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10、おっさん服を買う

「千草、今週末、暇?」

「うん。でも菜央、なんで?」

バイトの最中に菜央に週末の予定を聞かれた。

俺は特にやることもなかったから、素直に暇だと答えた。

すると、菜央は目を輝かせていった。


「そしたらさ、ショッピングモール行かない?」

「ショッピングモール?」

俺が聞き直すと、菜央は頷いた。

「だって千草、いっつもTシャツにジーパンじゃん。もうちょっとおしゃれしようよ」

「おしゃれねえ……」


俺は自分の格好を見直した。

首元が伸びかかったTシャツに、裾の破れたジーパンをベルトで締め上げている。

たしかに、洒落っ気は0だ。


「いいよ。行こうか」

俺がそう言うと、菜央はにっこりと笑った。

「それじゃ、10時に駅前で待ち合わせね」

「うん」


菜央と約束した日になった。

俺はシャツとチノパンで、駅前に立っていた。

街を行き交う人々を見てみる。

女性はやっぱりおしゃれな人が多い。

ボンヤリ人混みを見ていると、聞き慣れた声がした。


「ヤッホー! 千草? 何してるの!?」

「百々花!?」

魔法少女の百々花が、大きめのワンピースを着て立っていた。

「これから、買い物に行くんだ」

「そうなの? 私も一緒に行こうかな?」

「駄目だよ、人と待ち合わせしてるんだから」


そのとき、俺に手を振って歩いてくる女性が目に入った。

菜央だ。

「おまたせ、千草。そちらの方は?」

「私、百々花、魔法……」

「あの、私の友達の魔法少女好きの百々花っていうの」

俺は魔法少女だと言うことを隠すためにごまかした。


「あの、今日って、私もご一緒しても良いですか?」

百々花はもじもじとしながら、とんでもないことを言ってきた。

菜央は、余り気にしない様子で言った。


「いいよ、百々花ちゃん。よろしく。私は菜央」

「菜央ちゃん、よろしくね」

百々花は可愛らしく首をかしげた。


「それじゃ、買い物に行きましょう」

菜央はそう言って俺と手をつないだ。

俺は焦った。菜央の手は柔らかかった。

「あ。私も」

「え?」

百々花が反対の手に絡みついてきた。

これってハーレム?なんて思いながら俺はにやけるのを我慢した。


電車に乗って、次の駅にショッピングモールはあった。

「じゃあ、ウニクロに行こう」

「うん」

俺たちは4階のウニクロに入った。


「やっぱり、これ可愛いね」

そう言って菜央はゆったりとしたワンピースを選んだ。

「色違いでおそろいにしない?」

菜央に聞かれて、俺はうろたえた。

ファッションなんて、ちっとも分からない。

「うん、菜央に任せる」

「千草って、スタイル良いのに全然服にこだわり無いんだね」


「私はこれが良いな」

百々花がひらひらとして細かいヒダがついているスカートを持ってきた。

「あ、可愛いね、それ」

「うん」

俺は買い物に飽きてきた。

「ねえ、そろそろお昼にしない?」

俺がそう言うと、百々花と菜央が時計を見て驚いていた。

「あ、もうそんな時間!?」


「お昼、何にしよう?」

百々花が聞いてきたので俺は答えた。

「がっつり食べたい」

「フードコート行こうか?」

菜央が言った。


俺たちは地下一階のフードコートに移動した。

「何食べる?」

「私、ハンバーガー。百々花ちゃんは?」

「私もハンバーガー」

百々花と菜央はハンバーガーショップに行こうとしている。

「私はちゃんぽん」

「じゃ、ここの席でまた会おう」

「うん」


俺たちは、ウニクロで買った服を席において場所をとると、それぞれ目的の店に向かった。


俺は、ちゃんぽん大盛りを頼むと小さな機械を渡された。

向こうでは、菜央と百々花がハンバーガーセットを受け取っている。

席に戻ると、菜央と百々花は俺の帰りを待っていた。


「先に食べてて良いよ」

俺がそう言うと、百々花と菜央はポテトをつまみ始めた。

「千草って、いつも何してるの?」

「別に。散歩とか」

悪者退治、とは言わなかった。


「百々花ちゃんは学校結構良いところなんだね」

「まあまあですよ」

「ううん、進学校で有名だもん」

「校則がゆるいから、ちょっと頑張ったんです」

百々花と菜央は仲良く話している。


そのとき、俺の機械が震えた。

「あ、ちゃんぽんできた。取ってくる」

俺はちゃんぽんを取りに、席を外した。


ちゃんぽんは結構な大盛りだった。

俺が席に戻ると、百々花と菜央は恋愛話をしていた。

「あ、千草、千草って好きな人居るの? まさか店長?」

「まさか。居ないよ」

「あれ? 千草、そんなにいっぱい食べるんだ、凄いね」


百々花と菜央はまた、恋愛の話に戻った。

「やっぱり、ちゃんとした会社で働いてる人じゃないと困るよね」

「私は、自分でお店とかしてる人が良いな」


フリーターの俺には耳が痛い話だった。


「今日の夜はバイトだから、そろそろ帰ろうか」

百々花と菜央は、俺が食べ終わるまで色々おしゃべりをしていた。

「美味しかった」

俺は人と食べる食事は、やっぱり良いなと思った。


「それじゃ、バイバイ」

駅に戻ると、百々花は帰って行った。

「百々花ちゃん、良い子だね」

「うん」

俺は菜央の言葉に頷いた。


「千草、今日のバイトに買った服、着てきてね」

「いいよ」

俺はそう言いつつも、ちょっと不安だった。

似合うとは言われたけれど、足の下がスースーして落ち着かない。


「それじゃ、また後で」

「ああ、バイバイ」

俺は買い物袋を抱えて家に帰った。


「遅かったね、もうご飯たべちゃったよ」

クロが言った。

カリカリが器用に開けられて、すこしこぼれていた。

俺は落ちているカリカリを袋に戻し、口を止めた。


「魔法少女ってバレてない?」

クロの言葉に俺は頷いた。

「百々花はちょっとヤバいな。隠す気がないらしい」

「あの子はそう言うキャラって納得されるから大丈夫だよ」


俺はノンアルカクテルを一本飲んで、一息ついた。

そして、買ってきた服に着替えて鏡を見た。

「これで外を歩くのか」

「いいんじゃない?」


クロの言葉に、俺は首をひねった。


バイトの時間になった。

俺はいつもの道をスカートをひらひらさせて歩いた。


「やっぱり落ち着かないな」


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