第6話 《痛覚を操るスキル》
「な、なんだよこれえええ!?」
男は発狂した様に粉々になったスマホを地面に叩きつける。そして辺りにあるものを念力で壊そうとするが俺の《入れ替えのスキル》によって全ての衝撃がスマホに入れ替わり更に悲惨なことになっていく。
「駄目だよ。人のモノを勝手に壊そうとしちゃ。あっ、君のスマホを壊したのは俺だけどね」
煽る。これだけでもう大体の準備は整った。
「なんだよてめええええ!! ふざけるなああああああ!!」
案の定相手は俺に向かって念力を発動させる。
「はいはい。《入れ替えのスキル》、《痛覚を操るスキル》」
入れ替えで相手の能力先を俺の左手の小指にしてから自らの痛覚を遮断する。それによって小指はぐちゃぐちゃになり、血が流れ出てくるが特に問題はない。どうせ元に戻せるから。
……ここからは正当防衛の時間だ。
「なんなんだよ……!! お前……!!」
「なんだろうねー。さて、痛くなかったけど今度はこっちの番。《不死の空間を作るスキル》、《痛覚を操るスキル》」
俺はぐちゃぐちゃになった左手の小指を相手に見せつけながら能力を発動する。
《痛覚を操るスキル》は自分だけでなく相手の痛覚も操る事が可能で、車に轢かれるよりも、銃で撃たれるよりも、ナイフで刺されるよりも、どんな拷問を受けるよりも、痛いと感じさせる事が出来る強力な能力だ。
これを使う場合、相手は痛さでショック死してしまう可能性がある。そんな時の為に《不死の空間を作るスキル》を使い相手が死なない様にする。こうする事で人がショック死してしまう程の痛みをやろうと思えば永遠に与え続ける事が出来るのだ。
まあ、こんな小物相手にここまでする必要はないんだけどな。
「お゛ああぁあああああぁっ!!!」
男は泣き叫びながら、のたうち回っている。どんなに叫ぼうとも、痛覚を操っている以上痛みが軽減されることはない。
こいつには人が感じる痛みの限界を長い間味わせ続けよう。そして廃人にしてから能力を奪って自由にしてあげよう。
これが、俺が居なければ殺人を起こしていた者への罰だ。
──そうだ。こういう奴が存在しなければ、俺の元居た世界だって……。
目の前の男をいたぶりながら心の中にしまっていた感情が溢れてくる。俺が人間だった頃の世界で大事な人を奪った奴と目の前に居るこいつは本質的には変わらない。だから殺意が抑えきれない。
「……やっぱ殺すか」
ボソッと呟いたタイミングで階段の方からみうの声が聞こえてくる。
「廻神さーん。チュロス売り切れてました。うわぁ、何したらこうなるんですか……」
チュロスの代わりにケバブを両手に持って駆け寄ってきたみうは、俺の左手の小指と男を見てドン引きしている。
まあ俺の小指は血が滴りながら骨が剥き出しだし、目の前に居る男の周りは汗や涙等の液体だらけ。しかも発狂した様に頭を地面に叩きつけているのだから無理もない。
男は痛みに耐えきれずに自殺をしたいのだろうけど、今この場は俺が作り出した不死の空間。例え首が千切れても死ぬことはない。
「……久々にやり過ぎたな」
「流石にもう能力解除してあげてもいいんじゃないですか。正直見てるこっちが気分悪くなりますし」
「そうだな。念のため能力は俺が没収しておこう。あと不死の空間は少しの間継続しておくか」
「この人、廻神さんが手を下す必要ありましたかね?」
「まあ俺居なくても『ノウタイ』の奴等が捕まえてただろうな。ただ今回は人手が足りねえのか俺が居なかったら百人くらい死人が出てたよ」
その言葉を聞いた途端にみうがニコニコし始める。
「ほお。廻神さんが人を救う為に行動するなんて本当に珍しいですね」
「勘違いするな。ストレスを犯人にぶつけたらたまたま人を救っただけだっての」
「まあそういうことにしておきますよ」
みうみたいな人間が近くに居るだけで本当に心が落ち着く。もう少し来るのが遅ければこの男を殺してしまい『ノウタイ』の奴等と敵対する事になっていたかもしれない。
俺は男の所有している《念力を使えるスキル》を奪ってから《痛覚を操るスキル》を打ち消す。
どうやら男は痛みが消えた事によって極限状態から解放されて気絶した様だ。
「あとは『ノウタイ』の奴等にこいつを引き渡せば全て丸く収まる」
「あっ足音聞こえますよ」
やって来たのはゴリラみたいな体格の男と背の低い少年。私服の様だが、どちらも胸元に『異能力対策機動隊』と刻まれたバッチをつけている。
「思ったより遅かったな。早くこいつを拘束してくれ」
「動くな!! お前達がここを破壊しようとした能力者か!!」
ゴリラ男が大声で銃を構えながら威嚇する。
──お前達?
「待て待て。そこでぶっ倒れてる奴が観覧車を破壊しようとしてたんだ。俺はむしろ遊園地を救──」
「嘘をつくなぁ!! 正義の為にお前らを裁く!!」
やべえな。今の『ノウタイ』ってこんな話聞かねえ奴でもなれるのか。よっぽど人手不足なんだろうな。
──さて、どうするかな……。
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