第一章[始まりの音色(トーン)]#2
焔響希を知ったのは数ヶ月前の事。
その日もいつものようにギターの練習をする為、ライブハウスに向かった。
いつも使う個室に向かう途中で違和感を感じた。
普段使われていない個室でギターの音色が響いていた。
そっと扉をあけて中を見ると---そこには一人の女性がギターを弾きながら歌っていた。
それが彼女との出会いだった----。
あの人の『音色』と『歌声』はとても綺麗だった。
人を惹きつける何か。魅了させる何かがあると確信した。
彼女となら上を目指せる。そう思った。
それからライブハウスの奴らから話を聞き、彼女が『ff』の常連であることを知った。
けれどあれ以来彼女と会うことはなく————
「もううんざりだ!!お前となんか二度と組まねぇ!!!!」
「勝手にしろ」
これで何度目だろうか。
相も変わらず一緒にやる連中はどいつもこいつも中途半端なやつしかいない。
「はぁ…またかよ…。これで何度目だ?メンバーに逃げられるのは。」
「知らねぇよ。」
「大体お前さんのレベルに合わせるのが無理な話だ。」
「俺があいつらに合わせろって言うのかよ?冗談きついぜマスター」
そもそもレベルを下げて練習なんざただの遊びじゃねぇか。
そんなことしてたらいつまで経っても上達なんかできねぇ。
それに————
「なぁ、マスター」
「なんだ?」
「焔響希って人知ってるか?」
「あぁ知ってるぜ。なにせウチの常連だしな。あいつがどうかしたか?」
やっぱり常連なのか。
なのに会えないとか神出鬼没なのか?
「あの人バンドは組んでるのか?」
「組んではいないが…。」
マスターの言い方に少し引っ掛かりがあったが今は触れないでおこう。
「あの人とならやれる気がする」
マスターは一瞬心配そうにこちらを見たが何事もなかったかのように話をつづけた。
「まぁお前なら大丈夫かもな」
「は?どういうことだよ?」
流石に言い方が気になって聞いてみたがマスターは答えてはくれなかった。
けどまぁそれも本人に会えば分かることだろう。
俺は絶対にあの人とバンドをやる。
こうして俺の猛アタックが始まったのだった-----。
結果、あっさり承諾をもらいバンド結成することになった。
~帰り道~
あの時のマスターの答えが見つかっていない。
果たして本当に何か隠していたのか?
「まさか嘘…。」
あのハゲマスター…。覚えとけよ