表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
172/241

172. ゾンビの海をかき分けて

僕達のパーティーは、第二層の階段を降り、第三層を目指していた。


「すげーな。亡霊レイスが全然近寄って来ない」

ドワーフのフセヴォロが言う。


正確には、最初に2匹近寄ってきた。

その2匹の亡霊レイスは、僕の聖属性の防御結界に突っ込み、成仏した。ザマーミロ。

そして、亡霊レイスは全然近寄ってこなくなった。


亡霊レイスは賢いからの。

クリフ殿の結界には近寄らないのだ」

コサブロウさんが槍で、ゾンビをぶった切りながら言った。



三層へ向かうパーティーメンバーは、『三槍の誓い』と、筋肉質マッチョエルフのワリアデルと、痩せ型(ヒョロガリ)ドワーフのフセヴォロ。

全部で8名。


ユーフェミアさんも来ると言ったが、ザクリー・クランマスターとホルヘ副クランマスターに止められた。


まあ、ユーフェミアさんはゾンビが苦手みたいだし、苦手なモノに突っ込む必要はないと思う。

誰でも向き不向きがあるんだから。


出発前に休憩も取った。

軽く仮眠を取って、頭はスッキリした。

完全回復(フルチャージ)ではないが、……体調は悪くない。



さて、亡霊レイスは近寄ってこないが、ゾンビはどんどんやって来る。


第一層に登って来たゾンビは聖属性を恐れていたが、第二層のゾンビは聖属性を恐れない。

明らかにイカれている。



ゾンビは僕の聖属性結界に触れれば灰になる。

それでもなかなか前に進めない。

何しろ先頭のゾンビが灰になる頃には、隙間を埋めるように次のゾンビがやって来るのである。


結局、ナガヤ三兄弟が槍を振るい、ゾンビをかき分けながら前進することになった。


ゾンビの海をかき分ける僕達。

これ絶対後で夢に出てくるよ。



「失礼します」


不意にワリアデルが弓を構え、短く呪文を唱えると矢を放つ。

ワリアデルは矢に聖属性を付与していた。

僕の目には、聖属性の術式と、白い輝きの軌跡が見えた。


矢に魔力を付与(エンチャント)して射る。

流石エルフ。なかなか面白い戦闘方法バトルスタイルである。


矢は一体のゾンビに当たった。

が、ゾンビは灰にならない。

アレ?当たったと思ったんだけどな……。


ヒュン。

ワリアデルは二本目の矢を放った。

矢は命中し、ようやくゾンビは灰になる。



「一射目は当たらなかったのかな?」

僕は言う。


「当たりました。

私の魔力が弱いのです」


「ゾンビを一射で灰にできないのは弱すぎないか?」

コジロウさんが言う。


コジロウさん、今それ言いますかぁ!


「あれはゾンビではありません。

食屍鬼グールです」

ワリアデルは答えた。


「……失礼した」

コジロウさんはゾンビを叩き潰しながら言った。



グールは、見た目はゾンビに似ているが、ゾンビより強い。

動きが俊敏だし、頑丈だ。

本から得た知識だけど。


僕の聖属性の結界は、亡霊レイスのような実体のないアンデッド魔物モンスターには、絶大な力を発揮する。

アンデッドでも実体のあるものには、効果は減る。

今回の食屍鬼グールは実体がある。

食屍鬼グールを遠距離攻撃で仕留められるのは、ありがたい。



「ワリアデルの魔力が弱いことは事実だからな」

フセヴォロが言った。

フセヴォロは、聖水の樽を背負って歩いている。


実は三層へは、『三槍の誓い』とエルフのワリアデルで行く手筈だった。

そこにドワーフのフセヴォロが割り込んで来たのだ。


渋ったワリアデルが出した条件が、聖水の樽を運ぶ荷物持ち(ポーター)としてなら、だった。

フセヴォロは、その条件を飲んだ。



「魔力が弱かろうが私は役に立っている。

貴様とは違う」

ワリアデルが言った。


「何かあったのか?」

コジロウさんが言った。


「フセヴォロは、ゾンビに中級の火魔術を使ったのです。

散々でした」


「ダンジョンで火魔術を使うとどうなるのですか?」

僕は聞いた。


「ゾンビは火魔術で燃えます。

そして、ゾンビが焼けると煙が発生します。

ダンジョンは常に換気が起きますが、しばらくは近寄れません。

でも、ゾンビは煙を気にせずどんどん来るんです」


フム。煙によって、ゾンビに有利な環境が一時的に発生するわけか。


「あれは俺も失敗だったと思っている。

普段の第二層なら、火魔術で正解なんだ。

でも、今みたいに溢れてる状況では駄目だった」

フセヴォロが言う。


「失敗する前にその程度のことは考えておけ。

ゾンビは聖属性で仕留める以外ないのだ」



どうやら筋肉質マッチョエルフのワリアデルと、痩せた(ヒョロガリ)ドワーフのフセヴォロは仲が悪いようだ。


しかし、聖属性以外でゾンビを仕留める方法ってなかったっけ?

強烈な臭いで、頭が働かない。




「コジロウ、持ち場を変われ。右腕が疲れた」

コイチロウさんが言った。


「ほいな、兄者。俺も左腕が疲れたところだった」

コジロウさん。


二人はヒョイと持ち場変更(ポジションチェンジ)をする。


コサブロウさんも含めて、この3人は仲が良い。

チームワークも抜群だ。 

『三槍の誓い』内で、妙ないさかいがないのはありがたいことだ。



僕達は、心を無にし、ゾンビをかき分けて進んだ。

キンバリーはもちろんだが、メリアンもちゃんと付いてきた。

2人とも一言もしゃべらなかった。


やがて、下り階段にたどり着く。

目的だった第三層への入口だ。


下り階段にもゾンビはいた。

でも、動きは鈍い。

僕の結界を避けようとする。

だいぶマトモだ。


向こうに薄明かりが見えてきた。



おぼろげにヒト属のシルエットが見える。


「我々は『三槍の誓い』とエルフ族とドワーフ族。

第一層より使いとして参った。

お通し願いたい」

コイチロウさんが声を張り上げた。



よろしければ、ブックマークと評価をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ