第一章[始まりの音色(トーン)]#4
放課後、担任に呼び出され長々と説教をされた私はやっとこさ開放された。
授業をサボっただけでまさかあそこまで延々と話を聞かされるとは思わなかった。
普通なら呼び出しなんてないはずだが、よくよく考えてみると午後の授業全放棄はさすがにアウト。
浮かぶインスピレーションを逃がすまいと必死に書いて弾いてを繰り返してたから
正直、時間の感覚も周りも気にしてる余裕なんてなかったから放棄してたこと自体記憶にない。
「はぁ…疲れた…。」
これなら授業を休み無しで受けてる方がまだ軽い。
現時刻17時を過ぎたところ---。
今日はffの予約も入れてないしこのまま家に帰るだけだ。
少し散歩して帰ろう。
「〜〜♪」
さっきまで作っていた曲を鼻歌で歌いながら私は街へ向かった――。
少し歩いただけで辺りは薄暗くなり街灯が付き始める。
いつもは屋上とffでギターを弾く毎日でこうして街の人の動きや景色を見ながら歩くのは久々かもしれない。
「こういう息抜きも悪くない」
時間的にも学生の下校が重なっているのか、辺りは学生のグループやカップルで賑わっていた。
もちろんその中にもギターやベースのケースを持った子達がちらほらいた。
周りの女子中学生や女子高生グループを見て私は少し羨ましく思った。
「みんな楽しそうだな…。」
昔から『近寄りがたい』印象が強く『友達』という存在がいなかった。
最初は全然気にも留めてなかった。音楽さえあれば私は一人でも大丈夫って思ってた。
でも、中学高校と上がっていくうちにそれが苦痛になった。
『直したい』そう思って声を掛けようとしても周りが離れていく。
もっと早くに気付くべきだったと後悔もしてる。
けど――。
(「彼も貴女の音色に惹かれる。」)
まだ諦めるには早いかもしれない。
私にしかできないやり方でやり直せる。
私の音色をみんなに届けたい――。
「おい、あんた」
そんな事を考えているとふいに後ろから声をかけられた。