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198. オーク族の物語

「ソズン教官がそこまでオーク族を怖れる理由はなんなのだ?」

コジロウさんが聞いた。


「オーク族は男しかいない種族だ。

それがすべてだ」

ソズンさんが答える。


「男しかいないのに、どうやって子供を作るのだ?」


「ユーフェミアさんが言っていただろう?

異種族の女性に産ませる」


「略奪するのか?」


「略奪することもあった。

奴隷を買ってくることもあった」 

ソズンさんは答えた。



ロイメでは奴隷制は禁止されている。

奴隷売買だけでなく、奴隷所有も犯罪である。

奴隷を所有していたら、良くて追放、悪質なら刑務所だ。

王国でも、ロイメほど厳しくないが、公的には禁止されている。


だが、大陸にはまだ奴隷を残している国や地域もある。

当然、オーク族がいた2000年前は、奴隷は一般的だった。


「売られた女性の立場は別とすれば、ギブアンドテイクと言えませんか?」

僕は聞いてみた。


空気読めって?

スミマセン。すぐに突っ込みたくなる達なんです。



「オークは男しかいない。

奴隷女に子を産ませ、あっという間に増えて、勇猛な戦士団を作る。

そして、周り中を荒らし回る。

さらにオークか増える。

女奴隷の相場が上がる。

略奪される女も増える。

この頃には手のつけられない規模の集団になる」

ソズンさんは言う。



「オーク族は恐れを知らぬ戦士です。

なにしろ守るべき家庭はない。

2100年ほど前、オーク族に大英雄が現れました。

オーク族の巨大な軍勢を率い、大陸中を荒らし回りました。

大陸の男女比は狂い、人口は激減。

世界は荒廃しました。

あの荒廃ぶりは、ダンジョンが大規模に溢れたのかと思いましたよ」

ケレグントさんが言う。


ケレグントさん、もしかして2000年前から生きていて、それを見たんですか?



「俺たちドワーフ族は滅ぼされないために必死に戦った。

オーク族に滅ぼされるわけにはいかん。

考えてみろ。

女のいる種族が滅びれば、オーク族すら滅びるのだ。

納得できん話だ」


ソズンさんというかドワーフ族は、2000年前のことをまだガッツリ覚えていているようだ。

そして、たぶん……、恨みや憎悪や恐怖も継承している。



「……大陸は大変だな」

コサブロウさんが言う。


「非常に古い時代には、アキツシマにもオーク族はいたのですよ。

早々に滅ぼしたか、追い出すかしたようですが」

ケレグントさんは言う。



「アキツシマで、大陸で。

最終的にヒト族はオーク族を殺し尽くした。

最後の1人にいたるまでだ。まこと寛容さがない。

幼い子供のオーク族もいただろうに」

シラツユさんが言う。


「……シラツユさん、幼い子供どころではないはずです。

殺されたオーク族には乳飲み子もいたはずですよ」

ユーフェミアさんが付け加えた。


……。

ユーフェミアさんはオーク族に思い入れがあるのかもしれない。



暫くの沈黙を破ったのは、空気を読まないイリークさんだ。


「ハイ・レイスのシラツユよ。

さっきのオーク族のいた部屋はどこにあるのだ?」


「私が答えるはずがないであろう!」


「あの画像は本物か?

アンデッドは世界の記憶だと言っていたな。

貴様の知る過去の世界の記憶ではないのか?」

イリークさんは問い詰める。


「私が答えるはずがないであろう!」

シラツユさんは言う。



「ハロルド、救援活動は後にして、眠れるオーク族を探して始末した方が良いのではないか?

話を聞くに、オーク族は相当危険な種族のようだ。

あの画像が偽物なら良いが、本物の可能性もある。

世界には、クリフ・カストナーみたいに緑色の肌が好みな人間もいる。

その中には女もいるかもしれない。

何の拍子でオークが目覚めるか分からないぞ」



イリークさん。

言っておきますが、僕が好きなのは綺麗な緑色の爬虫類です。

オーク族ではないです。



「救援活動が先だ。

だが、眠れるオーク族は探しておくべきかもしれん」


「やめろ!お主らにダンジョンを荒らし回られるのは御免だ。

少なくとも、我が亡霊レイスのダンジョンにはおらぬ。

あの方より頂いたシラツユの名とラブリュストルの御名にかけて誓う」


その後、イリークさんはオーク族についてさらに問い詰めようとした。

しかし、シラツユさんはスッと姿を消してしまった。



「あのオークの画像が本物か偽物かどうかは分かりません。

でも、ハイ・レイスのシラツユはラブリュストルに誓いました。

オーク族がここにいないのは間違いないでしょう」

ケレグントさん。


「ドワーフ族に報告を入れて、冒険者ギルドにも報告を入れねばならん」

ソズンさん。


「救援活動が先だ」

ハロルドさん。




オーク族は滅んだ種族である。

つまり、世界最後の、この世でただ一人のオーク族になった者がいるということだ。

あの画像の戦士がそうなのだろうか?


彼のことを思うと心が痛んだ。

自分と思いを共有できる同族がいないというのは、どれほどの孤独だろう?



とはいえ、今の話を聞いて、オーク族には復活して欲しいとは思えない。

同情はするが、僕にとってはオーク族は2000年前のことで、歴史の彼方で、他人事だ。



それにしても、ユーフェミアさんはオーク族もに随分詳しいみたいだった。

ロイメにもオーク族の資料はあるのだろうか?


……帰ったら調べてみるか。


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