1、おっさん目覚める
43才の元おっさん、現魔法少女、俺。
とりあえず、自分の名前を決めることにした。
「小野 千草なんて良いんじゃないか?」
思いつきだったが、履歴書に書いてみると悪くなかった。
履歴書を書こうとしたのは、バイトを探そうと思ったからだ。
幸い、家の中には10万円があった。
俺はありがたく、それを使って履歴書を近所のスーパーで買ってきた。
そのとき、アパートの近くにあるコンビニが、従業員を募集していた。
俺はダメ元で申し込みをすることにした。
そこで、履歴書を書くことになったんだけど、これが困った。
なにせ、元43才のおっさんだ。
学校なんてかけない。
しかたなく、昨年高校卒業とだけ書いて、現在求職中とした。
そんな心許ない履歴書を手に、ジーンズにTシャツでコンビニに行った。
すぐに面接があり、驚いたことに採用だとその場で言われた。
「小野さん、よろしく」
「はい、店長」
俺は浮かれていた。
こんなにすぐに仕事が決まるなんて、若いって凄い。
一方で魔法少女になったのだから、人助けをしてみたいという欲求に駆られた。
「困ってる人はいないかな?」
そう呟きながら、街を歩いているとナンパされた。
ナンパしてきたのは20代くらいの男性二人組だ。
「お嬢さん、一人? よかったら俺たちと遊ばない?」
「お断りします」
「そんなこと言わないでさ」
一人が腕を引っ張った。
俺がそれを振り払うと、もう一人が声を荒げた。
「大人しくしろよ!」
俺は言い返した。
「嫌だ!!」
そう言った瞬間、二人が吹っ飛んだ。
魔法を使ってしまったらしい。
「え!?」
転がった二人組は、不思議そうに辺りを見回した。
「おまわりさん!」
俺が大声で叫ぶと、二人組は逃げていった。
俺は落ち着くと、一人呟いた。
「今のが、魔法!?」