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150. 真パーティークラッシャーvs真ハーレムパーティー

マデリンさんの一声に、ゾンビ達は肉片と化した。

これが大規模攻撃魔術の威力である。


僕が(おそらく)一生使えない魔術だ。

やっぱり格好いい。



「なんか身も蓋もない決着だったわね」

メリアンがボソッと言った。


それは、否定しない。



「でも、まだ肉片が残っています……」

ユーフェミアさんは怖々といった様子だ。


マデリンさんの魔術は聖属性ではないので、ゾンビが灰になったわけではない。

でも、マナの残量から見て、再形成は無理だろう。

来年の金鈴花の肥やしである。



コジロウさんがヒソヒソ声で僕に話しかけてきた。


「クリフ殿、マデリン殿の魔術に対抗する方法はあるのか?」


「今回の魔術なら結界で防げると思います。

同じ水結界か、水を固体にする氷雪結界か、力学結界か……」



どれが良いかな。

水は水を受け止めるから水結界か……、いやマデリンさんの干渉力が上回ると危険だ。

氷雪結界は、悪くはないが氷で視界が塞がれる可能性がある。

やはり基本の力学結界だな。



「術式は洗練されてましたが、そこまでパワフルな術ではありませんでした。

今回の術(・・・・)なら、僕の力学結界で防御できます」


「その割に凄い威力だったぞ」

コジロウさんが突っ込んできた。


「それはねぇ、ゾンビがアンテッドで生きてないからだよ」

マデリンさんが割り込んできた。

いや、……その、ビックリしました。



「そうなのか?」

コジロウさんは動揺した風はない。


「そうだよぉ。

生命体の中の水はねぇ、マデリンでもそう簡単に干渉できないの。

特にヒト族は難しい。

でもねぇ、ゾンビは生きてないから、干渉し放題なの」

マデリンさんは自慢気に教えてくれた。



つまり、ゾンビの体内に含まれる水は、水筒の中の水や、川の水と同じと言うことだろう。

これは知らなかった。良い情報だ。

僕の水魔術でも、ゾンビに干渉できるかもしれない。

今度やってみよう。


しかし、マデリンさんは、生命体の中の水への干渉は、簡単ではないとか、難しいとか、言ったよな。

できない(・・・・)とは、言ってない。




ビミョーだった空気を破ったのは、マークさんだった。


「素晴らしいです、マデリンさん!」

両手を開き、いささか大仰にマデリンさんを褒め称えた。


「ありがとう、マデリン!

お陰で薬草取りを再開できるよ」

リーダーの元気オバサンもガッツポーズだ。

「ほら、皆も!」


「ありがとうマデリン!」「やるじゃない!」「単なる色気虫じゃないのね」「見直したわ」



「まあねぇ。もっと褒めて」

マデリンさんは、満更でもない風だ。


「他の冒険者の10倍役に立ったよ」「もう格が違うね」



マデリンさんを冒険者の標準にされては困るんだよ!

僕は言いたい。すごく言いたい。


しかし、オバサンの集団には議論で勝てないだろう。

銀弓に特攻した僕でも、分かる。

僕は沈黙を守った。




ともあれ、ゾンビ騒動は解決した。

採集の再開だ。金鈴花取りは時間との戦いなのだ。



「向こうに煙が見える」

突然キンバリーが言った。


僕は、キンバリーが指差す方向を見た。

確かに川向こう花畑から煙が立っている。


「推測だが、向こうでもゾンビが出て、対抗するために火の攻撃魔術でも使ったのではないだろうか?」

コイチロウさんが言う。


「馬鹿だねぇ。

火魔術なんて使ったら、金鈴花が燃えてしまうよ。

まあ、川もあるし、火もここまでは来ないだろう」

元気なオバサンリーダーは言った。


所詮は対岸の火事である。採集は再開された。



しばらくして。


「薬屋マデリン!仕事やで!

助けてーな!」

『緑の仲間』のシーラさんが現れた。


シーラさんはケンタウルス馬に乗り、さらにもう一頭、普通の乗馬用の馬も連れていた。


「ゾンビに火魔術使ったアホがおるねん。

このままやと、金鈴花が燃えてしまう。

今、皆で消火頑張っとるけど、マデリンも手伝ってや。

水魔術最強はあんたなんや」


「えー、でもぉ、こっちにはマークがいるしぃ」


マデリンさんは気乗りしない風である。


「そんなこと言わんとって。報酬(はず)むさかい」


「えーでもぉー」

マデリンさんはグダグダ言っている。


「マデリンさん、行ってあげてください。

こちらは大丈夫です。皆にとって薬草取りの日は大切なんです」

マークさんが言った。


「ねぇ、マーク。今度デートしてくれる?」


「いや、それは……」



「ちょっと、アタシだってマークとデートしたいんだから」「そんなことになったら、皆で後ろから付いていくわよ」



「マデリンさん、すみません。

仕事もありますし、デートの約束はできません。

でも、薬草取りの日が終わったら、皆で打ち上げをやるので、そちらにご招待します。

私の奢りです」

マークさんは言った。


「わかったぁ。マークの隣の席だからね!」



「ちょっと図々しいわよ」「新入りの癖に」「反対側の隣は私だからね」



「分かりました。私の隣の席で」

マークさんは約束した。



「じゃあ行ってくるねー」

マデリンさんはシーラさんが連れてきた馬に乗り、僕達に手を振った。



「がんばれ!ここまで来たら応援する!」「『黄緑の仲間』の意地を見せてやって!」「頑張ってね、マデリン!」「手抜きしたらダメだからね」「GoGoマデリン!フレーフレー、マデリン!!」



マデリンさん(僕はひそかに真・パーティークラッシャーと呼んでいる)と、

『黄緑の仲間』(彼らは真・ハーレムパーティーと呼びたい。マークさんはたいしたものだ)は、

清々しく別れた。


真の実力者は、お互いを認め合うと言う。

そのパターンだろう。



「コジロウさん、対魔術師戦ならレイラさんが詳しいと思います」

僕はまだ厳しい顔をしているコジロウさんに言った。


「そうだな。レイラ殿に教えを乞うか」

コジロウさんは言った。




残り3日の薬草取りの日は、魔物モンスターは出なかった。


初日に、金鈴花は少し燃えてしまったが、全体の収穫量からするとたいした割合ではない。


「行った時には、火はほとんど消えかかってたぁ」

マデリンさんは言っていた。



『黄緑の仲間』の打ち上げは、僕達も参加した。

けっこう大騒ぎだったが、怪我人は出なかったので、ヨシ!

……ヨシとする。



薬草取りの日が終われば、いよいよ『冒険者番付』発表だ!


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