6、おっさん猫と遭遇する
「ふぁーあ、よく寝た」
俺は目を覚ますと、違和感を抱いた。
何かの寝息が聞こえる。
俺の股の間からだ。
布団をめくると、黒い猫がいた。
一応このアパートはペットOKだったが、俺は猫を拾った覚えがない。
「なんだ、お前は?」
俺は、猫を揺すって起こした。
猫はあくびをすると、しゃべり出した。
「おはよう! えっと、小野千草さんだっけ?」
「うわ、猫がしゃべった!」
「僕の名前はクロ。よろしく、魔法少女さん」
クロはそう言ってから、喉をゴロゴロとならした。
「おい、お前は何だ?」
「だからクロだって」
「そうじゃなくて、なんで此所に居るんだ?」
クロは前足を舐めてから言った。
「魔法少女の管理係だよ」
「管理だって!?」
俺は驚いた。
「うん、魔法を悪用したり、むやみに魔法少女だって言いふらさないようにしたり」
「そっか」
俺はなんだか納得した。
「それと、魔法少女の仕事のお手伝いをするよ」
「魔法少女の仕事?」
「うん。魔法少女の仕事は人助けだよ」
クロはのびをしてから言葉を続けた。
「一人救うたびに、この小瓶に星のかけらが入るんだ」
「へー」
俺がそう言うと、クロは時計を覗いて言った。
「ねえ、バイトの時間大丈夫?」
「おっと、やばい。サンキュー」
「これから、よろしく。僕は此所で寝てるよ」
クロはそう言って、眠ってしまった。
俺は着替えを済ませて家の鍵を閉めると、慌ててバイト先に向かった。
「おはようございます」
「おはよう、小野さん」
店長が笑顔で出迎える。
それにしても、店長はいつも店に居るけど、いつ家に帰ってるんだろう?
少しやつれた感じもある。
「店長、体調大丈夫ですか? いつもお店に居るけど」
「ああ、ありがとう、小野さん。大丈夫だよ」
そう言ったが、店長は足下がちょっとふらついていた。