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177. アンデッド・バスターズ

一層からパーティーがドカドカと階段を降りてきた。


「おめえら、食屍鬼グール狩りに行くぞ。

ゾンビにビビるな。

ヤバいのは食屍鬼グールの毒爪だ。

万が一やられたら、即報告しろ。

さあ、第二層の専門家(プロ)『アンデッドバスターズ』出陣だ!」


『アンデッド・バスターズ』は6人組のパーティーである。

ゴツい鈍器を持った者、聖水の樽を担ぎ水鉄砲を持った者、杖を持った魔術師、もちろん盾を持った者。

分厚い手袋をはめ、頑丈そうな革のブーツをはいている。

マスクをしている者もいる。



食屍鬼グールの毒爪はヤバいぞ」

コジロウさんが冒険者パーティーに声をかけた。


「承知の上だ。毒消しは持った。

亡霊レイスよりはマシだ」

リーダーと思われる男は言った。



「ゾンビだらけで臭いもひどいもんだぞ」

コサブロウさんが言った。


「臭いごとき『アンデッド・バスターズ』は恐れはしない。

こんな入口で食屍鬼グール狩りができるなんざそうそうないチャンスだ」

リーダーは答える。



「その意気やよし、と言いたいが。

人間の男6人組はやめておいた方が良いな」

ソズン師範が言う。


ダンジョンで、人間の男6人組は不吉。

そういう言い伝えは、冒険者の間に確かにある。


「余計なお世話だ。

俺達は6人組でこれまで仕事をしてきたんだ。

おら行くぞ!」

リーダーは言った。


「「おーっ!」」 

パーティーメンバーは応えた。



かくして『アンデッド・バスターズ』は結界の向こうへ出ていった。


無事に帰ってくるといいが。



結論を言う。

『アンデッド・バスターズ』はあっという間に帰って来た。

結界を出て十数歩、すぐに回れ右をして帰って来たのだ。

想定外!



「ゾンビと食屍鬼グールに怖気づいたか?」

コサブロウさんは言った。


「いきなりダンジョンの天井から足元に小石が落ちてきた。

不吉・・だ」

リーダー格は言った。


さようですか。



「賢明だ。

こういう非常時は、ダンジョンの神(ラブリュストル)のサイコロの偏りが激しくなる。

悪い運は呼び寄せない方が良い」

ソズンさんは言った。



「なあ、ドワーフのオッサン」

パーティーリーダーは言う。


「ソズンだ」


「おい、ソズン」

パーティーリーダーは再び言う。

いや、やめて。その人ヤバいから。


「ソズンさんでお願いします」

僕は言った。


「ソズンさん」

パーティーリーダーは三度言った。


「なんだ?」

ソズンさんは答える。


「人間族の男6人組は不吉だと言ったな。

どうすればいい?」


「ハーフ種族でも良いから異種族を入れる。

人間族でも異種族でもいいから女を入れる。

どちらも無理ならせめて人間族の男5人組にする」

ソズンさんは答える。


「誰かを置いていけって言うのか……」

リーダーは眉間に皺を寄せた。



「おい、俺で良ければついていってやるぞ。

俺はハーフアキツシマトロールだ」

コジロウさんが言い出した。


「俺もついていくぞ。

食屍鬼グールとの戦い方を教えてくれ」

コサブロウさんも言った。


「ふむ、ヨシッ。

一緒に来てくれ。

おい、予備の手袋を2つ持ってこい」



かくして、コジロウさんとコサブロウさんは『アンデッドバスターズ』と共に第二層へ出ていった。



『アンデッドバスターズ』は今度はUターンすることはなかった。

食屍鬼グールをチームワークで狩っているのが結界越しに見えた。

コジロウさんとコサブロウさんも一緒に食屍鬼グールを狩っている。

ゾンビや食屍鬼グールの返り汁もかなり食らってそうだ。



「不思議なものだよなあ。

僕にとっては亡霊レイスが相性が良い魔物モンスターなんだ。

でも、アンデッド・バスターズにとっては食屍鬼グールがやりやすい魔物モンスターになる」


「そうですね、それぞれ専門があります。

そうなる原因は何でしょうね?」


どう説明すれば良いだろう。

ええと。


「やっぱり特殊なのは亡霊レイスだな。

亡霊レイスは物理防御が効かない。防御のためには、結界を張るしかない。

さらに亡霊レイスにやられた場合、エリクサーも治癒術も効かない。

防御結界が得意な僕には亡霊レイスは得意な魔物モンスターなんだ。

でも、普通の冒険者には食屍鬼グールの毒爪の方が対処しやすい」


「そうなると食屍鬼グールが増えたことは良いことですね」


「そうですか?」


「対処できる冒険者が増えますよ。

多数派が対処できた方が良くないですか?

それともあなたが活躍できることの方が重要ですか?」


「まさか!

重要なことは、救援部隊が奥に行ける状況になることてすよ」



ん、僕は誰と話しているんだろう。

良い具合に質問してくるからペラペラ喋っちゃったけど。


僕はヒョイと振り向く。

斜め後ろにいたのは、怪しさ満点の人物だ。


かなり大柄だが、全身をマントで覆い、フードまで被っている。


「あの、どなたですか?」


「あ、失礼しました。

私は、こういう者です」

その人物はフードを取った。



黒い艷やかな髪、白い肌、尖ったエルフの耳、青い瞳。

男である。

背も高そうだ。


これらの特徴を併せ持つ種族は……。



「何よ、このデブ・エルフ」

メリアンが脇から言った。



僕は一息つく。

ビビってもしょうがない。

出てきた以上、理由があるんだろう。

そのエルフの男は、メリアンの言う通り、かなり、いや相当なデブである。


ダイエットした方が良いんじゃないてすかねぇ、ハイエルフさん。


僕は言った。

もちろん、心の中でだ。




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