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スキルショップの観測者(オブザーバー)  作者: この物語はフィクションです
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第7話 『異能力対策機動隊』と『異世界からの来訪者』

 『異能力対策機動隊』通称『ノウタイ』は三年前に警察の内部に設置された部隊だ。

 しかし様々な事情が重なった事によって警察とは分離し、今では能力を持った人間しか入れない一つの組織として活動している。

 なんでも独立した今の『ノウタイ』は実用的な能力さえ持っていれば中学生ですら入れるという噂だ。


 彼らのやり方はシンプルで、予知系の能力で殺人が起こる場所、時間を特定し、戦闘系能力で殺人を起こそうとしている能力者を制圧するというもの。

 人手不足なのか予知が不安定なのか知らないが今回は間に合ってなかったけどな。


 見たところゴリラ男の方は《百発百中のスキル》と《バリアを張るスキル》を持った戦闘タイプ。少年の方は《能力を無効化するスキル》と《能力を解除するスキル》という完全な能力者メタタイプ。

 更にどちらとも服の中に、能力を付与された道具をいくつか持っているようだ。



「みう。お前は十分間だけ店に居ろ。もしも戦闘になったら守りづらいからな」


「わかりました。絶対に殺しちゃ駄目ですからね」



 そう言いながら、みうは買ってきたケバブの片方を渡してくる。

 左手は小指がなく、右手はケバブで両手がふさがったが大した問題ではない。



「おう。頑張ってみるわ」


「何をごちゃごちゃ話している!!」



 俺は声の大きいゴリラを無視してみうを店に瞬間移動させ、呑気にケバブにかぶりつく。


 空間系スキルは一般人からすれば超レア能力故に二人とも驚いているようだ。その上少年の方は《能力を無効化するスキル》を使っていたつもりだった様でリアクションがゴリラに比べて大きい。

 その無効化が出来ないという情報がゴリラに渡る前に行動を開始する。



「さてと、まずは確認だけど話し合いは出来ないって事で良いのか?」



 適当にチョイスした《威圧感を出すスキル》、《言葉に重みを持たせるスキル》、《立場をわからせるスキル》、《殺気を明確に伝えるスキル》、《背筋を凍らせるスキル》、《精神的に追い詰めるスキル》《後悔を募らせるスキル》、《恐怖を与えるスキル》、《恐怖を倍増させるスキル》、《能力を使ったと悟らせないスキル》を使い相手を脅迫する。

 正直言えば他にいくらでも解決する方法はあるのだが、この話を聞かないゴリラを敵対しない程度にいじめたくなった。



「なっ……いや……その……」

 ゴリラ男は猛獣に狙われているかの様に足がすくみ、顔を真っ青にしている。


 隣の背の低い少年はあまりの恐怖に気を失ってしまい、バタっと倒れてしまう。



「そんなに恐がらなくていいんだぜ。話さえ聞いてくれるなら俺は何もしないからさ」


「貴様……!! どんな能力を使ったんだ!! 」


「能力なんて使ってないよ。目だって光ってなかったろ。多分お前らが本能的に恐がってるだけさ」

──まあ嘘だけど。



 《能力を使ったと悟らせないスキル》という超限定的な効果しか持たない能力もたまには役に立つものだ。まあスキルショップで他に能力を持ってない人に対して売ったときはマジギレされたけどな。



「くっ……」


「とりあえず俺の話を聞いてくれ。その後に判断すればいいだろ?」


「……わかった。話してみろ」



 俺は残ったケバブを食べきって、ケバブを包んでいた紙を丸めてから話を始める。



「俺はたまたま遊園地に遊びに来て、この倒れてる男が怪しい行動をしていたからここまでついてきたんだ。そしたら観覧車に対して念力系の能力を発動しようとしてたから慌てて止めた訳よ。ついでに俺の能力は《入れ替えのスキル》で観覧車にかかる力を全てこいつのスマホと入れ替えたからここに粉々に壊れたスマホが置いてあるわけ。ここまでで質問は?」


「お前の能力は《入れ替えのスキル》だけなのか?」


「ああ、その通りだ。話を元に戻すと、そのあとにこの男との戦闘が始まったんだ。結果的に焦って入れ替えを失敗して俺の左手の小指がこうなってしまったけど痛覚も相手と入れ替えられるから俺の小指がこんな状態でも痛くないって訳よ。代わりに倒れてる男が俺の小指のダメージを受けたからこんなに汗びっしょりでぶっ倒れてるんだよね。あっ、そのあとに《入れ替えのスキル》を使って《念力を使えるスキル》の所有者を男から俺に入れ替えたから今はスキルを二つ持ってたわ。最初にその通りとか言ってすまん」

──まあほとんど嘘だけど。



「なるほど……いや待て。さっき、女を瞬間移動でどこかに飛ばしただろう。つまり他にも能力を持っているんじゃないか?」


「家にあるホコリと入れ替えただけだよ。《入れ替えのスキル》はどんなものでも入れ替えられる最強の能力だからな」



 これも嘘。掃除してきたからあの部屋にはホコリ一つ存在しない。さらに付け加えると所有能力の中ではトップ10くらいには強いと思うが、最強の能力って訳ではない。実際今の所有能力で一番強いのは《消滅を司る能力》だろうしな。しかも全体で見た場合、別世界に居る友達が使用する能力の方が圧倒的に強い。俺の所有能力では《万物を魔力に魔力を万物に変換する能力》や《対象を司る能力》の様な特別な力には遠く及ばない。



「ふむ……。嘘発見器に反応はないか……」



 こいつ手持ちに《嘘を見抜くスキル》が付与された道具があるのか。まあ常時《消滅を司る能力》を発動しているお陰で、そういうスキルの効果は全て消滅してるけどな。



「すまなかった。それではその男を連れていこう」


「話がわかってくれて助かる」



 ゴリラ男は銃を下ろし、念力男にゆっくりと近づく。


──いや待て。何かがおかしい。……そうだ、嘘を見抜く事が可能であるならば最初の時点で俺と敵対する理由がわからない。そもそも最初の俺は嘘をついてすらいないのだから。



 思考の途中で一発の銃声が鳴り響く。

 誰かが放った銃弾は俺の胸の辺りで消滅する。



「ふむ。不意打ちでも効かないか」



 ゴリラ男が呟く。どうやら真下に向かって引き金を引いて《百発百中のスキル》で確実に俺の胸を狙った様だ。



「お前、なんのつもりだよ。本当に『ノウタイ』なのか?」



ゴリラ男の体は変形して、また違うゴリラの様な男に変わる。



「……私はゼータ。お前を殺して神の力を奪う者だ」


「神の力目当てって別世界の人間かよ」



 俺はノーモーションで即座に《金縛りのスキル》を使用して相手を動けなくする。しかしゼータと名乗る男は、少年が持っていた物と同じ《能力を解除するスキル》を使用して金縛りを解除する。


 伏見と同じ偽装系の能力も所有していたのは予想外だ。再度能力の確認をするがゼータの所有能力は数が多過ぎて読みきれない。

 一応コピー系の能力を持っている事は間違いないが俺の《消滅を司る能力》はコピーされることはないし、そもそも相手の能力の効果も自動で消滅する事ができるので俺の能力が使われる心配だけはなさそうだ。


 能力を解除したゼータは余裕そうな表情で俺を見下す。


「ふむ。観測者(オブザーバー)と言えどもその程度か」


「ははは。頭きたわ」



 《能力を奪うスキル》を《消滅を司る能力》でカバーしながら使用する。このコンボを使えばどんな能力で防ごうとしても基本的には奪える。

 正直この世界に居る間は本気を出す日が来ないと思っていたが長い人生何が起こるかわからないものだ。


 これで相手の能力は全て俺の物に──


 突然の目眩に膝をついてしまう。何が起きたか理解が追い付かないが、直ぐに能力を中断してから原因を探す。


 どうやら《転生者殺しの加護》という見たことのない能力が俺自身と拒否反応を起こした様だ。俺は能力自体を消滅させようと試みたが、俺と同等の力を持った神が作り出した能力らしくそれも不可能。

 残された手段は能力を相手に戻す他ない。

 俺は諦めて能力を相手に戻してから自身の体をすべて修復する。左手の小指も含めて。



「……その能力、死神の関係者か?」


「ほう。一番弱い観測者でも分かるのか」


「一応死神って俺よりも立場は下のはずなんだが、反逆でもする気なのか?」


「違うな。死神とは関係なく俺自身が観測者に成るためにお前を殺しに来たのだ。実力は把握できた。今回は帰らせてもらう」


「半分以上能力を奪われてるくせにやけに強気だな」


「特に問題はない。そのくらいは予想通りだ。むしろ予想よりは弱そうで助かったよ。また会おう」



 そう言うとゼータは自身の頭に向かって引き金を引く。頭が吹き飛ぶと同時に体がまた変形して最初のゴリラに戻る。

 この様子だとゼータは寄生系の能力持っている上に本体は最初から別世界に居たようだ。



「やべえな……」



 異世界からの来訪者もヤバい。だがそれと同じくらい『ノウタイ』と敵対しそうな現状もヤバい。



「とりあえずこいつら全員の記憶を消しておくか」



 俺は倒れた念力男、少年、死んだゴリラ男から記憶を消し去り、俺とみうの居た証拠を隠滅してからこの場をあとにした。

数ある作品からこの作品を見てくださりありがとうございます!




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