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174. 疲れた!

僕達はその日のうちに帰路についた。

僕はまだ魔力に余裕があるし、報告は早い方が良い。



行きのパーティーは8名だったが、帰りは17名となった。


帰り際に一緒に帰るメンバーを募集した。

結界の広さから定員12名と言ったが、希望者は9名のみ。

1人は『禿山の一党』からの使者なので、実質8名である。


イマイチ信用されていない。


第三層にいる連中は、エルフ・ドワーフの一軍パーティーと一緒に帰りたいらしい。


まあいいさ。

どちらが正解かはラブリュストルのみぞ知る、だ。



亡霊レイスは、帰りも僕の結界には近寄って来ない。

食屍鬼グールは2匹いたが、ワリアデルが仕留めた。

ゾンビをかき分ける作業は、ナガヤ三兄弟を中心に数人で分担した。


「臭ーよー」

「ヤバいなんか、ゾンビ汁ついた!」

「暗いよ狭いよ怖いよ」

「妻よ子よ、今帰るからな」

「ゾンビよぉ、水鉄砲のまとにして、遊んで追い回したのは悪かったぁ。

成仏してくれぇ」


人数が増えた分、文句も愚痴も増えたが、チームワークはまぁまぁだった。

コイチロウさんの指揮が良かったせいだろう。



ひたすら辛抱し歩き続けた後。

「あそこが第一層への階段です」

ワリアデルが指さした。


ワリアデルの指の先、ゾンビと幽霊ゴーストの霊光の向こうに、階段らしきものが見えた。


「あぁー、本当ーに疲れた。

今日は散々だったー」

メリアンが言った。


今回の『疲れた』には僕も全面的に同意するよ。




「今日中に帰還したか。

 『三槍の誓い』よ、ようやった!」

ザクリー・クランマスターは言った。

隣のユーフェミアさんは涙ぐんでいる。


急いで帰還した僕達は大歓声で迎えられた。

頑張った甲斐があった。



「やあ、クリフ・カストナー。

君ならやってくれると思っていたよ」

脇から声をかけてきたのは、ハーレムパーティー『輝ける闇』の黒一点シオドアである。


なんでここにいるんだよ?


「私達も救援部隊の応援に来たのよ。

死霊術師ネクロマンサーとして、アンデッドが暴れているのを見逃せないわ」

赤毛のネリーもいた。


後ろにはボンキュッとボンのトレイシーや、トロール族の大女ヘンニもいた。

トレイシーは片足剥き出しではなく、普通のズボンを履いていた。



「で、第三層はどんな状況なんだ?」

シオドアが質問した。


「普段と変わらない様子でしたよ。

時々ゾンビが降りてくるようですが、全部討伐したそうです」

僕は答える。


そして、書類と資料はユーフェミアさんに渡す。


「すると第三層以深は無事と言うことか?」

シオドアが確認した。


「第四層と第五層は不明ですね。

禿山の一党のお頭は無事と推測しているようでしたが」


「素晴らしいよ、クリフ・カストナー。

大手柄だ」



おいシオドア、僕の話ちゃんと聞いてる?



「皆、ただちに冒険者ギルドと各クランに連絡を入れるんだ。

第三層が無事と言うことは、全ダンジョンが溢れたわけではないと言うことだろう。

これならやりようはある。

日和ひよってた連中も来るだろう」

シオドアは言った。


「なぜシオドアが仕切っておるのだ?」

コサブロウさんが不満気に言う。


僕も同感である。

でも、僕はあまりにも疲れていて、文句を言う気力はなかった。



「貴様、後から来て何を仕切っておる?

一番に駆けつけて、ここを守ったのは我々エルフ族とドワーフ族だぞ。

どれほど大変だったと思っている」

エルフの女魔術師が出てきて、僕とコサブロウさんの意見を代弁してくれた。


来た時に、ザクリー・クランマスターと話していたエルフの女性だと思う。

だいぶ顔色は良くなっている。

エルフの女性にしては背も高く、美人なだけあって迫力がある。



「エルフの美しい方、気分を害されないでください」

シオドアはのうのうと言った。


エルフの女魔術師はキッとシオドアを睨みつける。


そう言えば、実力を持つ女性の容姿を褒める時は気を付けろって、親父が言ってたなぁ。


「コホン、失礼しました。

この場に人間族が一番多いので、つい」

シオドアは居住まいを正し、一礼する。やーい。


「人間族の衛兵は数が多いだけだ。役に立たぬ」


名指しされた衛兵と思しき連中は反論しなかった。

ロイメの衛兵部隊に聖属性が使える奴はほとんどいないだろう。

聖属性が使えれば、もっと稼げる仕事がある。



「そう怒るな、ディナリル。

その人間族のクリフが第三層まで往復したのだ」

ザクリー・クランマスターは言った。

そして、続ける。


「そこのシオドアの言うとおりにせよ。

おそらく、各クランはこれで動く」




「『雷の尾』とリストのメンバーについてです」

僕は、『青き階段』の皆に報告する。


「彼らは第三層に降りていませんでした」



「もともと皆、第二層の奥へ行くと言っていたからな」

ホルヘさんが言う。


「どうなるのでしょうか?」


「第三層以深への救援部隊が結成されるのは間違いない。

だが、第二層への救援部隊は分からない。

……第二層へ潜っている奴はけっこういるんだが」

ホルヘさんは続ける。


「第三層の救援活動の進み方と、Sランク会議の結果次第ですね」

ユーフェミアさんも言う。


ザクリー・クランマスターは何も言わなかった。



あ、もう一件報告がある。


「ええと、こちらは『禿山の一党』の……」


「ニールといいます。

お頭からこちらの救援に協力するように協力するように言われています。

お頭は『まだここを離れるわけにはいかない』と言っておりました。

初級ですが、聖属性を使います」


ニールさんは二十代後半ぐらいの痩せた男である。

貴重な聖属性の持ち主を出すとは、禿のお頭にしては気前が良い。


「よろしく頼む。

わしは『青き階段』のザクリー」


「それは!

あなたはもしかしてSランク冒険者、Zパウワ殿ですか?」


「そうじゃ」

ザクリー・クランマスターは答える。


「ここにサインを頂けますか?」

ニールさんは鞄から、ノートを取り出す。


「良いぞ。サインしてしんぜよう」



何で初対面で分かるんだよ!


実は、Sランク冒険者Z・パウワは僕も知っている。


ザクリーはZだ。

ヒントはそこかしこにあったのだ。

僕は改めて落ち込んだのである。




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