にとって、ロイメ生まれの魔術師のクリフは眩しい存在だった。

だが、それだけではないんだ。

僕はバーディーの第一の友人の座を君に取られそうな気がしたんだ。

僕は怖かったんだと思う。

ばーちゃんに殴られたあと、一人で考えた結論がこれだ」


……。


「僕とバーディーは、隣同士で、生まれ月も1月と違わない。

生まれた時から一緒だった。

だが、バーディーはロイメに残る道を選んだ。

僕とバーディーの道は分かれた。

とても不思議な気持ちだ。

だが、これで良かったのだと思うし、思いたい」



「最後に、こんなことを頼める義理ではないが、クリフに頼みたいことがある。

バーディーのことだ」


「呆れた。

これを頼むために謝ったのね」

メリアンが言った。


僕は答えなかった。



「バーディーにも手紙を送ったが、ちゃんと読んでいるかどうか心配だ。

一度様子を見てやって欲しい。

そして、僕や村の皆が心配していると伝えて欲しい」



「それでクリフ、バーディーに会いに行くの?」

メリアンが質問してきた。


「そのつもりだよ」


「私は行かないわよ。お人好しのクリフが一人でやってよね?」


まあ、そうだよね。




『暁の狼』は、本日をもって、完全に解散だ。

最後のメンバーである僕がいうのから間違いない。



「生まれた時から一緒の友人と別れるのは寂しいであろうな」

コサブロウさんが言った。


「別れがあれば出会いがあると言うではないか」

コジロウさんが言う。


「我ら兄弟にも、いずれ道が分かれる日は来よう」

コイチロウさんが言った。



夕暮れの日差しが窓から差し込んでいた。


あともう少しです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今回も面白かったです。 [一言] さて、恒例?のパーティー評価と打ち明けからの頼みごと。 そして安定のメリアンさんと安定のクリフくん。
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