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4話 【 好きな子の魔王城 】

お久しぶりですッ!

またこの作品を書き始めたのでよろしくお願い致します!


 『オイッ! そこのガキッ!!』


 怒鳴り声をあげながら焦った様子で誰かが近づいてくる。

 

 『どうかされましたか? 王子?』


 怒鳴られた少年は焦る様子も怯える様子もなく、ただ息を切らしながら近づいてきた王子と呼ばれる男性を見る。


 『どうかされましたかじゃねぇ!! テメェ何勝手な事してやがるッ!!』

 『勝手な事? なんのことですか?』

 『とぼけんじゃねぇ!! テメェ俺に断りもなく()()()()()()()()()()しやがったなッ!!』


 王子は少年の胸倉を掴む。

 しかし、それでも少年は怯む様子もなく普通に会話を続けた。


 『今回のダンジョンには、あの魔王が率いる四天王の一角が潜んでいました。』

 『それがどうしたッ!』


 少年の説明に王子は聞く耳を持たず怒鳴り上げる。


 『あれはこの俺様が攻略するはずだったダンジョンだ。 俺様が英雄として下々の民共に崇めさせる絶好の好機(チャンス)だったんだッ!! それをたまたま俺様の国に寄り道しただけのガキが当たり前のように攻略してんじゃねぇよッ!!』


 王子の怒鳴り声に衛兵やメイド達が何事かと集まってきた。


 『申し訳ありません王子。 先を急ぎますのでこれで失礼致します。』

 『ハァ?! まだ話はおわって―――ッ!!』


 少年の目と合わせた王子は先ほどまでの威勢が消え、怯えたような様子で少年を見ながら後ずさる。

 そんな王子の様子に気にもしない少年は小さく頭を会釈すると建物の出入り口付近で待っている数名の仲間達の元へ向かい、そのまま姿を消した。

 少年の姿が見えなくなった王子は腹の底からグツグツと煮える怒りが混みあがってきた。


 『この俺様をッ~~ば、バカにしやがってッ!!』


 整った顔は怒りにより真っ赤になり瞳は血走っている。


 『必ず後悔させてやるッ!! 王子であるこの俺様を見下ろしたようなあのガキは必ず! 死んで生まれ変わっても必ずッ!!』


 ◇ ◆ ◇ ◆


 「目が覚めたか」

 

 目が覚めると、目の前には思いを寄せる相手であり、前世では魔王として世界を恐怖に陥れた張本人である立花が俺の顔を見下ろしていた。

 ただ、それは別に気にしていない。

 成績優秀、スポーツ万能、おまけに誰もが認める美少女に見下ろされるなど御褒美のような物だ。

 しかし問題はそこではない。

 何やら寝転んでいるはずの俺の頭にものすごく柔らかい感触がある。

 まぁ待て。

 慌てるな。

 決断するにはまだ気が早い。 

 もしかしたら?

 近くに枕が落ちていてたまたまそれを拾っただけなのかもしれない。

 そうだ。

 きっとそうだ。

 じゃないとこれほど柔らかいわけがない。

 触り心地もスベスベで、ほどよい弾力。

 顔をうずめたくなるような良い匂いはまるで天国のようだ。


 「おい。 それ以上私の太ももを触ると言うのならセクハラで訴えるからな。」


 先ほどまで女神のように見えていた立花の顔は一瞬で悪魔のような冷たい視線で見下ろしてくる。

 そこで俺はようやく立花に膝枕をしてもらっていた事を現実に受け止め、素早く土下座の姿勢を構えた。


 「ありがとうッ!  ―――じゃない、ゴメンッ!」

 「スケベ心が隠しきれてないぞ。 変態勇者。」


 未だ冷たい視線を送り続ける立花に俺はどうしようもなく、ただ誠心誠意に頭を下げる事しかできなかった。


 「と、ところで立花。 ここは何処?」


 何とか話題を変えようと現状確認を兼ねて話を逸らせる。

 

 「あぁ、ここは―――」


 (いさむ)が寝ていた場所は大人の男性1人が寝転んでも余る大きさの高級そうなソファ。

 他にも大きなテレビから広いリビング。

 外を見ていれば見慣れた街並みで家が小さく見えるほど高い場所に(いさむ)はいた。


 「―――私の家だ」


 そして、家の広さに驚く俺の様子を立花は「どうかしたか?」と怪訝な顔する。


 「ひっっっっろッ!!」


 天井は背の高いバスケット選手が3人分くらい高く、キッチンは何人分の料理を作るのか分からないほど広く、扉を開けると何部屋あるか分からないほどの部屋の数が廊下に並んでいる。

 これではマンションというより、もはや城の域に達している。


 「お嬢様」


 俺が部屋の広さに驚いている所に1人の女性が物腰低くした姿勢で別の扉から出てきた。


 「何かお飲み物でも?」

 「ありがとう。 それじゃあ、お願いするわ」


 立花の指示を聞くように女性は一礼するとまた部屋を後にした。


 「た、立花・・今の人は?」

 「お手伝いさんよ。 この家、無駄に広いから専門の人を雇わないと掃除も間に合わないし、両親は常に出張やらで家にいないから私の世話役としてもいてくれてるの」


 お手伝いさんとかもう城じゃん。

 お嬢様を通りこしてお姫様じゃん!

 ・・・いや、この場合は魔王と言った方がいいのか?

 魔王っていうか魔女王?


 「ハァ。 貴様が何かバカな事を考えている事は分かったから、とりあえずこっちに来い」


 立花は腕を組んであれこれと考えている俺に手招きで先ほどまで寝ていたソファに手招く。

 俺は言われたままに立花の隣に座る。


 「・・・おい。 なぜそんなに離れて座る?」

 「いや、お気になさらず」

 

 とはいえ好意を持つ同級生の家に上がり込み、更には隣に座るなどハードルが高すぎて俺には出来なかった。

 クソッ!

 どうした俺!

 それでも元勇者か!

 女性の1人や2人くらい記憶にあるだろッ!

 ・・・いや、ねぇな・・・。


 「今度はなんで泣きそうな顔してるのよ・・」

 「いやッ! おぎになざらずッ(お気になさらずッ)!!」


 前世でも女性経験がゼロである事を思い出して涙が出てきた。

 こんな事なら魔王討伐なんてせずに女性経験を上げとけばよかったッ!!


 そんなくだらない事を真剣に考えていると、痺れを切らした立花は小さい溜息を吐いて俺のすぐ隣まで近づいて座った。

 座る瞬間にフワッとした良い匂いに普段は見ない横顔が間近にある為、一気に俺の心臓は高鳴るのが分かる。

 落ち着け俺。

 そう、平常心だ。

 素数を数えれば顔には出ないと漫画にあったじゃないか!

 3,1415―――――・・・


 「貴様、さっき夢を見ていなかったか?」


 立花は(いさむ)の顔を見ずに真っ直ぐと前を向きながら訪ねた。

 俺はその質問に思わず呼吸が止まるような感覚を感じた。

 その様子を見逃さなかったのか立花は「そうか」と一言だけ呟くとANOTHER(アナザー)を起動させる。


 「勇者、貴様もANOTHER(アナザー)を起動させろ。 今後の事を貴様にも伝えておかなければならない。」


 この時、俺はこの好きな子と一緒にいられる幸せな空間から一瞬で逃げ出したくなった。

 このままここにいれば、何かとんでもない事に巻き込まれると前世の頃と同じ感覚を感じたからだ。

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