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5、おっさん友達が増える

朝が来た。

俺は大きく、のびをした。

今日はバイトが休みだ。


特にすることもないから、近所の大きな公園に出かけていった。

公園の中を散歩していると、ベンチに小学生が座っていた。


「おう、どうした坊主?」

俺は話しかけてみた。

少年は訝しげな目を向けたが、18才の女性ということで油断したらしい。

俺の話しかけに返事をした。


「学校、行きたくない」

「そっか、俺もそうだった」

「お姉さんも!?」

「ああ、あんな狭くて苦しいところ、大嫌いだったよ」

俺がそう言うと、少年はちょっと難しい顔をして答えた。


「で、お姉さんは今何してるの?」

「バイト休みで、暇してる」

「ふうん」

少年は俯いた。


「まあ、生きてりゃ色々あるし、大学は楽しかったよ」

「僕は今が苦しいんだよ?」

小学生とは思えない言葉だ。

俺は、可哀想に思った。


「学校を一日くらいサボったって、死んだりしないぜ」

「お姉さん、言葉使い悪いね」

そう言って少年は笑った。


とは言っても、このままこの少年を一人公園に置いておく訳にもいかない。

「ライン、やってるか?」

「うん」

俺は、少年とラインを交換した。


「千草って言うんだ。お姉さんの名前、シワシワだね」

「うっせーよ」

俺は早速少年にラインを送った。

<よろしく>

少年の名前は西川にしかわ 正人まさとと言った。

ラインの返信が来た。

<よろしくお願いします>


「なあ、今日は学校遅れて行かないか?」

俺は仕方なく、そう言った。

「そうだなあ」

正人が暗い表情で俯いた。

「行って、早退すれば良いじゃん」

「うん」

「愚痴くらいならいつでも聞くから、ラインくれよ」


正人は戸惑っていた。

「僕、知らない人と口聞いちゃ駄目ってお母さんに言われてたんだった」

「そっか、そりゃ悪かったな」

俺が、がははと笑うと正人も微笑んだ。

「大人って学校に行ってないと、怒るものだと思ってた」

「そりゃ、人それぞれで上手くいかないもんだってあるさ」

正人が急に真面目な顔になった。


「お姉さんは大人なんだから、ちゃんとしないと駄目だよ」

「はいはい」

正人はそう言って、立ち上がった。

「なんか、学校行けそうな気がしてきた」

「おう、凄いぞ! 嫌ならすぐ帰れ」

「分かった」


俺は正人に手を振りながら、微妙な気分になった。

「小学校か。しんどかったな、あれは」

俺は一人呟いた。


「正人は登校拒否か? 一人で公園にいるなんて、家にも居場所がないのか?」

俺はちょっと、寂しい気持ちになった。


気分転換にバイト先のコンビニに寄った。

すると店長が笑顔で出迎えてくれた。

「小野さん! 良いところに来てくれたよ! 暇ならシフト入ってくれないか?」

「いいですよ」

俺はすることもないので、結局働くことにした。


夜になって、バイトが終わるころ、正人からラインが来た。

<学校、いられた>

俺は慌てて返信した。

<偉いぞ、正人。俺には出来なかったことだ。胸張って良いぜ>

すぐに正人から返事が来た。

<うん>


一応、人助けになったんだろうか。

俺はすこしだけ、ホッとした気持ちになった。

正人からまたラインが来た。

<お姉さん、言葉使い気をつけた方が良いよ、女の子なんだから>

<わかったよ>


こうして、俺に友達が一人増えた。

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