第一章[始まりの音色(トーン)]#3
バンド結成してから数日が経ち、新しい楽曲が欲しいなと思い私はいつにも増して練習と曲作りに没頭していた。授業中だったり昼休みだったり放課後だったり――。
けれど――。
「ん~…。」
ダメだ…完全にスランプ状態…。
1つもイメージが湧かない…。
教室は休み時間ということもあり周りは騒がしい。
これじゃ集中できないな…。
「移動しよ…。」
周りの騒がしさに限界を迎えた私が向かった先は、屋上――。
私のお気に入りの場所であり練習場でもある。
「んー!やっぱここが一番集中出来るな」
大きく背伸びをし、いつもの場所に座った。
教室だと1つもイメージが湧かなかったけどココなら書ける気がしてきた。
自分が作った歌を鼻歌で歌いながら私は曲作りを始めた。
すると一人のはずの屋上で私以外の声がした―。
「やっぱり響希の音色は綺麗でいい音」
「へ?」
突如、知らない声が聞こえ驚いてつい間抜けな声が出てしまった。
そこに立っていたのは確か同じクラスの――。
「音葉ちゃんだっけ?」
特に目立つような子でもないけど何度か目が合うというか視線を感じることが多かったから覚えてる。
確かffでも見かけたような――。
「覚えててくれたんだ。」
「まぁ、結構印象に残ること多かったからね」
あれだけ何度も視線を感じれば嫌でも覚える。
そういえば―。
「その、音色っていうのは何のことを意味してるの?」
「音色は自分自身が持つ自分だけの音。響希には響希の音色がある。」
私の音色か―。
「彼も貴女の音色に惹かれて貴女の元に来た。」
「それって、湊君のこと?」
彼女は静かに頷きそのまま立ち去って行った。
私だけの音―。
「浮かんだかもしれない」
さっきまで止まっていた手は不思議とするする動いていた。
予鈴の音にも気づかず、次から次へと浮かぶ歌詞を書いていくのだった――。
放課後、校内アナウンスで呼び出されたのは言うまでもない。