表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

凸でこぼこなコンビ凹 1

投稿頻度は非常に遅いです。ゆっくり読んで頂けると幸いです。

 町を出て半日(はんにち)しか経っていないのに2回も戦うことになったのはまったくの予想外(よそうがい)だった。

 (もっと)も、今俺の目の前で頭を下げている珍獣(しゃべるニワトリ)に出会ってから怒涛(どとう)の連戦である。

 

 「ヤマト、王都(おうと)までオイラと一緒に行って欲しいキヨ!」


 名前はスワン。どこからどう見ても美味しそうなチキンにしか見えないが、人の言葉を(しゃべ)っている。

 髭男が襲撃(しゅうげき)した(おり)には、『本当に喋るニワトリがいやがった!』なんて

 誰だか知らないがスワンの素性(すじょう)を知るものが(ぞく)(ねら)わせたと丸わかりな事を言っていたし、

 今後も何者かに(おそ)われると見て間違いないだろうな…


 「ヤマト!聞いてるキヨか!オイラ、ヤマトのシブい戦術(せんじゅつ)一目惚(ひとめぼ)れしたんだキヨ!!」


 スワンは目をキラキラさせながら、さっきの秒の救出撃(きゅうしゅつげき)を思い返すような表情をしているようだ。

 スワンが(ひも)で縛られていた状況を打開するために、俺は3つのアイテムをほぼ同時に投げつけたに過ぎない。

 一つは煙幕(えんまく)…に見せかけた可燃性(かねんせい)粉末丸(ふんまつがん)対象(たいしょう)に当たると固形だった粉末丸が粉末に変わる際に黒色の煙を書き散らす。

 黒色の煙が晴れた後も目には見えない可燃性の粉末はしばらく空気中を(ただよ)っているのだ。

 同時にスワンの(はら)に張り付くように、クナイに施された回収印と同じ(ふだ)投擲(とうてき)。スワンに接触(せっしょく)した瞬間(しゅんかん)に起動させる。

 一瞬だけずらしてクナイで(なわ)射抜(いぬ)き、縄とクナイの摩擦(まさつ)(まわ)りの粉末が発火し、盛大に爆発したという訳だ。


 (ほのお)からの脱出時(だっしゅつじ)火傷(やけど)はしていないが、毛の表面(ひょうめん)だけ()げてしまったようで身体(からだ)全体がチリチリしている。

 …本人は全く気にしていないようだが。


 「聞いてる聞いてる、それにしてもただの煙幕じゃないことによく気付いたな。」


 「煙から風と炎の魔力が見て分かったキヨ、オイラは魔力にとても敏感(びんかん)なんだキヨよ。」


 魔力とは魔法の発動に必要なエネルギーである。

 体系的には自然の中にある(マナ)を普通そのまま行使(こうし)することはできない。

 人間はマナを魔力に変換して体内の器官に(たくわ)えて、魔法の行使に利用する。

 魔法を行使することは、『(ねん)じる』に近いので、()()めて魔力を感じなが行われることではないらしい。

 魔力の感受性(かんじゅせい)の強い一部の人間はたしかにいて、魔法を発動させる兆候(ちょうこう)(さき)んじて()ることができると聞いたことはあるが、発動前の魔法の性質(せいしつ)《火、水、風、土、etc…》まで正確に識るのは敏感という表現(ひょうげん)でいいのだろうか…


 「王都に行くんなら一緒に行こうか!」


 スワンの素性は全くの謎。だけどやな奴じゃなさそう。

 せっかく出会ったのに知らないところで何者かにスワンが(つか)まる姿(すがた)を想像すると少し(かな)しいので、あまり深く考えずにヤマトはスワンの同行を(ゆる)す。


 「やった!これからよろしくキヨ!ヤマト!」

 「よろしくなー。しかし、喋るニワトリなんて聞いたことないんだけど、目立ちまくってしょうがないぞ。

 (あらた)めて不思議(ふしぎ)生物(せいぶつ)だね君は。」

 「失礼キヨ!今まで人に見られることなんてなかったキヨ。

 それじゃ……これでどうキヨ?」

 

 「はぁ?!」


 スワンの身体が(あわ)く光ったかと思えば、小さな子どもがスワンがいた場所(ばしょ)に立っている。

 基礎学校(きそがっこう)入学(にゅうがく)したばかりの5,6歳くらいの男の子で、白い肌に髪全体が赤色でニワトリのトサカのように頭の頂点(ちょうてん)でそこだけ赤紫色(あかむらさきいろ)の髪の毛が逆立(さかだ)っている。


 「住処(すみか)を出る時はいつも変身(へんしん)してるキヨ。

 さっきはリトルフェンリルに(おそ)われて変身するのが頭から()んでたキヨ。」

 「………はあぁぁ…」


 次々(つぎつぎ)出てくる未知(みち)事柄(ことがら)にヤマトは大きなため(いき)をついて遠い目になる。

 喋るニワトリ、魔法が発動する前に正体を見切(みき)魔力感知(まりょくかんち)、変身、必ず語尾(ごび)に付くキヨ……

 理解(りかい)()える不思議生物にヤマトは結局(けっきょく)、、


 「…世界は広いってことだな!」

 分からないことはスルーすることにしたのだった。




…………………………………………………………………………………………………





 それから2人は王都への道に足を進め2日()った夕暮れ時、ようやく王都ブリティンヘルム王国直轄地(おうこくちょっかつち)とヤマトの育った町のあるガノム地方との中継地点にある宿場町にたどり着いた。


 「ここは王国直轄地の最も西にある『マンサイカ』って町だよ。

 …殺伐(さつばつ)とした雰囲気(ふんいき)だけど、どうしたんだろ?」

 「(おく)広場(ひろば)みたいなところに人がいっぱい集まってるキヨ。なんか叫んでるみたいキヨ。」

 「行ってみよう」


 広場について見ると、食品を乗せた荷車の周りに人々が押し寄せて、商人に向かって叫んでいる。

 「子どもがお(なか)を空かせてるの。こんな少なくて足りないわ。。」

 「こんな少量(しょうりょう)の肉で小銀貨(しょうぎんか)10枚だと?ふざけるな!」

 「人の足下見て商売してんしゃねえぞ、悪徳業者(あくとくぎょうしゃ)が!!」

 「文句(もんく)があるならお(かい)()(いただ)かなくて結構(けっこう)でございやすよっ。

 町外(まちはず)れにはリトルフェンリルもた〜くさんいますからご自由に狩っておくんなさい。

 おっと、()をつけないと魔物にお肉にされちゃいますけれども、ふっふっふ。」


 ヤマトは近くにいた村人(むらびと)の一人に声をかける

 「こんにちは、(たび)(もの)ですが、なんの(さわ)ぎなんですか?」

 「兄ちゃんたち、()(わる)い時に来たもんだね。2週間前(しゅうかんまえ)くらいから王都とこの町を結ぶ一番大きな街道(かいどう)盗賊団(とうぞくだん)(ふさ)いじまっててな、商人たちが町に入って来れないんだよ。」

 「盗賊団ですか、何で広場の商人は町まで来れたんですか?」

 「なんでも、傭兵(ようへい)(やと)って魔物が出るような道も(とお)りつつ大回りして()たんだとさ」

 命懸(いのちが)けで食料(しょくりょう)(とど)けてくれているようなんだが、態度(たいど)善人(ぜんにん)には見えないんだよなあ」

 「そうですか。王都の騎士(きし)()()まりに動かないんですね。」

 「王都(ない)水面下(すいめんか)()れてるから、王都(がい)問題(もんだい)後回(あとまわ)状態(じょうたい)なのさ。

 この町に(よう)がないんなら、早めに町を出た方がいいと思うぜ。

 王都に行くんだったら、傭兵()みの相乗(あいの)馬車(ばしゃ)が出ててな、(あさ)そこの市庁舎(しちょうしゃ)から()れるぜ。」

 「そうなんですか。あなたは傭兵付けなくても大丈夫(だいじょうぶ)なんじゃないですか。」

 「兄ちゃん(するど)いな。俺は市庁舎に依頼受(いらいう)けてる傭兵のリブロだ。

 明日朝出るなら俺がいるから、よろしくな。」

 「傭兵の方でしたか、ちなみに行商人と道ですれ違うことってよくあります?」

 「どうだったかな、王都につながってる道は一つじゃないからな。そういやないかもな。」

  「そうですか。色々ありがとうございます。」

 「おうよ、じゃあな」


 リブロと別れ、(みち)(はし)で2人はマンサイカに来る前に調達(ちょうたつ)している調理済(ちょうりず)みの串焼(くしや)きを(ふくろ)から取り出して食べながら話す。


 「ヤマト、明日は馬車に乗るキヨか?」

 「それなんだがな…」


 ヤマトは視線を感じてその方向を向くと、(あか)(ぼう)をおんぶしたスワン(人間バージョン)と同じくらいの年頃(としごろ)の女の子がこちらを見ていた。

 女の子のもとへ行き(おどろ)かさないように(やさ)しく語りかける。

 

 「お母ちゃんとお父ちゃんはいないのか?」

 「二人ともずっと(はたら)いているの。

 町の(そと)(あぶな)ないから、頑張(がんば)ってお金(かせ)いで、私たちを守ってくれているの。」

 「そうか。」

 

 ヤマトは食料の入った袋を女の子に(にぎ)らせて、スワンのもとに戻ってくる。


 「…スワン、俺たちは()()ぐ王都に行こうぜ。」

 「ヤマトはお人好(ひとよ)しキヨね。オイラはヤマトと王都に行くキヨ!」


 ヤマトはすかさずスワンの解釈(かいしゃく)訂正(ていせい)する。


 「そんなんじゃないさ…。節約(せつやく)だ。」



 持っていた一本の焼鳥(やきとり)を食べながら



最後まで読んでくださり、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ