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229. もう遅いということで、宜しく

トビアスさんとダレンさんはちゃんと依頼を果たした。

僕がメリアンと話した日の翌々日の午後、バーディーとサットンの二人を連れて来ると言った。


僕は、その日、朝からずっーと待っていた。

二人に会ったら、何を言うか、どのように伝えるか、ずっと考えていて、考え過ぎて、……頭と胃が痛かった。


会う場所は『青き階段』のロビーである。

ユーフェミアさんやメリアン、『三槍の誓い』の皆もいる。


さらに周囲では、暇している冒険者達が見物している。

一種の談判だし、見物人兼証人もいた方が良いとのことだ。



ガリン。

入口のベルが鳴り、『青き階段』の扉が開いた。

茶色の髪のバーディーと黒髪のサットン、二人が入ってくる。


服装は以前と同じ冒険者風だ。

装備は短剣のみ。

剣や盾はしちに入っているのだろうか?

来る前に行水でもしたのか、身汚くはなかった。



トビアスさんとダレンさんは、二人を僕がいるテーブルに案内した。


「クリフ!なんでお前がここにいるんだよ!」

バーディーが僕を見て、言った。

緑の瞳には、強い感情が宿る。


「僕が君達二人を呼んだんだよ」

僕はなるべく静かに答える。


大枚(はた)いてな。

だいぶ稼いだけど、100万ゴールドは大金なんだぞ。



「俺達がお前らを案内したのは、クリフに依頼されたからだ」

トビアスさんが言った。


「あなた達は、僕達を騙したんですか?」

サットンが言う。


「騙してないよ。

若手冒険者を支援する良い話があると言っただろ。

支援するのが、クリフ・カストナーだと言うことは黙っていたが」

ダレンさんが言う。


「まあ、座れ。

話はそれからになるぞ」

トビアスさんが静かに言うと、二人は大人しく座った。


まずは第一段階。



僕の向かいに座った二人は顔色が悪かった。


「ええとさ、今はダンジョンが閉鎖されてるしさ……」


バーディーは僕をものすごい目で睨んだ。

僕は思わず口ごもる。

いやさ、そんな目で見ることないだろ?



「契約になりますので、私から説明させていただきます」

ユーフェミアさんが割って入る。


ユーフェミアさんは契約書を取りだすと説明を始めた。


「レベル4の魔石の借用書の説明は以上です。

お二人は、まずクランで体を……」



バン!

バーディーが机を叩いた。


「クリフお前、俺達からさらに取り上げるのか?」

バーディーが言った。


「取り上げるなんて言ってないだろ。

二人ともすごく痩せてるし、このままじゃ病気になるぞ。

僕は心配してるんだよ!」


「何が心配だ。だいたいメリアンを、ったクセに!」


「えーと、メリアンは『三槍の誓い』にいるけど、それはメリアンが希望したからであって……」


「言い訳するな!」



バーディーはメリアンをられたと思っているようだ。


バーディーってさ、メリアンのことになると頭に血が登るんだよな。

どうしてそこまでメリアンにこだわるのか、僕には理解できないが。


とはいえ、理解はできなくても予想はできた事態である。


えーとそもそも、何故なぜメリアンを『三槍の誓い』に受け入れたんだっけ?

あっそうだ、親父よりはマシだと思ったからだ。


この複雑な状況(・・・・・)をどう伝えよう?



「ちょっとバーディー、なぜ私がっただのられただの対象になるわけ?

私はモノじゃないし。

私は自分の意思で『三槍の誓い』に入ったの!」

メリアンが乱入してきた。


バーディーは虚を突かれたようだ。


「……じゃあ、なぜメリアンは俺を俺達を裏切ったんだよ?

いつかまた、いっしょにパーティーを組もうって言ったら、『うん』って答えたのに」


「だって、『暁の狼』はもうないんだもの。

『うん』はリップサービスよ。

私は空気を読むたちなの」


メリアン……、今のはひどいよ。

そこまでストレートに言わなくても。

バーディーは悲痛な顔をした。



「よりによってクリフと組まなくてもいいじゃないか……」


「ちょうど、『三槍の誓い』が中級治癒術師募集って張り紙を出してたのよ。

でもね、決め手になったのは、キンバリーから『いっしょにダンジョンに行こう』って誘われたからよ!ね!」


そういうと、メリアンはキンバリーの手を取り、ブンブン振る。


「確かにそう言った。間違いない」

キンバリーはいきなり話を振られて驚いたようだが、ちゃんと返事をした。



バーディーはなんとなく状況を察したらしい。


「そんなわけで、私は『三槍の誓い』に入ったから。

今誘われても、もう遅いということで宜しく!」



バーディーの悲痛な表情は、すごく情けなさそうな表情に変化した。

諦めろ、バーディー。

キンバリーとメリアンの仲を引き裂くのは、容易ではない。

ハロルドさんもできなかったし、僕も第二層の吸血鬼バンパイア領域エリアに二人とも連れて行くことになった。

まあ、二人とも役に立ったけど。



「メリアンさんの件は、メリアンさんの意思優先です。

問題はお二人のこれからです。

融資できるのはとりあえず3ヶ月分ですが、随分楽になると思います」


「なあ、メリアン。この金は、クリフが一人で稼いだ金か?

メリアンが貸してくれるなら……」

バーディーはメリアンに言った。


「ブー。残念でした。

私はお金ないから。

私も協力するけど、しぶしぶ仕方ないから助けるの。

あまり期待しないで。

あー、美人に生まれると、本・当・に・大変だわ。

無駄に期待されて」

メリアンはツンツンと言った。



「クリフ」

今まで黙っていたサットンが、僕の方を見た。

「状況は理解した。

でも、ちょっと稼いだからって偉そうにしないでくれ。

こういうのをロイメでは、『押し貸し』っていうんだ。

僕はそう聞いている」

サットンは静かに言った。


いやその。


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― 新着の感想 ―
[一言] おぉ… もしやサットンはデキル子なのでは?
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