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旅立ち

はじめまして。初めて小説を書きました。非常に投稿のペースは遅いです。


振り返ると、もう生まれ育った町の教会もすっかり見えなくなったことに、感傷的な気分になる。

 町の人たちから蔑まれ、見下される度に「こんなとこ出てってやる!」と思っていたんだが、実際に出てみると正直寂しいと思ってしまう。


 出発する直前までいつものように口うるさいシンセリタのせいだ。



………………………………………………………




 「ヤマト、日が暮れる前に野営の準備を始めるのよ、

 食べ物はよく確かめて食べなさい、

 親切そうな人がみんな親切とは限らないんだからね。それから、、」


 薄紫色の凛とした瞳に、肩のところで外跳ねしたブロンドの髪を風になびかせながら、滔々(とうとう)と言い募る幼馴染を止めなければ いつまでも言い続けると察して俺は強引に遮る。


 「もう何回同じことを聞けばいいんだよ」


 「ヤマトは何も分かってないじゃない!

 だって魔法が使えないのよ、なのに王都の魔法騎士官学校まほうきしかんがっこうに入るなんて無茶なことを言ってるんだもの。」


 「そんなのやってみないと分からないんだって言ってんじゃんか、魔法力が弱くても通っている奴だっているだろ?」


 「王国の官僚候補かんりょうこうほ頭脳明晰ずのうめいせきの人はね。」


 「うぐっ、この話も入学選抜を受けるのは自由だからって納得してただろう?」


 「無事に帰って来れるように注意してあげてるんじゃない。」


 「余計なお節介だ!」


 

 太古の昔から人々は魔力をもつ獣《魔獣》から身を守ったり、生活の中で魔法を役立てていた。

 人間には生まれつき魔力を生成する器官があり、体内の魔力を使って魔法を行使できる。

 魔法は人によって多種多様だが、『火・水・風・土』の4系統が起源であり、そこから派生していると定義されている。


 目に見えないけれど、自然の中には魔 《マナ》が宿っており、マナが多い場所には精霊がいるんだとか。

 まあ、精霊の存在は謎だらけなんだけど。


 「はいはい、それで魔法が使えないお馬鹿さんはどうやってエリート学校に入るのかな?」


 「ふっふっふ、俺が何年も鍛えてきた『この技術』があれば誰だって俺の敵ではないのだよ」

 

 「………」


 シンセリタが無言でジトーとした眼差しを向けてくる。(たしかに俺の技は初見殺しには有効な手であるが…)


 セントラル・ブリティンヘルム魔法騎士官学校 《セントブリティン》

 王国「ブリティンヘルム」を支えていく魔法騎士・魔法研究者・官僚の養成機関である。

 セントブリティンの特徴は王国随一の実践演習施設、各分野の研究第一人者による授業及び広大な図書館の他に独自のカリキュラムにある。

 

 一般公募の受験資格は12歳から18歳。在学期間は最長で『入学してから5年』だ。

 なぜ最長かというと、学外の団体組織からのスカウトを勝ち取ることが学生の目的であり卒業を意味するからだ。


 セントブリティンでは学校行事として剣闘大会や魔法技能コンテスト、論文コンペティション等が行われ、騎士団や一流魔法具メーカーのスカウトマン、はたまた国王自ら視察にいらっしゃることもあるらしい。

 つまり、セントブリティンに入学を許される者には国王内で最も充実した環境で研鑽けんさんができ、卒業後は名声を博する舞台に最短で駆け上がる機会が与えられるのである。


 俺もシンセリタも12歳まで町の基礎学校に通っていた。

 午前中だけだが読み書き計算と基本的な魔力制御を一斉に学ぶ。

 俺達の学校は生徒数が少ないから年齢関係なく一つの教室でやっていたけど、学年別に分かれているのが普通らしい。

 大多数の子供達は基礎学校を卒業すると工房や町の自警団、自営業など親戚のツテを辿たどって見習いになり、やがて一人前の働き手になっていくのだ。


 「期待しないで待ってるわ。私が働いているバーのオーナーさんにはヤマトも働かせてもらえるように頼んでおくから」


 「お節介はいいから、もう行くぞ」


 「王都に着いたら絶対に手紙を書くのよ!いい?ぜーったいだからね!」


 「おう!行ってくるわ」




……………………………………………………………




 悲しいことにあまり期待されていないが、湿っぽい別れにならなくてよかった。


 (速攻落ちてむざむざ帰ったら大笑いされるな。俺、絶対ビックになってお前を…)


 まだ声に出さない想いを胸に前を向いたその時、


 「クワァぁぁぁああーーー」


 真正面やや上から俺めがけて小さな影が勢いよく迫ってくる。


 条件反射で体勢を低くし、上半身をひねって軽やかにかわす。


 通り過ぎた物体は3メートル後ろの木の幹に突き刺さり、くちばしを木から抜こうと踏ん張って、モフモフのお尻を突き出していた。


 (手伝ってあげないと可哀想だな)


 「〜んん、ん〜」( ポン)


 コミカルな音と共に救出成功


 「ふー今まじで息できなかった〜。ありがときよにいちゃん!」


 「?! ニワトリがしゃべった??!!」


 タッタッタッ


 「まあ、驚くのは無理ないきよが、今はちょっとやばい状況だから後まわしにするきよ」


 ガサガサ


「きよ!?」


 バサッッ


 「それはただの口癖きよ!後ろ!後ろ!!」


 振り返ると、ギラギラした牙を見せた狼型の魔獣、リトルフェンリルが3匹こちらに襲い掛からんとしているのだった。



最後まで読んでくだってありがとうございます。

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