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166. 報告・暁の狼について

「君の元仲間、バーディーとサットンについてだが……」


僕はロビーで『雷の尾』から報告を聞いている。

僕の向かいにハロルドさん、その隣にはウィルさんが座り、後ろにはギャビンとダグが立つ。


「2人はもう『鋼の仲間』にいない。

しばらく前に出ていったそうだ」

ハロルドさんは言った。



「そうですか……」

僕は言葉が続かない。


「給料が安いと何度も文句を言ってたそうだ。

他にも同じパーティーのメンバーと何度か衝突していたと聞いた」


「……。」


「『鋼の仲間』の給料は、確かに安いみたいッスけどね」

ギャビンが後ろで混ぜっ返す。


「装備代やら、エリクサー代やら考えると、それなりに経費はかかっていると思いますよ。

まあでも、『鋼の仲間』の給料は安いですね」

ウィルさんも言った。


トビアスさんも同じようなことを言っていた。



「『鋼の仲間』の方針は、去るものは追わずだ。

バーディーとサットンと『鋼の仲間』との縁は切れている」

ハロルドさんは言った。


「分かりました」

僕は答えた。



「その後の2人だが……」


「調べてくださったんですか!?」


「受けた依頼だからな。

今、2人は人足仕事をしている。

『運河補修商店』にいるようだ。

ウィルが聞いた範囲ではちゃんとした商店のようだ。

ただ、なんだっけ?」


「『運河補修商店』は給料が良いけど、人使いが荒いという噂ですね。

『鋼の仲間』より稼げることは間違いないと思いますが」

ウィルさんが言った。


「以上だ。

『運河補修商店』の住所はこれだ」

ハロルドさんは、小さなメモをくれた。


「言うまでもないが、責任を感じる必要はないと思うぞ」

ハロルドさんは一言追加する。


「ありがとうございます。

皆さんに頼んで良かったです」

僕は礼を言った。




冒険者だったバーディーとサットンはもういない。

これは僕が聞きたかった報告ではなかった。


……。

でも受け入れなければならない。

事実なのだから。


そして、受け入れるとして、僕は次にどうするべきだろう?

いや、どうしたいのだろう?




「おう、三槍のクリフ・カストナー。

魔術師クランのポーターの話はもういいぞ」


いろいろ考え事をしていたら、突然声をかけられた。

時々僕に絡んでくる『深淵探索隊』の連中だ。


「そうですか」

僕は適当に答える。

実際、どうでもいいし。



「ソズン師範の紹介で、『洞窟の王者』のポーターをやることになったからな。

これで、俺達も五層デビューだ」


連中は自慢気に報告した。

無駄に声が大きい。


「……。」


もしかして、五層は『深淵探索隊』に先を越されるのか?

これはちょっと悔しい。


『三槍の誓い』もうかうかしていられないな、僕は考える。



「あーその、えーとだな」

ここで、『深淵探索隊』(おそらくリーダーだ)は口ごもった。


「?」


「あー、お前の親父、カール・カストナーのことで絡んだのは悪かったな」


これは意外な発言だ。

ホルヘ副クランマスター辺りから、何か言われたのだろうか。

それとも、五層デビューを決めた余裕からか?



「まったくですね」

僕は嫌味に聞こえるように慇懃いんぎんに答える。


「お前が親父を嫌う気持ちは分かったよ」


「ご理解いただけて幸いです」


「俺達も、冒険者番付で2位だの5位だの取って、さらに、マデリンさんに惚れられるような男は嫌いだ」


周りの『深淵探索隊』の連中もウンウンとうなづいた。



「俺達としては、お前の親父より、お前と『三槍の誓い』を応援する。

同じクランのよしみだ」


「はあ」


「だから、頑張れよ。

親父に負けるな」


そう言って僕の背中を叩くと、『深淵探索隊』の連中は去って行った。


なぜか応援されてしまった。


……まあ、頑張るか。

親父に勝つには、それしかないのである。



第12章「たかが番付、されど番付」はこれにて完結です。


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